日本地震学会2022年度秋季大会

講演情報

B会場

特別セッション » S21. AIによる地震学の発展

[S21] AM-1

2022年10月25日(火) 10:00 〜 11:30 B会場 (4階(大会議室))

座長:久保 久彦(防災科学技術研究所)、直井 誠(京都大学防災研究所)、岡崎 智久(理化学研究所 革新知能総合研究センター)

10:45 〜 11:00

[S21-04] 地震学逆解析における最適輸送に基づく波形間の距離指標

*岡崎 智久1、上田 修功1 (1. 理化学研究所 革新知能総合研究センター)

地震学の逆解析において、波形間の距離指標の定義が推定結果や計算効率に重要である。近年、確率分布間の距離であるWasserstein距離が従来のL2距離の欠点を解消しうる指標として注目されている。Sambridge ら (2022)は波形のグラフを2次元確率分布に変換した後、時間軸・振幅軸に周辺化した1次元確率分布のWasserstein距離を計算することで、波形を自然に確率分布に変換するとともに高い計算効率を実現した。しかし、正負の値を取る地震波形を確率分布に変換する方法に依然課題がある。

本研究ではSambridgeらの手法では、1次元確率分布への周辺化により距離指標に顕著な縮退が生じ、例えば、逆位相の正弦波の間の距離が0となるという問題を指摘する。その解決法として、計算効率を維持しつつ距離の頑健性を高めるため、sliced Wasserstein距離(Bonneel et al. 2015)の適用を提案する。Sliced Wasserstein距離は一般次元の確率分布に対し、ある方向に射影して得られる1次元確率分布の Wasserstein距離を全方向にわたって積分平均することにより定義され、実用上は有限個の方向に対する平均で近似される。本研究では、Sambridge ら (2022)による時間軸・振幅軸に加え、それらと45度をなす2方向に射影した計4方向の1次元 Wasserstein距離の平均を用いることで、正弦波に対し距離の頑健性が向上することを示す。