The 2022 SSJ Fall Meeting

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Poster session (3rd Day)

Special session » S21. Advancing Seismology with AI

[S21P] PM-P

Wed. Oct 26, 2022 1:30 PM - 4:00 PM ROOM P-1 (10th floor (Conference Room 1010-1070))

1:30 PM - 4:00 PM

[S21P-06] Toward Efficient Pore Pressure Estimation along Plate Boundary Faults Using Deep Learning

*Fan Yu1, Ehsan Jamali Hondori2, Jin-Oh Park1 (1. Atmosphere and Ocean Research Institute, The University of Tokyo, 2. Geoscience Enterprise Inc.)

南海トラフ沈み込み帯では、フィリピン海プレートが北西方向に向けてユーラシアプレートの下に年間4 cmの収束速度で沈み込んでいる。歴史上で、南海トラフ沈み込み帯の巨大地震は強震動及び大津波を起こし、100-200年の再来期間を持つとされている。この壊滅的な巨大地震の震源断層として、プレート境界断層(つまり、デコルマ)が挙げられる。南海トラフの巨大地震の発生メカニズムを明らかにするために、南海トラフ海溝軸を横断する反射法地震探査は数多く行われてきたが、間隙水圧の推定に関する研究はわずかであった。過去の研究では、2011年にJAMSTECが紀伊半島潮岬沖の南海トラフで取得した2次元マルチチャンネル反射法地震(Multi-channel seismic; MCS)探査データ(測線KI01)を用いてP波速度構造モデルを構築し、そのP波速度モデルをもとに、デコルマに沿った間隙水圧や有効応力を推定するなど、デコルマの物性の解明を試みた(Yu et al., JpGU 2022 Abst.)。潮岬沖の測線KI01のMCSデータを用いた重合前深度マイグレーション処理の結果として得られた南海トラフ付加体の構造は、先行研究である室戸岬沖の付加体構造(Tobin and Saffer, 2009)とは異なり、タービダイト層がデコルマに沿って沈み込んでいることが判明した。P波速度モデルに基づいて推定した間隙水圧、有効応力などの物性を分析することで、潮岬沖では、間隙流体が静岩圧全体に対する割合が比較的に低く、堆積物からの排水が良好で、垂直有効応力が高いことが明らかになった。潮岬沖と室戸岬沖のデコルマ物性の違いはタービダイトの存否に起因すると考えられる。
南海トラフでは、これまで反射法地震探査が盛んに行われてきたが、潮岬沖の測線KI01のような現場の物性を求めた研究はまだ数が少なく、デコルマに沿った間隙水圧推定の研究は進んでいない。一方、測線1本のMCSデータからP波速度モデルを決定するまでには膨大な時間と労力がかかるため、南海トラフ沈み込み帯の全域をカバーする多数の2次元MCSデータを処理するには、より効率的な手法が求められている。そういった事情を踏まえて、我々は、近年話題になっているディープラーニング技術を用いて、プレート境界断層の間隙水圧をより早く、かつ精度よく推定できる方法を考案した。ディープニューラルネットワーク(DNN)をMCSデータ処理作業に導入し、学習済みモデルを用いて、迅速なP波速度モデルの構築を目標として、南海トラフの広範囲においてデコルマの物性や構造の解明を目指す。
海溝軸付近の地質構造は複雑で、ショットギャザーから直接にP波速度モデルを生成するDNNモデルの訓練は現在の段階で困難な課題になっているため、本研究では、労力を費やす速度モデルの構築のステップに着目する。まずは、Marmousi2 modelを利用し、ランダムに生成した速度モデルから反射法地震探査データを合成した後、CDPギャザーから特徴(例えば残差速度)を抽出し、DNNモデルの訓練を実施する予定である。