3:45 PM - 4:00 PM
[S01-15] Effect of bay topography on surface waves
地形と地盤構造は,地震波のふるまいに大きな影響を与える.例えば,山頂や尾根では地震波が増幅され,谷では地震波が減衰することが示されている(例えばSpudich et al., 1996; Khan et al., 2020).また地形と地盤構造は表面波を励起,増幅,散乱させることが示されている(例えばPierre-Yves and Bouchon, 1980; Lee et al., 2009).また山脈などの複雑な地形は表面波を励起,散乱させることで,周囲の地域の地震動に影響を与えることが示されている(Lee et al., 2009).例えばShuo et al. (2007)は,サンアンドレアス断層のモハベセグメントにおいてMw7.5の地震が発生した場合の数値シミュレーションを用いて,アメリカのカリフォルニア州にあるサンガブリエル山脈が,表面波に対して天然の免振装置として機能することを示した.このように陸上の地形が表面波に作用して周囲の地震動に影響を与えることがこれまでの研究から示されてきた.一方で表面波が海底を伝播してくる場合についてはこれまであまり注目されてこなかったが,Noguchi et al. (2011)は,三陸沖の浅いアウターライズ地震において日本海溝付近の観測点で観測された特徴的なRayleigh波の発達を,数値シミュレーションを用いて調査し,それが海溝に沿った厚い海水層と日本列島沿岸の海底の急な標高増加が主な原因であることを示した.このように海底地形が表面波に特有の影響を与える可能性を解明することは,地域的な表面波伝播特性を理解するうえで重要である.
日本の陸上で観測される地震動に影響を与える可能性がある地形として,入り江のような海岸線を有した湾地形が挙げられ,日本における勾配変化に富んだ海底地形を持つ湾としては駿河湾,相模湾,富山湾などが存在する.その中でも特徴的な湾として駿河湾を紹介する.駿河湾は静岡県に位置する最大水深約2500 mの日本一深い湾である.駿河湾は,ユーラシアプレートの下にフィリピン海プレートが沈み込むプレート境界である駿河トラフが入り込むような溝状の地形を有しており海底地形は複雑である.海底の勾配変化も非常に大きく,湾の最奥部では海岸から2 kmほど離れると水深500 mに達する世界的にみても特異な湾である.
そこで本研究では,実地震波形記録を用いた解析により,日本における勾配変化に富んだ湾地形が表面波にもたらす効果を調査した.地震波形記録としては,防災科学技術研究所のHi-netによるものを使用した.
その結果,駿河湾の西方遠方から伝播する表面波において,湾の西海岸で記録される振幅よりも,湾の東海岸で記録される振幅が著しく小さいことを発見した(図b).一方で駿河湾の北方遠方から伝播する表面波の場合にはこのような現象は見られないことから(図c),これはサイト応答によるものではなく,駿河湾を経由する際に表面波の振幅が著しく減少することを示している.また生波形,0.25~0.5Hz, 0.5~1Hz, 1~2Hz, 2~4Hz,4~8Hz, 8~16Hz, 16~32Hzのオクターブバンドパスフィルターをかけた波形において解析を実施しており,少なくとも0.25~2Hzの周波数帯域においては表面波の振幅が著しく減少することがわかった.発表では他の湾におけるこの現象の発生の有無についての解析結果と現象の発生要因について報告する.
日本の陸上で観測される地震動に影響を与える可能性がある地形として,入り江のような海岸線を有した湾地形が挙げられ,日本における勾配変化に富んだ海底地形を持つ湾としては駿河湾,相模湾,富山湾などが存在する.その中でも特徴的な湾として駿河湾を紹介する.駿河湾は静岡県に位置する最大水深約2500 mの日本一深い湾である.駿河湾は,ユーラシアプレートの下にフィリピン海プレートが沈み込むプレート境界である駿河トラフが入り込むような溝状の地形を有しており海底地形は複雑である.海底の勾配変化も非常に大きく,湾の最奥部では海岸から2 kmほど離れると水深500 mに達する世界的にみても特異な湾である.
そこで本研究では,実地震波形記録を用いた解析により,日本における勾配変化に富んだ湾地形が表面波にもたらす効果を調査した.地震波形記録としては,防災科学技術研究所のHi-netによるものを使用した.
その結果,駿河湾の西方遠方から伝播する表面波において,湾の西海岸で記録される振幅よりも,湾の東海岸で記録される振幅が著しく小さいことを発見した(図b).一方で駿河湾の北方遠方から伝播する表面波の場合にはこのような現象は見られないことから(図c),これはサイト応答によるものではなく,駿河湾を経由する際に表面波の振幅が著しく減少することを示している.また生波形,0.25~0.5Hz, 0.5~1Hz, 1~2Hz, 2~4Hz,4~8Hz, 8~16Hz, 16~32Hzのオクターブバンドパスフィルターをかけた波形において解析を実施しており,少なくとも0.25~2Hzの周波数帯域においては表面波の振幅が著しく減少することがわかった.発表では他の湾におけるこの現象の発生の有無についての解析結果と現象の発生要因について報告する.