日本地震学会2023年度秋季大会

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B会場

一般セッション » S02. 地震計測・処理システム

[S02] AM-2

2023年11月1日(水) 11:00 〜 12:15 B会場 (F201)

座長:田中 昌之(気象庁気象研究所)、辻 修平(海洋研究開発機構)

11:15 〜 11:30

[S02-07] 地表に設置した螺旋型と直線型の光ファイバケーブルを用いたDASにより計測された地震・微動の比較

*柾谷 将吾1、成瀬 涼平1、小林 佑輝1 (1. 株式会社INPEX)

近年、distributed acoustic sensing(以下DAS)は、従来の地震計等のセンサーに基づく観測システムと比して高密度な観測システムを実現し得る、新たなセンシング技術の1つとして注目されており、地震、火山、地下探査を含めた様々な分野に応用が検討されている(例えば[1-3])。DAS計測に用いる光ファイバケーブルの利用・設置方式も複数検討されており、地震や火山の分野では、陸海問わず、通信用光ファイバケーブルなどの既設のファイバ(いわゆるdark fiber)の利用に関する研究が多く報告されており(例えば[4-5])、資源開発の分野では、地下モニタリングの目的で、掘削した坑井内に新たに敷設する光ファイバケーブルを用いたDAS計測が普及し始めている(例えば[3])。
Dark fiber含め、地表付近に設置された光ファイバケーブルを利用するDAS計測における課題の1つとして、DASで計測されるエネルギーは、ファイバの軸方向の成分が、その垂直方向の成分と比べて支配的となるため、地表に対して鉛直方向に伝搬する波を計測することが制約となる。この課題を克服し、鉛直成分のエネルギーも十分に計測することが可能となれば、計測方向の依存性が低減し、例えば、地震探査の反射波の記録の改善が期待できる。
この課題の解決を目指すアプローチの1つとして、ファイバを直線ではなく螺旋状の形状とすることにより、軸方向に対して垂直方向の感度を向上させる、螺旋型光ファイバケーブルが提案されている[6]。しかし、このアプローチにも課題があり、新たに専用の光ファイバケーブルを敷設する必要があり、新たな敷設が必要ないdark fiberと比べるとコストが増大することが挙げられる。従って、目的に依って利用が限定される可能性があり、地表に螺旋型光ファイバケーブルを敷設して実施したDAS計測に関する先行報告は、世界的にもまだ数少ないため[7-8]、その有効性は十分に議論されていないと言える。
その有効性の検証を目的として、本研究では、新潟県で螺旋型および直線型の光ファイバケーブルを敷設して、地下探査に併せてDAS計測を実施した。本発表では、当DAS計測における、地震および微動(表面波)の計測結果に焦点をあてて、双方のファイバで取得された記録の比較について報告する。

図:新潟県に敷設した直線型(左図)および螺旋型(右図)の光ファイバケーブルを用いたDASにより計測された、千葉県東方沖地震(2023年5月26日19時3分)の一部記録の比較例。図中の17秒付近がP波に相当する。尚、直線型と螺旋型のケーブルは全長に差異があるため、横軸はリサンプリングによりサンプル数を同一としている。

参考文献
[1] N. J. Lindsey et al., “Fiber-Optic Network Observations of Earthquake Wavefields,” Geophysical Research Letters, 44, 11792-11799 (2017).
[2] T. Nishimura et al., “Source location of volcanic earthquakes and subsurface characterization using fiber-optic cable and distributed acoustic sensing system,” Scientific Reports, 11, 6319 (2021).
[3] T. M. Daley et al., “Field testing of fiber-optic distributed acoustic sensing (DAS) for subsurface seismic monitoring,” The Leading Edge, 32, 699-706 (2013).
[4] J. B. Ajo-Franklin et al., “Distributed Acoustic Sensing Using Dark Fiber for Near-Surface Characterization and Broad-band Seismic Event Detection,” Scientific Reports, 9, 1328 (2019).
[5] Z. Zhan et al., “Optical polarization-based seismic and water wave sensing on transoceanic cables,” Science, 371, 931-936 (2021).
[6] B. N. Kuvshinov, “Interaction of helically wound fibre-optic cables with plane seismic waves,” Geophysical Prospecting, 64, 671-688 (2016).
[7] A. Bakulin et al., “Evaluating HD weathering surveys and surface seismic with DAS in a sand dune environment,” in Proceedings of 2nd International Meeting for Applied Geoscience & Energy, 621–625 (2022).