日本地震学会2022年度秋季大会

講演情報

B会場

特別セッション » S23. ベイズ統計学による地震データ解析とモデリングの深化

[S23] PM-2

2022年10月25日(火) 15:00 〜 15:45 B会場 (4階(大会議室))

座長:矢野 恵佑(統計数理研究所)

15:15 〜 15:30

[S23-07] データ駆動型低次元モデルを用いた圧縮センシングの地震波動場再構成への適用

*永田 貴之1、中井 公美2,1、山田 圭吾1、齋藤 勇士1、野々村 拓1、加納 将行1、伊藤 伸一3、長尾 大道3 (1. 東北大学、2. 産業技術総合研究所、3. 東京大学地震研究所)

地震動分布の推定は,大地震発生時の被害予測における重要技術の1つである.特に,空間的に連続な波動場の即時再構成は,現地調査なしに被害状況を把握することを可能とし,災害対応の初期段階における意思決定に有益なツールとなり得る.高速・高精度の再構成には,事前情報の利用が不可欠である. 近年,流体力学分野では,データ駆動型の低次元モデルを用いてスパースな観測から全場の状態を再構成する技術が発展してきた.本研究では,流体力学の分野で開発され,発展してきたデータ駆動型の低次元モデルを用いた圧縮センシングによる再構成フレームワークを地震波動場の再構成に適用し,その適用性を数値実験によって調査した.地震動のデータは計算コストを抑えるため,理論波形を計算する簡便なシミュレーションで生成した.数値実験では,東京都23区直下および茨城県南部を震源とし,東京23区に設定した矩形領域内の波動場をMeSO-netの観測点50点の情報から再構成した. データ駆動型低次元モデルは,一定の範囲内でランダムにパラメタを振った多数ケースの波動場データセットから特異値分解を使用して生成した.空間的に連続な地震波動場は,観測点での観測値とデータ駆動型低次元モデルを用いて再構築される.また,再構成に使用する観測点は,貪欲法に基づく線形逆問題のためのセンサー位置最適化手法によって選択した.数値実験では,提案手法による再構成とガウス過程回帰による再構成を比較した. ノイズのない観測に基づく再構成の場合,提案手法では再構成に使用する観測点数が制限され,かつランダムに選択された場合でも,再構成誤差は数点の観測点でモデル誤差まで減少する.これは,事前に生成する波動場の基底の恩恵により観測点の密度が疎でも高波数の波動場まで精度良く再構成できることを意味する.また,提案手法で得られる再構成誤差は,ガウス過程回帰により得られる再構成誤差よりも小さい.強い観測ノイズがある場合では,再構成された波動場は観測ノイズの影響により劣化し,ガウス過程回帰を用いた再構成では波動場の定性的な特徴さえ復元できないが,提案手法では一定の精度で再構成が可能である.また,全観測点を用いた場合よりも再構成誤差は大きいものの,観測点選択手法と組み合わせることで、再構成結果の劣化や推定結果のばらつきを最小限に抑えながら,より少数の観測点で再構成できることが分かった.