The 2023 SSJ Fall Meeting

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Room C

Regular session » S01. Theory and analysis method

[S01] PM-1

Thu. Nov 2, 2023 1:15 PM - 2:45 PM Room C (F202)

chairperson:Naoki Suda(Hiroshima University), Yohei Yukutake(Earthquake Research Institute, The University of Tokyo)

1:15 PM - 1:30 PM

[S01-06] Multi-decadal monitoring of seismic velocity changes beneath Izu-Oshima, central Japan, using ambient seismic noise records

*Yohei Yukutake1, Taka'aki Taira2, Shinya Onizawa3, Yuichi Morita4 (1. Earthquake Research Institute, The University of Tokyo, 2. Berkeley Seismological Laboratory, University of California, 3. Meteorological Research Institute, 4. National Research Institute for Earth Science and Disaster Resilience)

伊豆大島は伊豆諸島最北部に位置する玄武岩質マグマに由来する火山島であり、最新のマグマ噴火は中央火口丘の三原山において1986年から87年にかけて発生した。地殻変動観測により前回のマグマ噴火から1990年台中頃まで山体は収縮していたが、その後マグマの蓄積を示唆する山体膨張が観測されている。こうした長期的な地殻変動に加えて、およそ1~2年周期で山体が膨張と収集を繰り返す短期的な地殻変動も観測されている。この短期的地殻変動の膨張及び収縮源は三原山北部の深さ4km付近に推定されている(島村ほか、2022)。前回の噴火からすでに30年以上経過しており、過去3回の噴火は36年から38年の間隔で発生していることから、現在は次の噴火への準備過程にあると考えられる。
このような噴火準備期間において、火山内部構造の時間変化を推定することは噴火予測のためにも有用である。雑微動を用いた地震波干渉法は地震波速度構造の時間変化を推定するために有用な方法であり、これまで強震動(Minato et al., 2012; Sawazaki et al., 2009)や降雨(Sens-Schönfelder and Wegler, 2006)、火山活動( Brenguier et al., 2008; Caudron et al., 2022)に起因する構造変化が検出されている。伊豆大島においてはTakano et al., (2017)により2012年から2015年における構造時間変化が地震波干渉法を用いて推定され、短期的変動に伴う面積歪みと速度構造が時間的に相関することが示された。この結果をもとに、歪み変化により生じた地殻浅部での地震波速度の変化が干渉法により検出されたと解釈された。
本研究では、2004年から2020年までの17年間にわたる長期的な地震波速度構造の変化に着目し地殻変動観測結果と比較し、さらに速度構造変化域の空間的な制約を試みた。 本研究では伊豆大島内に設置された定常地震観測点39点のうち、長期的に運用されている24点の観測点の地震波形データを使用した。雑微動の相互相関関数(CCF)を計算するにあたり、3つの周波数帯域のフィルタ(0.1-0.9 Hz, 0.5-2.0Hz, 1.0-4.0Hz)を適用し、すべての観測点ペアでのCCFを計算した。5日間の移動窓を用いてCCFをスタックし、Moving-window cross-spectrum(MWCS)法(Clarke et al., 2011)により、リファレンスCCFに対する17年間における速度変化(dv/v)を得た(行竹・平、2003, JpGU)。さらに、ここではHobiger et al. (2012)の手法を用いて、構造変化領域の空間的制約を試みた。
推定された速度構造変化では、2011年東北地震前後での急激な速度低下が検出された。この速度低下は0.1-0.9Hzの周波数帯域で顕著にみられ、またHobiger et al. (2012)の手法による構造変化領域の推定では、島内の広範囲の観測点でdv/vの低下が検出された。東北地震に励起された大きな動的応力変化により、広範囲で速度低下が起きたと解釈される。また東北地震以外にも、2006年4月21日伊豆半島東方沖地震(M5.8)や2009年8月11日駿河湾の地震(M6.5)など周辺域で発生したM5~M6の地震発生時においても急激な速度低下が検出された。こうした大地震に伴う急激な速度低下のほかに、1から2年間隔での周期的なdv/vの増減が検出された。この周期的な変動は短期的地殻変動に対する変動源の時系列(島村ほか、2022)と概ね相関し、収縮期及び膨張期においてそれぞれdv/vが増加及び減少する。この結果は、Takano et al. (2017)による、周期的なdv/v変化が短期的地殻変動により生じた面積歪みに起因するという解釈をサポートする。ただし、構造変化域の空間的制約の結果、dv/vの変動の大きな観測点は中央火口丘の東側から南東側に分布する。また、2012年及び2019年から2020年にかけては、島村ほか(2022)による変動源での膨張収縮のレートに対してdv/vの変化が大きくなっており、歪み変化以外の要因も速度構造変化に影響を与えている可能性が示唆される。
謝辞 本研究では、東京大学地震研究所、防災科学技術研究所、気象庁の地震観測点のデータを使用しました。CCFを計算するにあたり、MSNoise(Lecocq et al., 2014)を使用しました。本研究はJSPS科研費22K03752及び文部科学省「次世代火山研究・人材育成総合プロジェクト」の助成を受けたものです。