11:15 AM - 11:30 AM
[S22-06] Re-evaluation of normal fault distribution in the outer slope of the western Kuril Trench, off the southeastern coast of Hokkaido, based on recent acquired seismic reflection data and bathymetry data
千島海溝の海溝海側は、2007年に千島列島中部のシムシル島沖でMW8.1(Ammon et al., 2008)、2020年に千島列島北部のパラムシル島沖でMW7.5(Ye et al., 2021)など比較的多くのプレート内地震が発生している。その一方、北海道南東沖千島海溝の海溝海側は、2012年に発生したMJ6.9の地震など襟裳海山南東部付近での地震活動は顕著であるが、ここ100年で見ると日本海溝における昭和三陸地震津波のような大地震は観測されていない。北海道南東沖千島海溝の海溝海側は大地震の観測例がないものの、先行研究によって多くの正断層地形の分布が確認されている。例えば、Kobayashi et al. (1998)やNakanishi (2011)は海底地形データをもとに、海溝海側斜面の断層地形のマッピングを行い、断層地形は海溝から約80 kmまで存在するが北海道海膨までは達していないことや海溝海側斜面の断層地形の走向が中生代磁気異常縞模様とほぼ平行で、海洋底拡大に起因する構造的弱線のうち、アビサルヒルが再活動してできたものであることを論じている。海溝海側斜面の断層地形は、大局的には海洋プレートの屈曲による影響で形成された構造であるが、各々の海溝の特徴や分布の詳細は、海溝軸との位置関係、海洋プレートの形成年代や様式、プレートの屈曲率等のセッティングや条件によって異なることもわかってきている(例えば、中西, 2017)。
本発表は、科研費基盤(A)「千島海溝沖アウターライズ津波即時予測に向けた震源断層マッピングと津波評価」の一環として、Nakanishi (2011)による断層地形のマッピングの結果をもとに、近年取得されたマルチチャンネル反射法地震探査(MCS)データや海底地形データを解析し、襟裳海山付近から納沙布断裂帯付近までの千島海溝西部の海溝海側斜面における正断層分布を再評価した結果について報告する。
MCSデータは2016~2020年に海洋研究開発機構(JAMSTEC)の調査船「よこすか」「かいれい」「かいめい」を用いた4航海で取得した計34測線を使用し、ノイズ抑制処理を重点的に適用した上で、深度マイグレーション処理を行った。海底地形データについては、JAMSTEC船舶で取得されたデータを再処理して、それらのデータがカバーしていない部分についてはSRTM15+データ(Tozer et al., 2019)やGEBCOデータ(GEBCO Compilation Group , 2019; 2020)や先行研究データ(海上保安庁・海洋研究開発機構, 2011)等を重ねて、データの接合部は可能な限り不整合が生じないように処理した。解析で得られたMCSデータをSchlumberger社製のPetrelに登録して、海溝海側斜面に形成された正断層の解釈作業を行い、それらの断層の空間的な接続性を海底地形データやNakanishi (2011)の結果を用いて評価し、正断層の分布に関する検討を行った。
結果として、断層の走向や分布に関してはNakanishi (2011)に沿っているが、断層の形成は海溝軸から約100 km海側から始まっていることがわかった。これは正断層の構造が海底地形よりもMCS探査で得られた結果の方が明確に判別しやすいことによる。Fault throwの大きさも海底地形より海洋地殻上面での変位から推定する方が大きくなっている一方で、先行研究でも指摘されていることだが、日本海溝の海溝海側斜面断層(e.g. Tsuru et al., 2000; Nakamura et al., 2018)と比べると、Fault throwの大きさは若干小さい傾向にある。ただし、断層の間隔は千島海溝の方が日本海溝より狭く、密に分布している。また、対象海域には海溝軸付近に襟裳海山や拓洋第一海山が位置しており、それらの海山を切るような比較的長い断層が存在する一方で、海山が存在している領域での断層の分布数は海山がない領域と比べると少なく、Fault throwの大きさにも影響が生じているような結果になっている。MCS探査の結果から読み取ると、海山の存在の影響で地殻の厚さが対象領域で6~10 kmの間で変化しているので、海洋地殻の厚さ等の構造が海溝海側斜面の断層の分布や形成に影響を与えている可能性がある。
本発表は、科研費基盤(A)「千島海溝沖アウターライズ津波即時予測に向けた震源断層マッピングと津波評価」の一環として、Nakanishi (2011)による断層地形のマッピングの結果をもとに、近年取得されたマルチチャンネル反射法地震探査(MCS)データや海底地形データを解析し、襟裳海山付近から納沙布断裂帯付近までの千島海溝西部の海溝海側斜面における正断層分布を再評価した結果について報告する。
MCSデータは2016~2020年に海洋研究開発機構(JAMSTEC)の調査船「よこすか」「かいれい」「かいめい」を用いた4航海で取得した計34測線を使用し、ノイズ抑制処理を重点的に適用した上で、深度マイグレーション処理を行った。海底地形データについては、JAMSTEC船舶で取得されたデータを再処理して、それらのデータがカバーしていない部分についてはSRTM15+データ(Tozer et al., 2019)やGEBCOデータ(GEBCO Compilation Group , 2019; 2020)や先行研究データ(海上保安庁・海洋研究開発機構, 2011)等を重ねて、データの接合部は可能な限り不整合が生じないように処理した。解析で得られたMCSデータをSchlumberger社製のPetrelに登録して、海溝海側斜面に形成された正断層の解釈作業を行い、それらの断層の空間的な接続性を海底地形データやNakanishi (2011)の結果を用いて評価し、正断層の分布に関する検討を行った。
結果として、断層の走向や分布に関してはNakanishi (2011)に沿っているが、断層の形成は海溝軸から約100 km海側から始まっていることがわかった。これは正断層の構造が海底地形よりもMCS探査で得られた結果の方が明確に判別しやすいことによる。Fault throwの大きさも海底地形より海洋地殻上面での変位から推定する方が大きくなっている一方で、先行研究でも指摘されていることだが、日本海溝の海溝海側斜面断層(e.g. Tsuru et al., 2000; Nakamura et al., 2018)と比べると、Fault throwの大きさは若干小さい傾向にある。ただし、断層の間隔は千島海溝の方が日本海溝より狭く、密に分布している。また、対象海域には海溝軸付近に襟裳海山や拓洋第一海山が位置しており、それらの海山を切るような比較的長い断層が存在する一方で、海山が存在している領域での断層の分布数は海山がない領域と比べると少なく、Fault throwの大きさにも影響が生じているような結果になっている。MCS探査の結果から読み取ると、海山の存在の影響で地殻の厚さが対象領域で6~10 kmの間で変化しているので、海洋地殻の厚さ等の構造が海溝海側斜面の断層の分布や形成に影響を与えている可能性がある。