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[S22-14] 最近の北海道およびその周辺の地震活動(2018 ~ 2021)
本報告では,ごく最近の2018年〜2021年に確認された北海道とその周辺の地震活動をレビューする.おおよそM6以上の地震に注目すると,2018年1月24日の青森県東方沖の地震 (M6.3, 深さ34km) , 同年5月18日釧路沖の地震 (M5.8, 深さ47km),そして同年2018年9月6日に胆振地方中東部で発生した北海道観測史上最大の内陸地震(M6.7, 深さ37km)がある.北海道では観測史上最大の内陸被害地震となり,この特別の地震を気象庁によって「平成30年北海道胆振東部地震」と命名された(以後,これを北海道胆振東部地震と称す).この北海道胆振東部地震に続いて同年11月5日に知床半島先端付近で地震M6.3の地震が発生した.この知床半島先端近傍ではM6を超える大きな地震はこの地震が初めてである.この地震とほぼ同じ場所で10日前の10月26日にM5.5の地震が発生した.これらの地震の深さはともに20kmであり,発震機構もともに西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型の地殻内地震であった.さらに2019年2月21日に北海道胆振東部地震の最大余震(M5.8, 深さ33km)が余震域北端付近で発生し, 厚真町で最大震度6弱を観測し,これによってほぼ南北方向に延びた余震域がほぼ確定されたと推定される. 2019年3月2日には根室半島南東沖の千島海溝近傍では大変珍しい地震(M6.2, 深さ51 km)が発生した.この地震の震源位置やW-phaseによるWCMTから、この発生機構は千島海溝で沈み込む太平洋プレート内の正断層タイプの地震と推定された.つづいて同年4月28日の十勝地方南部の地震(M5.6, 深さ102km), 同年8月29日の青森県東方沖の地震(M6.1, 深さ21km)などが発生した.同年12月12日には宗谷地方北部で内陸浅発地震(M4.2, 深さ7km)が発生し,最大震度5弱を豊富町で観測した.北海道北部では同程度の地震が時々起こっている.その後,北海道とその周辺の地殻内ではM6を超える比較的大きな地震はほぼ皆無となり,地震活動の静穏期が約1年間継続した. 一方,その静穏期の2020年には1月28日の根室半島南東沖地震(M5.5, 深さ96km), 同年5月31日の十勝沖の地震(M5.6, 深さ94km)などのやや深い地震が続発した.さらに当調査領域外であるが,同年2月13日にその東端近傍の択捉島南東沖で調査期間最大の地震(M7.2, 深さ155km)が発生した.前者の静穏期に深部では地震活動が高まったのは興味深い.しかし,11月6日と12月21日には,再び千島海溝と日本海溝の会合部で,比較的大きな地殻内地震(M6.5, 深さ43km)が発生し,前出の2018年1月24日の地震(M6.3, 深さ34km)と2019年8月29日の地震(M6.1, 深さ21km)を加えるとこの調査期間にM6以上の地震が3回起こったことになる.これらの震源域は1856年8月23日の青森県沖地震M7.5や1968年5月16日の十勝沖地震M7.9などの海溝型巨大地震の震源域とほぼ重なっている.2021年には1月27日の北海道胆振地方中東部の地震(M5.4, 深さ128㎞)が起こり,新冠町で最大震度4を観測した. この地震の震央は北海道胆振東部地震の震央近傍であるが、スラブ内の深さ約128kmで発生した横ずれタイプ地震であった.さらに2021年3月6日の北海道東方沖の地震(M5.9, 24km), 同年5月14日には日高地方中部の内陸地震(M4.6, 深さ20㎞),同年5月16日には十勝沖の地震 (M6.1, 深さ8km)など比較的浅い地震が続発した.後者の地震の震央は,1952年3月4日の十勝沖地震M8.2と2003年9月26日の十勝沖地震M8.0などの海溝型巨大地震の震源域とほぼ重なるが,今回の地震はその上盤側で発生した.その発生機構もほぼ東西方向に圧縮軸を持った横ずれタイプであり,過去の巨大地震の逆断層タイプとは異なっていた.以上の最近の地震活動調査から,北海道胆振東部地震を筆頭に,青森県東方沖,根室半島南方の千島海溝近傍,知床半島先端近傍など,比較的広範囲に地震活動が確認された.またそれらの発生機構も多様であり,北海道特有の複雑な地学的環境が示唆された.謝辞:本レビューでは気象庁地震カタログ, NIECのF-netカタログ,地震活動の可視化ツールSeis-PC (石川・中村, 1997;中村・石川, 2005)などを用いた.2019年3月2日には根室半島南東沖のWCMT解は(私信,金森博雄,2022)に基づいた.