[S02P-07] Orientations of DONET seismometers estimated from seismic waveform data (2)
南海トラフでは100-200年程度の間隔でM8級の海溝型巨大地震が繰り返し発生しており, 今後30年以内にM8~9程度の地震が発生する確率は南海トラフ全域で70~80%程度と非常に高い値が報告されている[1].
このような背景を踏まえ, 地震計・水圧計を海底に直接設置し,リアルタイムで地震・津波データを観測することを目的とし, 地震・津波観測監視システムDONET(Dense Oceanfloor Network system for Earthquakes and Tsunamis)の構築が進められた.2011年より熊野灘のDONET1が運用を開始[2], 2016年からは紀伊水道沖のDONET2が運用を開始した.現在は, 防災科学技術研究所が運用する陸海統合地震津波火山観測網(MOWLAS)の一部として,合計51観測点において地震・津波データの観測が行われている. これらの観測データは, 地震・津波の早期検知や地殻活動のモニタリングと構造解明を目的とした理学的研究に利用されるとともに, 気象庁による緊急地震速報や津波警報の発令や地方自治体による津波即時予測においても利活用されている.
DONET観測点で得られた地震動波形の解析においては,正確な地震計方位の把握が重要である. しかし,地震計はROV (Remotely Operated Vehicle)によって深海に設置されるため,意図した方位に精度良く設置する事や, 設置後の方位をROV搭載カメラの映像を元に測定する事は,容易ではない.
この課題に対し, 中野ほかは2012年に, DONET1の20観測点の地震計に対して以下に示す3種類の方位推定を行い、波形を用いて推定された地震計の方位は,各推定におけるばらつきの範囲でよく一致していることが示された [3].
(1) 遠地地震の陸上観測記録との相互相関による方位推定
(2) 遠地地震のP波初動の振動方向を用いた方位推定
(3) エアガンによる振動波形を用いた方位推定
その後、中野ほかは2017年に(2)の手法に従ってDONET2まで含めた再解析を行った[4].それ以降,海洋研究開発機構では,防災科学技術研究所からのDONET運用受託業務の一環として,中野・他(2017)と同様の手法を適用することで,継続的に方位推定を実施するとともに,学会報告を行ってきた [5,6,7].
昨年度の報告以降,2023年3月に観測点の再設置(MRF23)と埋設処置(MRG26)が実施された.本大会では、これら2点について海域作業後の方位推定を実施するとともに,他の観測点についても昨年度の報告以降のデータを追加し、更新された方位推定結果を報告する。さらに、推定方位の変動要因についても議論する予定である.
謝辞:本研究はDONET海中部装置の保守業務として実施しました. また, 解析には防災科学技術研究所のDONETデータを使用させていただきました. 観測網を維持, 管理されている皆様に感謝いたします.
[1] 地震調査研究推進本部 地震調査委員会, 長期評価による地震発生確率値の更新について, 2022年1月13日
[2] 川口 勝義. 荒木 英一郎. 金田 義行, DONET-海底におけるリアルタイム長期連続モニタリング手法の確立, Journal of Advanced Marine Science and Technology Society. Vol 17. No.2. pp 125-135. 2011
[3] Masaru Nakano, Takashi Tonegawa, and Yoshiyuki Kaneda. Orientations of DONET seismometers estimated from seismic waveforms. JAMSTEC Rep. Res. Dev., Volume 15, September 2012, 77-89
[4] 中野 優・他, 地震動波形から推定したDONET2地震計の方位, JpGU-AGU Joint Meeting 2017, STT59-P03
[5] 西山 岳洋・他, 地震動波形から推定したDONET地震計方位の精度向上, JpGU-AGU Joint Meeting 2020, SSS17-P02
[6] 矢田 修一郎・他, 地震動波形から推定したDONET地震計方位の精度向上, JpGU-AGU Joint Meeting 2021, SSS06-P01
[7] 有吉 慶介・他, 地震波形データを用いたDONET地震計の方位推定, 日本地震学会 2022 年度秋季大会, S02P-03
このような背景を踏まえ, 地震計・水圧計を海底に直接設置し,リアルタイムで地震・津波データを観測することを目的とし, 地震・津波観測監視システムDONET(Dense Oceanfloor Network system for Earthquakes and Tsunamis)の構築が進められた.2011年より熊野灘のDONET1が運用を開始[2], 2016年からは紀伊水道沖のDONET2が運用を開始した.現在は, 防災科学技術研究所が運用する陸海統合地震津波火山観測網(MOWLAS)の一部として,合計51観測点において地震・津波データの観測が行われている. これらの観測データは, 地震・津波の早期検知や地殻活動のモニタリングと構造解明を目的とした理学的研究に利用されるとともに, 気象庁による緊急地震速報や津波警報の発令や地方自治体による津波即時予測においても利活用されている.
DONET観測点で得られた地震動波形の解析においては,正確な地震計方位の把握が重要である. しかし,地震計はROV (Remotely Operated Vehicle)によって深海に設置されるため,意図した方位に精度良く設置する事や, 設置後の方位をROV搭載カメラの映像を元に測定する事は,容易ではない.
この課題に対し, 中野ほかは2012年に, DONET1の20観測点の地震計に対して以下に示す3種類の方位推定を行い、波形を用いて推定された地震計の方位は,各推定におけるばらつきの範囲でよく一致していることが示された [3].
(1) 遠地地震の陸上観測記録との相互相関による方位推定
(2) 遠地地震のP波初動の振動方向を用いた方位推定
(3) エアガンによる振動波形を用いた方位推定
その後、中野ほかは2017年に(2)の手法に従ってDONET2まで含めた再解析を行った[4].それ以降,海洋研究開発機構では,防災科学技術研究所からのDONET運用受託業務の一環として,中野・他(2017)と同様の手法を適用することで,継続的に方位推定を実施するとともに,学会報告を行ってきた [5,6,7].
昨年度の報告以降,2023年3月に観測点の再設置(MRF23)と埋設処置(MRG26)が実施された.本大会では、これら2点について海域作業後の方位推定を実施するとともに,他の観測点についても昨年度の報告以降のデータを追加し、更新された方位推定結果を報告する。さらに、推定方位の変動要因についても議論する予定である.
謝辞:本研究はDONET海中部装置の保守業務として実施しました. また, 解析には防災科学技術研究所のDONETデータを使用させていただきました. 観測網を維持, 管理されている皆様に感謝いたします.
[1] 地震調査研究推進本部 地震調査委員会, 長期評価による地震発生確率値の更新について, 2022年1月13日
[2] 川口 勝義. 荒木 英一郎. 金田 義行, DONET-海底におけるリアルタイム長期連続モニタリング手法の確立, Journal of Advanced Marine Science and Technology Society. Vol 17. No.2. pp 125-135. 2011
[3] Masaru Nakano, Takashi Tonegawa, and Yoshiyuki Kaneda. Orientations of DONET seismometers estimated from seismic waveforms. JAMSTEC Rep. Res. Dev., Volume 15, September 2012, 77-89
[4] 中野 優・他, 地震動波形から推定したDONET2地震計の方位, JpGU-AGU Joint Meeting 2017, STT59-P03
[5] 西山 岳洋・他, 地震動波形から推定したDONET地震計方位の精度向上, JpGU-AGU Joint Meeting 2020, SSS17-P02
[6] 矢田 修一郎・他, 地震動波形から推定したDONET地震計方位の精度向上, JpGU-AGU Joint Meeting 2021, SSS06-P01
[7] 有吉 慶介・他, 地震波形データを用いたDONET地震計の方位推定, 日本地震学会 2022 年度秋季大会, S02P-03