[S02P-06] Development of Tsunami Evacuation Training System
1.はじめに
国立研究開発法人防災科学技術研究所(以下、防災科研)と凸版印刷株式会社(以下、凸版印刷)は、令和2年度から令和4年度に「全天周実写画像を用いた津波避難訓練システムに関する研究」を実施した。
津波が発生した際、どのように津波が居住エリアに浸水してくるのかなど、住民一人ひとりが日頃から浸水リスクを理解した上で、避難行動を自分事として考える必要がある。しかし、国や自治体が作成する津波ハザードマップは、2次元の津波浸水予測図として提供されているため、自分の生活圏内において何が起こるのか、理解しづらいのが現状である。
千葉県は、日本海溝海底地震津波観測網(以下、S-net)による津波浸水予測システムを構築し、現在運用している(高橋他、2022年度日本地震学会秋季大会)。このシステムは、S-netが津波を観測すると、その津波高の空間分布に従い、各予測対象地点の津波到達時刻、津波高、浸水深分布図を即時的に示すものである。
津波浸水予測システムの津波浸水シミュレーションを津波避難訓練で活用するため、津波避難訓練システムは、3Dデジタルマップと住民目線での全天周実写画像(360度画像)に対して、刻一刻と変化する津波浸水シミュレーションを重ね合わせることで、自宅から避難所に至る経路の津波浸水を体験することができる。
2.津波避難訓練システムと津波体験VR
国や自治体では、建物や地形の高さがわかる3Dデジタルマップを活用し、津波発生時の浸水予測や住民の避難誘導などに役立てることが期待されている。そこで本研究では、NTTデータ(RESTEC)のAW3Dを用いて、JAGURSで計算された10mメッシュの津波浸水シミュレーションをデジタルツイン上に可視化するとともに、AW3Dの3DデジタルマップとGoogle Street Viewの画像を重ね合わせることにより、全天周実写画像上で津波浸水の可視化ができる津波避難訓練システムを開発した。
津波避難訓練システムは、パソコンやスマートフォンのWebブラウザを用いて、避難経路の危険個所等の情報が共有できる機能も実装されており、実践的な津波避難訓練や防災教育に活用することができる。また、津波避難訓練システムは、住民の生活圏内における津波浸水予測を2次元の地図上で俯瞰し、住民目線の全天周実写画像上で確認できるため、一人ひとりの津波避難計画の検討に役立てることができ、下記の4つの特徴を有している 。
(1)住民目線でGoogle Street Viewに津波浸水を可視化するビューア機能
(2)避難所までのルートと時間を地図上に可視化する避難シミュレーション機能
(3)地図上で危険箇所を共有するタグ付け機能
(4)地図上で住民の防災情報を整理する管理機能
千葉県では、津波発生時における県民の早期避難等の行動を促すため、津波体験VRの動画を作成し、YouTube「千葉県公式PRチャンネル」で公開している。津波体験VRの動画の作成は、防災科研と凸版印刷が協力しており、地震による津波の被害及び避難について、360度の視点で疑似体験することができる。千葉県民以外の方々にも、津波ハザードマップを自分事として理解するため、津波が迫る状況下での避難行動を津波体験VRで体験してほしい。
3.津波避難訓練での実証
津波発生時における住民の避難行動や情報伝達等の検証と県民の津波に対する意識の高揚を図るため、令和4年10月30日に勝浦市と千葉県の共催による津波避難訓練が実施された(五十嵐他、2023年度地球惑星科学連合大会)。勝浦市の実践的な津波避難訓練では、千葉県の地震被害予測システム(大井他、2022年度日本地震学会秋季大会)や津波浸水予測システムとともに、津波避難訓練システムの津波浸水映像は、市中の定点カメラ映像として津波浸水状況の把握等に活用された。
2011年東北地方太平洋沖地震による津波が発生してから12年が経過しており、外房地域の市町村では、津波を経験していない小学生や津波の記憶が薄れた中高生が多くなっている。市民向けの防災フェアでは、津波体験VRを市民に体験してもらうとともに、津波避難訓練システムで自宅周辺の津波浸水映像を確認してもらい、避難が遅れた場合は、住宅2階の高さまで津波が浸水することや、津波ハザードマップで確認できる浸水深を実際の町並みと重ねることにより、津波の恐ろしさを理解してもらった。
4.おわりに
本年度から新規に立ち上げた凸版印刷との共同研究では、Webブラウザ上で全天周実写画像に様々な災害シミュレーションを可視化できる「リアルハザードビューア」を開発するとともに、災害シミュレーションに基づいた実践的な防災訓練や防災教育、災害時の初動対応などに活用できるリアルハザードプラットフォームに関する研究を実施する予定である。
国立研究開発法人防災科学技術研究所(以下、防災科研)と凸版印刷株式会社(以下、凸版印刷)は、令和2年度から令和4年度に「全天周実写画像を用いた津波避難訓練システムに関する研究」を実施した。
津波が発生した際、どのように津波が居住エリアに浸水してくるのかなど、住民一人ひとりが日頃から浸水リスクを理解した上で、避難行動を自分事として考える必要がある。しかし、国や自治体が作成する津波ハザードマップは、2次元の津波浸水予測図として提供されているため、自分の生活圏内において何が起こるのか、理解しづらいのが現状である。
千葉県は、日本海溝海底地震津波観測網(以下、S-net)による津波浸水予測システムを構築し、現在運用している(高橋他、2022年度日本地震学会秋季大会)。このシステムは、S-netが津波を観測すると、その津波高の空間分布に従い、各予測対象地点の津波到達時刻、津波高、浸水深分布図を即時的に示すものである。
津波浸水予測システムの津波浸水シミュレーションを津波避難訓練で活用するため、津波避難訓練システムは、3Dデジタルマップと住民目線での全天周実写画像(360度画像)に対して、刻一刻と変化する津波浸水シミュレーションを重ね合わせることで、自宅から避難所に至る経路の津波浸水を体験することができる。
2.津波避難訓練システムと津波体験VR
国や自治体では、建物や地形の高さがわかる3Dデジタルマップを活用し、津波発生時の浸水予測や住民の避難誘導などに役立てることが期待されている。そこで本研究では、NTTデータ(RESTEC)のAW3Dを用いて、JAGURSで計算された10mメッシュの津波浸水シミュレーションをデジタルツイン上に可視化するとともに、AW3Dの3DデジタルマップとGoogle Street Viewの画像を重ね合わせることにより、全天周実写画像上で津波浸水の可視化ができる津波避難訓練システムを開発した。
津波避難訓練システムは、パソコンやスマートフォンのWebブラウザを用いて、避難経路の危険個所等の情報が共有できる機能も実装されており、実践的な津波避難訓練や防災教育に活用することができる。また、津波避難訓練システムは、住民の生活圏内における津波浸水予測を2次元の地図上で俯瞰し、住民目線の全天周実写画像上で確認できるため、一人ひとりの津波避難計画の検討に役立てることができ、下記の4つの特徴を有している 。
(1)住民目線でGoogle Street Viewに津波浸水を可視化するビューア機能
(2)避難所までのルートと時間を地図上に可視化する避難シミュレーション機能
(3)地図上で危険箇所を共有するタグ付け機能
(4)地図上で住民の防災情報を整理する管理機能
千葉県では、津波発生時における県民の早期避難等の行動を促すため、津波体験VRの動画を作成し、YouTube「千葉県公式PRチャンネル」で公開している。津波体験VRの動画の作成は、防災科研と凸版印刷が協力しており、地震による津波の被害及び避難について、360度の視点で疑似体験することができる。千葉県民以外の方々にも、津波ハザードマップを自分事として理解するため、津波が迫る状況下での避難行動を津波体験VRで体験してほしい。
3.津波避難訓練での実証
津波発生時における住民の避難行動や情報伝達等の検証と県民の津波に対する意識の高揚を図るため、令和4年10月30日に勝浦市と千葉県の共催による津波避難訓練が実施された(五十嵐他、2023年度地球惑星科学連合大会)。勝浦市の実践的な津波避難訓練では、千葉県の地震被害予測システム(大井他、2022年度日本地震学会秋季大会)や津波浸水予測システムとともに、津波避難訓練システムの津波浸水映像は、市中の定点カメラ映像として津波浸水状況の把握等に活用された。
2011年東北地方太平洋沖地震による津波が発生してから12年が経過しており、外房地域の市町村では、津波を経験していない小学生や津波の記憶が薄れた中高生が多くなっている。市民向けの防災フェアでは、津波体験VRを市民に体験してもらうとともに、津波避難訓練システムで自宅周辺の津波浸水映像を確認してもらい、避難が遅れた場合は、住宅2階の高さまで津波が浸水することや、津波ハザードマップで確認できる浸水深を実際の町並みと重ねることにより、津波の恐ろしさを理解してもらった。
4.おわりに
本年度から新規に立ち上げた凸版印刷との共同研究では、Webブラウザ上で全天周実写画像に様々な災害シミュレーションを可視化できる「リアルハザードビューア」を開発するとともに、災害シミュレーションに基づいた実践的な防災訓練や防災教育、災害時の初動対応などに活用できるリアルハザードプラットフォームに関する研究を実施する予定である。