10:15 AM - 10:30 AM
[S02-04] Development of multi-platform next-generation WIN system (3)
1.はじめに
地震・地殻変動等の時系列データの伝送や検測処理に広く用いられているWINシステム(卜部・束田,1991;卜部・束田,1992;卜部,1994など)は,大学等の基幹システムとして30年近くにわたって使い続けられている.特に現在の対話検測処理ソフトウェアは機能向上を図ることが難しく,検測処理の高度化や迅速な情報発表を図る上での障害となりつつある.一方,この四半世紀で,ハードウェアの性能が大幅に向上したほか,マルチプラットフォームに対応した言語や対話処理に優れた入力デバイスの開発・淘汰が進み,ハードウェア環境に依存しないソフトウェア群の構築が可能になってきた.そこで,マルチプラットフォームのソフトウェア群(次世代WIN)の開発を進めている.
これまで対話検測ソフトウェアとして必要な機能を実装した新たなソフトウェアを試作してきた(中川・他,地震学会,2021,中川・他,地震学会,2022).WINフォーマット波形データの読み込みと表示,帯域制限フィルターの適用,手動検測,震源計算プログラムの実行,震源計算結果や震源データを地図上にカラー表示する機能を持ち,1つのソースコードからUnix (Linux, FreeBSD),Windows,macOS の複数プラットフォーム上で動作するネイティブバイナリをそれぞれの環境下でコンパイルできる特徴を有する.任意の震源計算プログラムを利用できるようにするために,外部コマンド実行機能を実装した.これにより,他の外部コマンドを用いた機能拡張が可能となった.
2.発震機構解計算機能の追加
外部コマンド実行機能を用いて,発震機構解計算プログラムを外部コマンドとして実行し,その結果を表示する機能を追加した.今回は,初動極性から発震機構を求めることもできるHASH (Hardebeck and Shearer, 2002)を計算プログラムとして利用できるように,WINの検測値ファイル(pickファイル)にあるHYPOMHの出力を読み込んでHASHのサブルーチンに引き渡すラッパープログラムを新たに作成した.計算結果は,従来WINシステムで予約されていた#m行を用いてpickファイルに書き込むことにした.
求めた発震機構解は,別ウインドウを開いて表示させた(図).初動極性や観測点名,地図を重ねて表示させることもできる.また,図上で発震機構解を修正することも可能とした.
3.まとめ
従来のWINシステムでは,初動極性の分布を表示できたものの,断層の走向や傾斜角等を求めて図示する機能は無かった.今回,HASHはユーザが別途用意する必要があるものの,波形読み込み,検測,震源決定,発震機構解推定まで一貫して行うことができるようになった.関連する研究者や技術者等で試用しながら,更なる機能拡張を進めていきたい.
本研究で作成した対話検測ソフトウェアは,今年度中には地震研究所のWEBサイト等を通じて一般への公開を予定している.また,伝送系システムについても検討を進めていきたい.これらの運用試験や機能拡張,システム製作等に協力いただける方は著者までご連絡ください.
謝辞:本研究では,国立研究開発法人防災科学技術研究所,北海道大学,弘前大学,東北大学,東京大学,名古屋大学,京都大学,高知大学,九州大学,鹿児島大学及び気象庁の地震観測データを用いました.ここに記して感謝します.なお,本研究は文部科学省による「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第2次)」の支援を受けました.
地震・地殻変動等の時系列データの伝送や検測処理に広く用いられているWINシステム(卜部・束田,1991;卜部・束田,1992;卜部,1994など)は,大学等の基幹システムとして30年近くにわたって使い続けられている.特に現在の対話検測処理ソフトウェアは機能向上を図ることが難しく,検測処理の高度化や迅速な情報発表を図る上での障害となりつつある.一方,この四半世紀で,ハードウェアの性能が大幅に向上したほか,マルチプラットフォームに対応した言語や対話処理に優れた入力デバイスの開発・淘汰が進み,ハードウェア環境に依存しないソフトウェア群の構築が可能になってきた.そこで,マルチプラットフォームのソフトウェア群(次世代WIN)の開発を進めている.
これまで対話検測ソフトウェアとして必要な機能を実装した新たなソフトウェアを試作してきた(中川・他,地震学会,2021,中川・他,地震学会,2022).WINフォーマット波形データの読み込みと表示,帯域制限フィルターの適用,手動検測,震源計算プログラムの実行,震源計算結果や震源データを地図上にカラー表示する機能を持ち,1つのソースコードからUnix (Linux, FreeBSD),Windows,macOS の複数プラットフォーム上で動作するネイティブバイナリをそれぞれの環境下でコンパイルできる特徴を有する.任意の震源計算プログラムを利用できるようにするために,外部コマンド実行機能を実装した.これにより,他の外部コマンドを用いた機能拡張が可能となった.
2.発震機構解計算機能の追加
外部コマンド実行機能を用いて,発震機構解計算プログラムを外部コマンドとして実行し,その結果を表示する機能を追加した.今回は,初動極性から発震機構を求めることもできるHASH (Hardebeck and Shearer, 2002)を計算プログラムとして利用できるように,WINの検測値ファイル(pickファイル)にあるHYPOMHの出力を読み込んでHASHのサブルーチンに引き渡すラッパープログラムを新たに作成した.計算結果は,従来WINシステムで予約されていた#m行を用いてpickファイルに書き込むことにした.
求めた発震機構解は,別ウインドウを開いて表示させた(図).初動極性や観測点名,地図を重ねて表示させることもできる.また,図上で発震機構解を修正することも可能とした.
3.まとめ
従来のWINシステムでは,初動極性の分布を表示できたものの,断層の走向や傾斜角等を求めて図示する機能は無かった.今回,HASHはユーザが別途用意する必要があるものの,波形読み込み,検測,震源決定,発震機構解推定まで一貫して行うことができるようになった.関連する研究者や技術者等で試用しながら,更なる機能拡張を進めていきたい.
本研究で作成した対話検測ソフトウェアは,今年度中には地震研究所のWEBサイト等を通じて一般への公開を予定している.また,伝送系システムについても検討を進めていきたい.これらの運用試験や機能拡張,システム製作等に協力いただける方は著者までご連絡ください.
謝辞:本研究では,国立研究開発法人防災科学技術研究所,北海道大学,弘前大学,東北大学,東京大学,名古屋大学,京都大学,高知大学,九州大学,鹿児島大学及び気象庁の地震観測データを用いました.ここに記して感謝します.なお,本研究は文部科学省による「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第2次)」の支援を受けました.