The 2022 SSJ Fall Meeting

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Cancelled

Award lecture

Regular session » S20. Commemorative lectures from SSJ award recipients

[S20] PM-1

Mon. Oct 24, 2022 1:30 PM - 3:18 PM ROOM A (1st floor (Kaderu Hall))

chairperson:Takuto Maeda, Takuya Nishimura(Kyoto University)

2:48 PM - 3:08 PM

[S20-04] [Invited]Toward understanding the plate dynamics from records of broadband ocean bottom seismometers

*Akiko TAKEO1 (1. Earthquake Research Institute, the University of Tokyo)

海域のプレートテクトニクスは、海底地形など表層の情報を基に1960年代に作られた。中央海嶺下の高温マントルは上部から冷却されて密度を増し、結果として水深が海底年代と共に深くなる。この単純な海洋マントルの描像には依然として様々な疑問点がある。それは我々が海洋マントルを直接観察できていないことに起因する。
海洋マントルを間接的に地震波で観察する役割はモホ直下に関しては屈折法探査が、より深部に関しては表面波が担ってきた。近年の表面波トモグラフィー研究は海洋底年代と深さ50-200kmのマントルの構造の対応を明らかにしてきた。しかしながら浅部に感度を持つ表面波の短周期成分は、震源・観測点間距離が長くなると波動場が容易に乱され解析が困難になる。
短周期表面波解析の画期的な解決策が2000年代に主に陸域で開発・適用の進んだ地震波干渉法である。Takeo et al. (2013)は地震波干渉法と遠地地震解析手法を広帯域海底地震計アレイ記録に適用することで、広帯域のRayleigh波とLove波を解析し、海洋底年代15-30Maの四国海盆下の深さ10-150kmの最上部マントル構造を推定し、リソスフェアとアセノスフェアの速度コントラストを明瞭にした。Takeo et al. (2014)ではマルチモードを解析できるよう手法を改良したほか時刻補正や機器応答補正なども行い、海洋底年代155Maの北西太平洋下の方位異方性の強さを推定した。
Takeo et al. (2016)では表面波による方位異方性解析を更に発展させスプリッティング解析も組み合わせることで、海洋底年代60Maの南太平洋下においてプレート内方位異方性の速軸方向が等海洋底年代線とは斜行し、むしろ海洋底拡大当時のプレート運動方向と一致することを示した。Takeo et al. (2018)では遠地地震解析手法を改良し、海洋底年代140Maと150Maの北西太平洋下の構造をそれぞれ求めた。その結果、方位異方性が浅部ほど強いこと、2海域の構造の差を説明するにはアセノスエフェアにおける小規模対流が必要なことなどを示した。
同様の広帯域表面波解析はアメリカのグループなどによっても行われ、海域最上部マントルに関する理解が進みつつある。一連の流れを基に提案されたPacific Arrayという国際構想のもと、観測も加速している。現時点での主な議論の対象は、アセノスフェアに部分溶融メルトがどの程度存在するか、小規模対流が存在するか、異方性の強さと成因などである。今後、電磁気学分野やレオロジー分野などとの融合が進むことで、アフェノスフェアの粘性推定、微量元素の定量化や温度モデルの刷新なども進むと考えられる。
このような議論を進める上で技術的な改良も必要である。異方性の理解を深めるためにはRayleigh波とLove波両方の解析が必要である。Rayleigh波の解析はほぼ確立しつつある。一方で海域のLove波は高次モードとの分離が難しく現在進行形で解決が試みられている。メルトや微量元素などの議論には減衰構造の推定が必要であるが、海域における推定例は非常に少ない。大口径のアレイによる観測と、海山など不均質の影響の評価が必要になってくる。そのような長基線においては、成層構造をモデルパラメータとした表面波速度測定(Takeo et al. 2022)が主流になっていくかもしれない。以上の観測、分野融合及び解析手法の改良を進めることで表層のみならず深部まで含めた海洋プレートダイナミクスの理解に至ると期待できる。