The 2022 SSJ Fall Meeting

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Room D

Regular session » S17. Tsunami

[S17] PM-2

Tue. Oct 25, 2022 3:00 PM - 4:15 PM ROOM D (5th floor (Training Room 520))

chairperson:Yutaka Hayashi(Meteorological Research Institute, Japan Meteorological Agency), Toshitaka Baba(Tokushima University)

3:00 PM - 3:15 PM

[S17-09] White bubbling tsunami: Its Hazard risk -Case of the 2011 Tohoku-Oki earthquake-

*Yuji ENOMOTO1, Tsuneaki Yamabe1, Shigeki Sugiura2, Hitoshi Kondo2 (1. Shunshu University , 2. Genesis Research Institute Inc.)

黒い津波,白い泡津波:2011年東北沖地震で三陸沿岸を襲った”黒い津波”による災害リスクが注目された.土砂混じりのヘドロを巻き込んで衝撃による破壊力が増し,また溺れて吸い込めば「津波肺」と呼ばれる重度の健康障害を被るリスクである.この黒い津波による災害リスクはこれだけに留まらない.というのも,海底に溜まったヘドロのなかの有機物は,分解しメタンが発生する.実際,最近の調査研究で東京湾の海底から数mないし数十mの深さにメタン層が拡がっていることが確認された(Tsuru et al.,EPS,2019).ということはヘドロを巻き上げた津波がヘドロのなかに胚胎するメタンをも巻き込めば白く泡立つはずである. 2011年東北沖地震では,まさにこのような光景が宮城県名取市沖合で空撮された.NHKスペシャル「黒い津波 知られざる実像」(2019年9年3月3日放映)では”白く泡立つ津波”も映し出されたが,これには特段の言及はなかった.図1は陸上自衛隊東北方面隊が地震直後に撮影した同じ海域での映像である.津波フロントに津波風にのった大量の泡があり,波頭はもうもうと水煙をたて,白く泡だった跡を残しながら陸に向かっている. 光る津波:東北沖地震は昼間の出来事であったが,明治三陸津波(1896/6/15 19:32)や昭和三陸津波(1933/3/3 02:30)はいずれも夜間の襲来で,このとき“光る津波”が目撃された.<明治三陸津波>「およそ30分後,巨大な黒い「波の壁」がごう音と青い光をともない三陸一体に襲来しました」(『津波を見た男』).<昭和三陸津波>「地震があってから湾口の所がいっぱいにモヤーッと青赤く光った.それからまた地震があった.すると白浪がまくれて来て,その後ろから高い真黒な浪が進んできた.」,「越村では,浪頭が白く直線になって光っていた.」(武者『地震なまず』).すなわち,図1の光景は夜であれば青白く光る津波であったと推測できる.立ち上る水煙(海水ミスト)は正帯電しており,メタンが静電気着火したと考えられる. 津波火災:大量のメタン泡が岸に打ち上げられ弾け消えることなくしばし滞留すると引火源になるし,静電気着火により自発発火の可能性もある.1993年北海道南西沖地震で奥尻島青苗港に停泊の5隻の漁船が津波を受けて甲板に大量のメタン泡が滞留して同時火災を起こした事例(Enomoto et al., Geosciences,2019)はまさにメタンによる津波火災である.   日本火災学会の調査によると東北沖地震で起きた津波火災件数159件のうち半数強は原因が不明とされていて、メタン・ハザードリスクへの考究はない.しかし気仙沼鹿折地区や名取市閖上七丁目での津波火災は海底ヘドロからのメタン泡が火源の一つとなった可能性が高い. 図1 白い泡津波:陸上自衛隊東北方面隊撮影, 名取市沖