The 2022 SSJ Fall Meeting

Presentation information

Room B

Special session » S23. Deepening seismic data analysis and modeling based on Bayesian statistics

[S23] AM-2

Tue. Oct 25, 2022 11:45 AM - 12:15 PM ROOM B (4th floor (Large Conference Room))

chairperson:Aitaro Kato(Earthquake Research Institute, the University of Tokyo)

11:45 AM - 12:00 PM

[S23-01] Detection of hidden earthquakes after the 2011 Tohoku earthquake using automatic hypocenter determination

*Koji TAMARIBUCHI1, Shota Kudo2 (1. Meteorological Research Institute, 2. Japan Meteorological Agency)

地震の発生時刻,場所,規模を記録した地震カタログは,地震研究や地震防災において,極めて重要なビッグデータである.しかし,平成23年 (2011年) 東北地方太平洋沖地震以降は,膨大な地震が発生して処理M下限 (余震域において海域M≥3,陸域M≥2) を設けたため,それ未満の微小地震は未だ十分にカタログ化されていない.そのような未カタログイベントを検出するため,溜渕・中川 (2020) は同時多発地震に対応した自動震源決定手法 (PF法) を2011年3月の地震波形に適用し,従来の一元化地震カタログの2倍以上に相当する自動震源カタログを作成した.さらに自動震源には数~10%程度の誤検出が含まれるため,機械学習の一種である教師ありアンサンブル学習を得られた自動震源の検測値に適用して誤検出の除去を試み,96.9%の正答率で地震とノイズを分類できることを示した (溜渕,2021,JpGU).本発表では,上記に加えて,深層学習の一種であるConvolutional neural network (CNN) を地震波検測のP,S,N (ノイズ) 判別に活用することで,更なる誤検出の抑制に効果があるか検証したので報告する.
データ:2011年3月から2012年2月までの1年間の地震波形 (主に高感度速度波形),約1400地点を解析に用いる.ここでは主に2011年3月の1か月の結果に着目する.なお,2011年3月11日から数日間,観測網の広域欠測により一時的に使用観測点数が3月11日17時台をボトムに1129地点まで低下した.
手法:自動震源決定は,(1) 相読み取り,(2) 相組合せ探索 (phase association),(3) 震源計算,(4) 品質管理の主に4つのプロセスからなる.(1) 相読み取りはAR-AIC等の従来の検測手法を用いて検測した後,検測時刻周辺4秒間の3成分地震波形をCNNに入力して,P/S/N確率を得る.P/S/N確率のいずれが閾値以上の場合,それぞれ±2秒間に検測されたそれ以外の相を削除した.いくつか変更しながら震源決定数を検証し,閾値を0.9とした.具体的には,例えばP確率0.9以上の場合,±2秒以内のS相を削除した.CNNは工藤・他 (2020, 地震学会) が学習したモデルを用いた.(2)(3) 重点サンプリングを用いて最適な相の組合せを探索 (PF法) し,震源決定は気象庁一元化震源と同じプログラムを用いた.(4) 品質管理では,震源検測値の各種特徴量 (震源誤差,P/S検測値等) を入力とし,LightGBMにより品質ラベル分類を行った.教師データは溜渕・中川 (2020) で作成した自動地震カタログ (3月1日~16日の約2万イベント) を目視で波形を確認し,4つのラベルに分類した (A: 震源近傍で誤検測がない,B: 誤検測数が1~2つ,C: 誤検測数が3つ以上,D: ノイズ).Tamaribuchi et al. (2021) ではモデルとしてAdaBoostを採用したが,その後さまざまなモデルで検討した結果,最も正答率が高かったLightGBMをここでは採用した.検測値だけからは,ラベルA,B,Cの判別ができず全体の正答率は81.9%だが,ラベルA,Dに限って正答率を算出すると97.8%であった.
結果:CNNデノイザの効果を検証するため,地震多発時 (3月11日12–24時) と平常時 (3月1日0–12時) のそれぞれ12時間の自動震源を,震源時5秒以内かつ震央距離50 kmの条件で一元化震源と比較した.その結果,相読み取りの総数は地震多発時も平常時もともに約3割削減されたにも関わらず,一元化震源と一致する自動震源の数はほぼ変わらなかった.これはノイズの誤検測を適切に除去できていることを示している.
2011年3月の期間に得られた自動震源は,112,004個であった.CNNデノイザ前後の震源分布を比較すると,島しょ部などで従来見られた誤検出が抑制されている.そのうち,品質管理処理による分類結果はA: 100,265,B: 5,882,C: 5,055,D: 802であった.CNNデノイザ導入前の自動震源 (溜渕・中川,2020) を同様に分類したところA: 104,253,B: 7,545,C: 6,848,D: 3,707であったので,導入前後の個数比はA: -4%,B: -22%,C: -26%,D: -78%となり,誤検測がないラベルAもわずかに減少したものの,誤検測を含むラベルB, C, Dを大きく減らすことができた.得られた自動震源のうちラベルA,Bの震源のうち,一元化震源カタログと一致しない (すなわちカタログ未掲載) の地震は67,438個であった.一元化震源は本期間で55,112個 (低周波フラグ除く) だったので,両者をマージすることで従来の倍以上の地震数が得られた.
自動震源 (ラベルA,B) を一元化震源にマージしたカタログの規模別頻度分布を地域別にみると,多くの領域でMc (completeness magnitude) が低下し,秋田県などの東北地方の内陸では最大約8倍の震源数となった.DD法でこれらの地域の相対震源決定を行うと,微細な断層構造を見ることができる.今後,さらに長期間の微小地震を含めたカタログを作成,解析することにより,巨大地震後の微小地震活動の特徴を調査する予定である.

謝辞
防災科学技術研究所,大学,関係機関,および気象庁の地震波形を使用しました.解析には東京大学地震研究所共同利用 (2022-F3-12) 大規模地震連続波形データ解析システムを利用しました.一元化震源を使用しました.