[S01P-03] Stable estimation of clock time errors and seismic velocity changes with a state-space model of cross-correlations of ambient noise
地震波干渉法に基づいて,繰り返し得られる常時微動の相互相関関数の位相差から地震波速度の時間変化が幅広く調べられている.これまで,大地震や火山活動,季節変動等による地殻構造の時間変化が推定されてきた.ここで,相互相関関数の位相差は地震波速度変化だけでなく地震計の時刻ずれによっても変化する.したがって,地殻構造の時間変化をより精度よくモニタリングするためには,地震計の時刻ずれが地震波速度変化の推定にどの程度寄与するのか評価する必要がある.これまで,地震計の時刻ずれによる相互相関関数の位相差は相互相関関数の非対称性から推定されてきた.しかしながら,地震波速度変化と地震計の時刻ずれはそれぞれ切り分けて推定されており,互いにどの程度影響するのか不明である.そこで本研究では,常時微動の相互相関関数の時系列データから状態空間モデルを構築し,カルマンフィルタを用いて地震計の時刻ずれと地震波速度変化,相関関数の振幅変化及びそれらの誤差共分散を評価することを目指す.
東京大学地震研究所及び防災科学技術研究所により霧島山に設置された8つの地震観測点で記録された常時微動を解析する.観測期間は2010年4月から2021年9月までであり,観測期間中に噴火活動により火口近傍の観測点では機器の交換等のメンテナンスが行われた.1日ごとにスタックした常時微動の相互相関関数9成分を観測値として,リファレンス波形の振幅変化,速度変化,時刻ずれを状態変数として状態空間モデルを構築した.ここでモデル関数は非線形であるので拡張カルマンフィルタにより状態変数を求めた.また,Nishida et al. (2020)に従って地震波速度変化の降雨応答と2016年熊本地震児の速度変化を説明変数として加え,これらの説明変数を最尤法により推定した.本手法により,観測機器のメンテナンスのためデータロガーの電源を落とした観測点において,0.15秒程度の微小な時刻ずれが検出された.この時刻ずれは,本地震観測網を用いて震源決定を行う際に数百m程度の誤差となり得る.また,振幅変化と速度変化,時刻ずれの誤差共分散の間には明瞭なトレードオフは見られなかった.観測された常時微動の相互相関関数に対して正規分布に従うノイズを加えた擬似波形を作成し,従来の手法と本手法で時刻ずれと速度変化を推定し,本手法の性能を検証した.本手法では,経過時間ごとの位相差を用いる従来の手法に比べて安定して微小な変化も推定できることがわかった.
東京大学地震研究所及び防災科学技術研究所により霧島山に設置された8つの地震観測点で記録された常時微動を解析する.観測期間は2010年4月から2021年9月までであり,観測期間中に噴火活動により火口近傍の観測点では機器の交換等のメンテナンスが行われた.1日ごとにスタックした常時微動の相互相関関数9成分を観測値として,リファレンス波形の振幅変化,速度変化,時刻ずれを状態変数として状態空間モデルを構築した.ここでモデル関数は非線形であるので拡張カルマンフィルタにより状態変数を求めた.また,Nishida et al. (2020)に従って地震波速度変化の降雨応答と2016年熊本地震児の速度変化を説明変数として加え,これらの説明変数を最尤法により推定した.本手法により,観測機器のメンテナンスのためデータロガーの電源を落とした観測点において,0.15秒程度の微小な時刻ずれが検出された.この時刻ずれは,本地震観測網を用いて震源決定を行う際に数百m程度の誤差となり得る.また,振幅変化と速度変化,時刻ずれの誤差共分散の間には明瞭なトレードオフは見られなかった.観測された常時微動の相互相関関数に対して正規分布に従うノイズを加えた擬似波形を作成し,従来の手法と本手法で時刻ずれと速度変化を推定し,本手法の性能を検証した.本手法では,経過時間ごとの位相差を用いる従来の手法に比べて安定して微小な変化も推定できることがわかった.