The 2023 SSJ Fall Meeting

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Room B

Regular session » S02. Seismometry and monitoring system

[S02] AM-1

Wed. Nov 1, 2023 9:30 AM - 10:45 AM Room B (F201)

chairperson:Masanao Shinohara, Shigeki Nakagawa(Earthquake Research Institute, the University of Tokyo)

10:30 AM - 10:45 AM

[S02-05] Detection of submarine volcanic activity at Kaitoku Seamount using S-net

*Ryoichi IWASE1 (1. JAMSTEC)

海徳海山では、2022年8月以降、航空機による海面の変色水の確認などの海底火山活動が報告されている(海上保安庁, 2022)。一方、同じ8月以降、防災科学技術研究所が構築した「日本海溝海底地震津波観測網」(S-net)の海底地震計の観測波形には、S-netの南側から深海サウンドチャネル(SOFAR)を伝搬してきたと考えられる波形が断続的に記録されている。岩瀬(2023)では、この波形が海徳海山の海底火山活動に起因するものではないことを示し、S-net各観測点への信号の到達時間差から、信号源(音源)の位置を小笠原諸島南端付近の海溝斜面上と推定した。他方、Tanaka et al. (2023)では、Wake島沖に設置されているハイドロフォンアレーの観測から、この信号が、北マリアナのAhyi海底火山の活動に伴う信号であると指摘するとともに、これとは別に、海徳海山の火山活動に伴うと推定される海中伝搬波を検出したことも報告されている。
そこで今回、Tanaka et al. (2023)を参照し、S-net海底地震計の観測波形を用いて、海徳海山の火山活動に伴う海中伝搬波の検出を試みた。
使用したデータは岩瀬(2023)と同じく、S-netの各観測点を構成する2種類の地震計のうち速度計を使用し、もう一方の地震計である加速度計で計測される重力の方向をもとに鉛直成分を算出した波形データである。解析対象期間は、Tanaka et al. (2023)を参照し、海徳海山からの海中伝搬波が検出される可能性の高い2022年9月1日とした。速度計の鉛直成分算出のための重力成分は、9月1日00:00 JSTから3時間の加速度計データを時間平均して求めた。
まず、海徳海山の位置に海中伝搬波の音源があると仮定し、岩瀬(2022a)と同様、観測点毎に伝搬時間分時間軸をずらした地震波形のスペクトログラムの対比を実施したが、海徳海山の火山活動に対応する信号は検出できなかった。次に岩瀬(2022b)の結果に基づき5-10 Hzのバンドパス・フィルタを原波形に適用した後、伝搬距離順に並べた図を作成した。なお、伝搬時間は伝搬距離(大円距離)を、岩瀬(2022b) において海中伝搬波の音速として推定した1472 m/sで割って求めた。
作成した図の例をFig. 1に示す。微弱ながら12:20頃を中心にほぼ直線状に縦に並ぶ信号が確認でき、海徳海山の火山活動に対応する信号と判断される。海徳海山では福徳岡ノ場のような顕著な噴火活動は確認されていないが、同程度の火山活動でもS-netで検出可能なことを示している。

謝辞
本研究の実施に際し防災科学技術研究所の公開データ(https://doi.org/10.17598/NIED.0007)を利用しました。伝搬距離の計算には国土地理院のサイト(https://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/surveycalc/surveycalc/bl2stf.html)を利用しました。

参考文献
海上保安庁(2022), https://www.kaiho.mlit.go.jp/info/kouhou/r4/k220823/k220823.pdf
岩瀬(2023),JpGU2023,SVC34-05
Tanaka et al. (2023), JpGU2023, SVC34-P01.
岩瀬(2022a),JpGU2022,SVC31-21
岩瀬(2022b),日本地震学会2022年度秋季大会,S02-02