日本地震学会2023年度秋季大会

講演情報

B会場

一般セッション » S02. 地震計測・処理システム

[S02] AM-2

2023年11月1日(水) 11:00 〜 12:15 B会場 (F201)

座長:田中 昌之(気象庁気象研究所)、辻 修平(海洋研究開発機構)

11:00 〜 11:15

[S02-06] 分布型音響センシング(DAS)を用いた東南海沖ケーブルでの振動観測

*田中 昌之1 (1. 気象庁気象研究所)

分布型音響センシング(DAS; Distributed Acoustic Sensing)の技術を用いた地震観測事例は国内でも最近数多く見られるようになった。DASの特徴としては、①一度の測定でファイバ全域にわたる稠密な一次元のひずみ速度計測が可能である。②光ファイバに入射する光パルス幅により決まる空間分解能があり、光パルス幅より狭い範囲の変化は平均化された値で観測されるため、点の計測は困難である。③ファイバ内の不純物や欠陥により発生する散乱光は微弱な光であり、ノイズ低減のために加算平均等の処理が行われている。④サンプリング周波数により決まる距離限界がある。⑤ファイバの伝送損失により、より遠方の散乱光の信号強度は装置の近傍よりも弱く、最大測定可能距離は存在し、かつより遠方ほど測定精度が劣る。等があり、DASで観測されるデータの物理量は、地震計で得られる物理量とは異なるひずみ速度で、かつある区間の平均化された値である。

昨年までは静岡県浜松市天竜区船明地区にあるトンネル内に敷設したシングルモード4芯1kmの光ファイバを使い、自然地震の観測及び加振器を用いた人工振動で振幅の線形性や安定性を調べた。今年からは静岡県御前崎市から沖合に南海トラフに沿って敷設されている東南海沖ケーブルのダークファイバを使って観測を行っている。東南海沖ケーブルは昨年12月に御前崎沖約4km付近でケーブルが損傷するトラブルがあり、現在、観測可能なDAS装置から約5kmの区間で観測を行っている。陸上局から約1kmの区間のケーブルは陸上で概ね道路下に敷設されており、約1kmから先は海底に敷設されている。陸上では車の往来、海域では天候対応する風浪などに起因する様々な振動を捉えている。当日は東南海沖ケーブルでのDAS観測の現状を紹介する。