日本地震学会2022年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(2日目)

一般セッション » S19. 地震一般・その他

[S19P] PM-P

2022年10月25日(火) 14:00 〜 17:30 P-7会場 (10階(1010〜1070会議室))

14:00 〜 17:30

[S19P-01] 能登半島北東部の地震活動に対する住民の防災意識に関するアンケート調査

*杉井 天音1、赤坂 和泉2、大鷲 晴香2、佐渡 喬介2、坂東 卓2、村田 晶1、平松 良浩1 (1. 金沢大学、2. 石川県立飯田高校)

1. はじめに
 能登半島北東部では2018年6月頃から地震の発生回数が増加傾向となり、2020年12月以降は4つの領域で順に活発化した。地震調査委員会(2022)では、地震活動の活発化の原因として流体が関与する可能性を挙げている。2021年9月16日の最大震度5弱(M5.1)の地震や2022年6月19日の最大震度6弱(M5.4)の地震では局所的な被害が生じた。現在でも群発的な地震活動は継続し、さらなる地震被害や海域での大地震による津波被害が危惧される。本研究の目的は、地震活動が活発な地域の石川県珠洲市に位置する石川県立飯田高等学校の教員、学生および保護者を対象とした地震津波防災意識に関するアンケート調査により、住民がもつ防災意識の現状と問題点を明らかにすることである。

2. 地震津波防災の意識に関するアンケート調査について
 石川県立飯田高等学校の教員、学生および保護者を対象としたアンケート調査を実施した。調査期間はM5.4の地震発生約1ヶ月前の2022年5月18日から2022年5月24日である。調査方法は、Google Formsを用いたインターネット上での回答である。調査項目は、大別して4つの項目から構成されている。その内容は、1)居住環境(年代、性別、地域、小学校区分)、2)地震活動による行動や意識の変化、3)避難時における対策、4)津波に対する備えである。アンケートの有効回答数は413件であった 地震回数の増加が気になる人の割合は92%と大きく、能登半島北東部での地震活動の活発化による意識変化が見られた。また、地震回数の増加が気になると回答した人の中で73%が避難経路の確認などの行動変化が認められ、地震の増加によって意識変化だけでなく行動にも影響を与えることが分かった。さらに、震度1〜3または4以上の地震を体験した場合の行動変化に関する設問では、震度4以上の地震を体験した人は震度1〜3の地震のみしか経験していない人よりも「特になにもしない」という項目が6割減少し、行動に関する項目の回答が増加した。したがって、行動の変化は地震の発生回数だけでなく震度の大きさにも関連性があることが明らかとなった。 津波に対して備えをしている人は全体の46%であった。このうち避難場所、避難経路の確認といった備えが最も多かった。また、「地震に対してどのようなことが不安ですか。」という設問に対して「津波が来る」という回答が2番目に多かった。 年代、性別、地域、区分、各設問のそれぞれに関連性があるかを調べるため、自由記述の設問を除いた各項目ごとにクラメールの連関係数を算出し、相関の強弱について評価を行った。その結果、「奥能登の地震回数が増えたことが気になりますか」と「地震に対して不安はありますか」という設問の間に0.26程度の関連性が見られた。しかし、クラメールの連関係数からは珠洲市において地域の違いによる設問との強い関連性は見られなかった。また、クラメールの連関係数を計算するために使用した設問について「地域差が見られない」と仮定した上で、有意水準5 %でフィッシャーの正確確率検定を行った。その結果、全ての設問に対して「地域差がみられない」ことを棄却することができなかった。このことから震度の違いによって行動変化は見られるものの、地震や津波に対する防災意識は地域によって有意な変化がないと考えられる。

3. まとめ
 能登半島北東部における地震活動の活発化のため、地震被害や海域での大地震による津波被害が危惧される。そこで、住民がもつ防災意識の現状と問題点を明らかにするため、石川県立飯田高等学校の教員、学生および保護者を対象とした地震津波防災意識に関するアンケート調査を行った。解析した結果、震度の大きさによって防災行動に対して変化が見られることが分かった。地域と設問の間の関係について解析を行ったところ、地域による防災意識に差がない可能性があることが示唆された。

参考文献
1) 地震調査委員会(2022):石川県能登地方の地震活動に関する「地震調査委員長見解」, https://www.static.jishin.go.jp/resource/monthly/2022/2022_ishikawa_2.pdf