The 2022 SSJ Fall Meeting

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Poster session (3rd Day)

Special session » S21. Advancing Seismology with AI

[S21P] PM-P

Wed. Oct 26, 2022 1:30 PM - 4:00 PM ROOM P-1 (10th floor (Conference Room 1010-1070))

1:30 PM - 4:00 PM

[S21P-07] Fault Plane Estimation from 3D Hypocenter Distribution by Two-step Clustering Considering Local Shape

*Yoshihiro Sato1, Haruo Horikawa1, Takahiko Uchide1, *Satoru Fukayama1, Jun Ogata1 (1. National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST))

震源分布により、地下における断層の形状を推定することは広く行われているが、断面図などによる可視化に基づいて主観的に行われることが通例である。震源分布は概ね平面的であるが、全体が湾曲したり、複数の面が交わっていたり、局所的には震源のばらつきが見えたりと、一定の複雑性があり、それが客観的な断層検出を難しくしている。

従来は、震源の3次元位置情報を用いた教師なし機械学習によるクラスタリング手法により断層面の3次元特徴を把握する手法 (e.g., Ouillon et al., 2008; Piegari et al., 2022) が提案されてきた。しかし、震源の位置情報のみを用いたクラスタリング手法では、実際の断層面構造とは異なる面を抽出する場合があるため、入力する震源数や解析する震源の分布範囲、学習パラメータを調整する必要があり、汎用性に欠点がある。

本研究では、震源の3次元位置情報に、震源分布を基に算出した法線ベクトル(3次元情報)を付与した6次元情報を用いて教師なし機械学習によるクラスタリングを行うことで、局所的な断層構造を検出する手法を提案する。具体的には、1段階目として法線ベクトルの3次元情報を用いた震源のクラスタリングを行う。2段階目では、分割されたクラスタごとに震源の3次元位置情報を基にさらに震源のクラスタリングを行う。これにより、複雑に構成される断層面の大局的な面構造を保持したまま断層面を細分化することができ、断層面の局所構造を把握に貢献すると考えられる。本研究では、事前にクラスタ数を設定することなく、ボトムアップにクラスタリングを行う階層型クラスタリングアプローチを採用し、1段階目のクラスタリングでは、法線ベクトルのコサイン類似度を用いて一定のクラスタ間距離を設定可能なAgglomerative clustering、2段階目のクラスタリングでは、震源分布における局所的な密度の違いに対応可能なHDBSCAN(McInnes et al., 2017)をそれぞれ適用した。

本提案手法をhypoDD法(Waldhauser and Ellsworth, 2000)によって再決定された茨城県北部の震源分布(71336個)に適用する。検出された断層面から同地域の微小地震の震源メカニズム解(Uchide et al., 2022) (38164個)と比較し、条件に一致する断層面を抽出する。抽出条件は、震源メカニズム解と断層面に垂直な距離が0.5km以内、震源メカニズム解のどちらかの節面と断層面のなす角が5度以内と設定した。

提案手法によって検出された断層面を図に示す。図では、提案手法によって検出された断層面をグラデーション付きの矩形として示し、グラデーションカラーは深度を示す。断層面周辺の黒文字では検出された断層面のパラメータを示し、1段目は検出された断層面の走向および傾斜、2段目は長さと幅、3段目は断層面の深度を示す。InSAR解析による2011年・2016年茨城県北部の地震の断層モデル(Fukushima et al., 2018; 仲井ほか, 2017)は、紫色および水色の矩形によってそれぞれ示す。提案手法では6枚の断層面が検出された。断層面の多くは概ね南北走向であるが、緯度36.8度以北では北西-南東走向に変わっている。この変化は、Fukushima et al. (2018)の断層モデルにも見受けられ、断層モデル周辺に検出された断層面の走向方向はほぼ一致している。仲井ほか(2017)の断層モデルでは、浅部の断層面が北西-南東走向、深部の断層面がほぼ南北走向となっている。そのような断層構造は、2011年・2016年の地震時に活動した区間よりも広域に及んでおり、茨城県北部の地震ではその一部が活動したことが示唆される。2011年・2016年茨城県北部の地震では主に西落ちの断層が破壊したと考えられるが(田中・岩切, 2017; 仲井ほか, 2017; Fukushima et al., 2018)、本研究では東落ちの断層面も検出した。緯度36.8度付近では断層面が検出されていないが、これは2011年・2016年茨城県北部の本震に破壊域に対応し、余震活動が極めて低調であったためであると考えられる。このような地震活動が低調な地域における断層面の検出は今後の課題である。

謝辞
 本研究では、気象庁一元化処理検測値、産業技術総合研究所地質調査総合センターによる発震機構解データ(内出ほか、2022)を使用した。本研究は、文部科学省の情報科学を活用した地震調査研究プロジェクト(STAR-Eプロジェクト)JPJ010217の助成を受けたものです。