The 2023 SSJ Fall Meeting

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Poster session (Sept. 17th)

Regular session » S01. Theory and analysis method

[S01P] PM-P

Wed. Nov 1, 2023 5:00 PM - 6:30 PM Room P11 (F203) (Hall Annex)

[S01P-04] Consistency between S/P Amplitude Ratios and P-wave Polarities Observed at the NIED S-net and H-net Stations

*Youichi ASANO1 (1. National Research Institute for Earth Science and Disaster Resilience)

初動極性の読み取り値が少ない微小地震の発震機構解の高精度な推定に、P波やS波の振幅や振幅比がデータとして用いられることがある。このような手法の海域地震観測に対する適用可能性を調べることを目的として、東北地方の沖で発生する地震のS/P振幅比と初動極性の空間分布の対応を調べた。 本研究では、2019年から2023年7月の期間に北緯39度~41度、東経141.5度~147度で発生した振幅M3以上の地震886個を解析した。より具体的には、防災科研S-netおよびHi-netの連続記録から各地震の震源時刻を先頭する記録長60秒間の3成分速度波形を切り出し、バンドパスフィルター(通過帯域8-16Hz)に通した後に、震央距離200km以内の各観測点におけるS/P振幅比[例えば、Hardebeck and Shearer (2003)]を評価した。ここでは簡単のために、P波振幅値はP波到達時刻から2秒間の上下動成分記録のRMS振幅として、S波振幅値はS波到達時刻から2秒間の水平動2成分記録のRMS振幅としてそれぞれ評価し、S波振幅値/P波振幅値をS/P振幅比とした。 評価されたS/P振幅比の多くは1~20程度であった。この振幅比はP波初動極性の節線(地表観測点における押し引き分布が切り替わる境界線)付近の観測点で大きい値をとることが期待される。そこで、P波初動極性の空間分布からみた節線とS/P振幅比の空間分布とを比較した。その結果、震源と観測点がともに143度以西に位置する場合については、節線付近でS/P振幅比が大きいという良好な対応がみられた。一方、震源と観測点がともに143度以東に位置する場合には、上述のような対応が不明瞭なケースも数多く見られた。そのようなケースにおいては、震央距離が50㎞以内と比較的近い震源と観測点の組み合わせにおいても節線と振幅比の関係とが不明瞭であり、海溝近傍の強い不均質媒質によって短い震源経過時間のうちに震源輻射の情報が(エネルギー密度の空間分布から)失われているものと推察される。この結果は、S/P振幅比を発震機構解の推定に用いる場合に、不均質媒質の影響が少ないデータを選別する、或いは不均質媒質の影響も考慮することが重要であることを示唆している。