The 2022 SSJ Fall Meeting

Presentation information

Poster session (2nd Day)

Regular session » S19. Seismology, general contribution

[S19P] PM-P

Tue. Oct 25, 2022 2:00 PM - 5:30 PM ROOM P-7 (10th floor (Conference Room 1010-1070))

2:00 PM - 5:30 PM

[S19P-02] How to use Martian seismic and meteorological data obtained by NASA’s InSight

*Keisuke Onodera1, Taichi Kawamura2 (1. ERI, Univ. of Tokyo, 2. IPGP)

1. InSightミッションの概要
2018年11月26日にNASAのInSight (Interior Exploration using Seismic Investigations, Geodesy and Heat Transport)[1]は, 火星のエリシウム平原(4.5°N, 135.9°E)に着陸し, 約3年にわたり地震および気象の準連続観測を実施してきた. 火星表面には広帯域計(Very Broad-Band Seismometer: VBB)と短周期計(Short Period Seismometer: SP)が設置され, それぞれ0.01 – 10 Hz, 1 – 50 Hz帯に感度を持つ[2]. 通常観測ではVBBは20 Hz, SPは100 Hzサンプリングでデータを取得している[3]. 気象観測については、通常1Hzサンプリングで気温・気圧・風速・風向データを取得している[4][5].

2. 火星で観測された地震および気象現象
火星地震は大きく分けて二種類に分かれる. 2.4 Hzを境にそれより低い周波数にエネルギーを持つ地震をLow-Frequency (LF) event, 2.4Hz以上にエネルギーを持つものをHigh-Frequency (HF) eventと呼ぶ[6]. 図1aにInSightで観測された地震データの例を示す. LFイベントは比較的散乱の影響が小さく, フェーズの読み取りが可能である. 場合によっては, 極性・線形性が確認でき, 一点観測に基づく震源位置決定に大きく貢献している. HFイベントは非常に強い散乱の影響を受けており, 地球の火山地帯や月で見られるような強散乱波形を示す. Giardini et al.[7]はそれぞれの波形の特徴や推定された震央距離などをもとに, LFイベントはマントルを主に通過し, HFイベントは地殻内を多重反射・多重散乱して伝わる地震波であると解釈している. 一方, 大気現象に伴う地震動も観測されている. 例えば, ダストデビル(局所移動低気圧の渦)の通過に伴う地面の変形が地震計および圧力計で同時観測されており(図1b), 地震・圧力データのスペクトル比から内部構造の推定も行われている[8].

3. データ利用案内
InSight の観測により, 火星における地震ならびに内部構造への理解が飛躍的に進んできた. 一方で, 一点観測という非常に強い制約により, 震源位置の決定や震源メカニズムなどについては不確定性が大きいのも事実である. 本発表では, 火星地震・内部構造への理解をさらに推し進めるため, 日本の地震学コミュニティに 惑星地震データの利用方法を広め, 様々な視点から火星地震データの再解析・新手法の応用などを促すことを目的とする. InSightの地震および気象データは, NASAのPDS (Planetary Data System)やIRIS (Incorporate Research Institute for Seismology)でイベントのカタログと共に公開されている. 本発表では, 地震学コミュニティに馴染みのあるIRISからのデータ取得方法ならびに解析を行う上での注意点等について, 実際の解析例を交えながら解説を行う.

参考文献 [1] Banerdt et al. (2020), Nature Geosci., 13, 183-189. [2] Lognonné et al. (2019), Space Sci. Rev., 215, 12. [3] Lognonné et al. (2020), Nature Geosci., 13, 213-220. [4] Banfield et al. (2019), Space Sci. Rev., 215, 4. [5] Banfield et al. (2020), Nature Geosci., 13, 190-198. [6] Clinton et al. (2021), PEPI, 310, 106595. [7] Giardini et al. (2020), Nature Geosci., 13, 205-212. [8] Kenda et al. (2020), JGR Planets, 125, 6, e2020JE006387.