2:00 PM - 2:15 PM
[S03-11] GNSS/A seafloor geodesy using an ultralight and compact towed buoy system.
GNSS-音響結合方式(GNSS-A)の海底地殻変動観測のために開発した超軽量-小型のえい航ブイシステムを駿河湾および宮古島沖における計測に使用したので紹介する。 GNSS-Aに導入された、船底トランスデューサを用いたハルマウントシステム(Sato et al., 2013)は、よくコントロールされた航跡を高速(~7 knot)で航行しながら信号を送受信できるため、精度の高い海底局位置の測位を短い時間で実現できる。ただしこのシステムは船底のトランスデューサと高価なジャイロコンパスを備えた専用の観測船が必要である。
そこで我々は、低予算、自前の船を持たずにハルマウントシステムと同等の観測を行えることを目指し、軽量-小型えい航ブイシステムの開発を行っている。GNSS-Aの構成要素はGNSSアンテナ(位置測定)、ジャイロコンパス(姿勢測定)、トランスデューサ(音響測距)である。本システムでは、図1のようにGNSS収録器(Net-R8)、トランスデューサのコントローラ部、姿勢データ収録部(ノートPC)を全て船上に集約し、ブイにはセンサーのみを設置することでブイの軽量化を試みている。2023年5月の連合大会では、重量25 kg全長1.5mのブイを作製し、海域試験において5 knotでえい航しながら十分なS-N比の音響測距が行えたことを紹介した(生田ほか, 2023)。その後このブイを用い、2023年4月と7月に三保半島沖の駿河湾(SNW海底局)、2023年6月に琉球海溝沿いの宮古深海平坦面(OMYK海底局を新設)で実観測を行った。
ブイの取り回しは問題なく行えている。駿河湾SNWでは東海大学の実習船「北斗」で、Aフレームとロープで上げ下ろしを行い、4名の人手が必要であった。宮古島沖OMYKの観測では漁船「第二幸徳丸」で、乾舷が低いためロープを使わず2名のみで上げ下ろしできた。SNWでは合計6時間、OHTMでは17時間を5ktでえい航し続け、耐久性も示された。
実観測を重ねる中で、ジャイロコンパスのトラブルが二件あった。一件目は電源部の浸水である。ジャイロコンパスには電源供給の必要があり、バッテリーとUSB-Hubを弁当箱に入れてブイに取り付けている。弁当箱はポリエチレン袋に入れて厳重に防水し、ジャイロと船に向かう2本のケーブルを外に出している(写真)。宮古島沖OMYKの観測でケーブル部分から弁当箱が浸水した。袋を2重3重にすれば浸水を防げるが、防水を厳重にするほどトラブル対応の際に揺れる船上での出し入れが大変になる。簡単で頑強な浸水対策を試行錯誤している。二つ目のトラブルは信号の途絶である。ジャイロコンパスからはNMEAフォーマットに準じた時刻と姿勢情報がシリアル通信で出力されるため、30m伝送するためにUSB Extenderで変換してEthernetケーブルを通している(図1)。観測の途中でしばしば、通信が途絶してシリアル接続が失われることがあった。ほとんどの場合はPCのUSBポートを無水エタノールで掃除して再接続すると復旧した。原因としてEthernetケーブルを経由した信号の電圧に余裕が無かったことが考えられる。ブイ側のUSB-Hubの電源供給をリセットしないと復旧しない場合もあった。市販のUSB Extenderは千円程度から数万円まであり(我々が使用したのは数千円)、より高性能のものを選定することで回避できた可能性がある。
2023年6月宮古島沖OMYKの観測では、水深約900mの海底に3台のトランスポンダーを設置し、17時間の観測で図2の幾何学形状を3往復半描いた。2023年4月と7月の駿河湾SNWの観測では、水深約800mに3台設置したトランスポンダー上を同様の幾何学形状の片道1回のみを行った。8月と9月では1往復を計画している。本発表では、駿河湾SNWで繰り返しの観測で得られる海底局位置の比較から本観測の局位置推定精度を評価し、また宮古島沖OMYKの初回位置を報告する予定である。
そこで我々は、低予算、自前の船を持たずにハルマウントシステムと同等の観測を行えることを目指し、軽量-小型えい航ブイシステムの開発を行っている。GNSS-Aの構成要素はGNSSアンテナ(位置測定)、ジャイロコンパス(姿勢測定)、トランスデューサ(音響測距)である。本システムでは、図1のようにGNSS収録器(Net-R8)、トランスデューサのコントローラ部、姿勢データ収録部(ノートPC)を全て船上に集約し、ブイにはセンサーのみを設置することでブイの軽量化を試みている。2023年5月の連合大会では、重量25 kg全長1.5mのブイを作製し、海域試験において5 knotでえい航しながら十分なS-N比の音響測距が行えたことを紹介した(生田ほか, 2023)。その後このブイを用い、2023年4月と7月に三保半島沖の駿河湾(SNW海底局)、2023年6月に琉球海溝沿いの宮古深海平坦面(OMYK海底局を新設)で実観測を行った。
ブイの取り回しは問題なく行えている。駿河湾SNWでは東海大学の実習船「北斗」で、Aフレームとロープで上げ下ろしを行い、4名の人手が必要であった。宮古島沖OMYKの観測では漁船「第二幸徳丸」で、乾舷が低いためロープを使わず2名のみで上げ下ろしできた。SNWでは合計6時間、OHTMでは17時間を5ktでえい航し続け、耐久性も示された。
実観測を重ねる中で、ジャイロコンパスのトラブルが二件あった。一件目は電源部の浸水である。ジャイロコンパスには電源供給の必要があり、バッテリーとUSB-Hubを弁当箱に入れてブイに取り付けている。弁当箱はポリエチレン袋に入れて厳重に防水し、ジャイロと船に向かう2本のケーブルを外に出している(写真)。宮古島沖OMYKの観測でケーブル部分から弁当箱が浸水した。袋を2重3重にすれば浸水を防げるが、防水を厳重にするほどトラブル対応の際に揺れる船上での出し入れが大変になる。簡単で頑強な浸水対策を試行錯誤している。二つ目のトラブルは信号の途絶である。ジャイロコンパスからはNMEAフォーマットに準じた時刻と姿勢情報がシリアル通信で出力されるため、30m伝送するためにUSB Extenderで変換してEthernetケーブルを通している(図1)。観測の途中でしばしば、通信が途絶してシリアル接続が失われることがあった。ほとんどの場合はPCのUSBポートを無水エタノールで掃除して再接続すると復旧した。原因としてEthernetケーブルを経由した信号の電圧に余裕が無かったことが考えられる。ブイ側のUSB-Hubの電源供給をリセットしないと復旧しない場合もあった。市販のUSB Extenderは千円程度から数万円まであり(我々が使用したのは数千円)、より高性能のものを選定することで回避できた可能性がある。
2023年6月宮古島沖OMYKの観測では、水深約900mの海底に3台のトランスポンダーを設置し、17時間の観測で図2の幾何学形状を3往復半描いた。2023年4月と7月の駿河湾SNWの観測では、水深約800mに3台設置したトランスポンダー上を同様の幾何学形状の片道1回のみを行った。8月と9月では1往復を計画している。本発表では、駿河湾SNWで繰り返しの観測で得られる海底局位置の比較から本観測の局位置推定精度を評価し、また宮古島沖OMYKの初回位置を報告する予定である。