The 2023 SSJ Fall Meeting

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Room C

Regular session » S03. Crustal deformation, GNSS, and gravity

[S03] PM-1

Tue. Oct 31, 2023 1:30 PM - 2:45 PM Room C (F202)

chairperson:Yusuke Yokota, Tadashi Ishikawa

2:30 PM - 2:45 PM

[S03-13] Numerical experiment on template matching and relative strength index based on noise analysis of high-rate GNSS data

*Riko Arai1, Yuta Mitsui2 (1. Graduate School of Science and Technology, Shizuoka University, 2. Department of Geosciences, Shizuoka University)

様々な時間スケールのスロー地震が報告されている中、継続時間100秒程度から1日程度の帯域のイベントは検出事例が少ない(Ide and Beroza, 2023)。かつ、それらの検出事例の一部は微動・低周波地震のクラスター的活動を1つのイベントとして解釈した間接的なものであるため、測地学的手法でのより直接的なスロースリップイベント検出を行うことがこの帯域のスロー地震を理解する上で不可欠と考えられる。そこで、本研究では実際のハイレートGNSSデータのノイズ特性解析、および、シグナル検出手法の設定の検討(数値実験)を行う。

使用するデータは、Nevada Geodetic Laboratory が提供する、5分サンプリング精密単独測位解(Blewitt et al., 2018)のハイレートGNSSデータセットである。GNSSデータのノイズスペクトルは一般にホワイトノイズ的ではなく、周波数に依存した成分を持つことが知られている(e.g., Genrich and Bock, 2006; Geng et al., 2018)。このことがシグナル検出に影響を与えていると考え、データのノイズスペクトルが具体的にどうなっているかを調べる。そのため、連続した30日間のデータから1日分ずつのパワースペクトル密度を算出し、スタックする。次に、観測データのパワースペクトル密度の形状を単純化したパワースペクトル密度の形状を持つノイズを作成し、Clipped ReLU 関数のシグナル(範囲0~1、変位期間1800秒)を足した人工データXと、単純なホワイトノイズにシグナルを足した人工データωとを作成する。

その上で、1日サンプリングGNSSデータの解析で用いられてきた2つの手法について、シグナル検出の数値実験を行う。1つは、相関分析に基づくテンプレートマッチング(e.g., Rousset et al., 2017; Okada et al., 2022)で、Clipped ReLU 関数をテンプレートとし、テンプレート全体の窓幅は変位期間の10倍とする。変位期間およびノイズレベル(標準偏差σ)を変えたときに、シグナルの位置で最大の相関係数を取るか否かで結果を評価する。もう1つは、相対力指数(RSI)に基づく検出(e.g., Crowell et al., 2016)である。RSIは、株式市場において短期間での株価の急速な変化を判断する指標として知られ、シグナルの有無を判断する際の一般的な閾値の目安も確立している(e.g., Wong et al., 2003)。こちらも、期間およびノイズレベル(標準偏差σ)を変え、シグナルの位置でRSIが70を超える最大値を取るか否かで結果を評価する。

まず、観測データのノイズスペクトル(パワースペクトル密度)を調べた結果、周波数が3×10-4 Hz程度以下の低周波数帯では周波数の-1乗におよそ比例するピンクノイズ的傾向が見られるが、それ以上の高周波数帯では周波数依存性が小さいホワイトノイズ的傾向になることがわかった。なお、ハイレートGNSSデータ一般がこのようになっているわけではなく、今回使用した Nevada Geodetic Laboratory の5分解に固有の特性である。

この観測データと同様の特性を持つノイズから作成した人工データ Xと、ホワイトノイズから作成した人工データω各々について、数値実験結果をまとめる。テンプレートマッチングでは、人工データω(ホワイトノイズ)のとき、シグナルの半分程度(900秒)未満の短い変位期間を設定すると、著しく性能低下することがわかった(図a)。人工データX(観測データ参照ノイズ)では、この性質が消え、テンプレートの変位期間が短ければ短いほど検出可能性が上がるという結果が得られた(図b)。ただし、ホワイトノイズの場合(人工データω)と比べて、観測データ参照ノイズ(人工データX)の場合、検出可能なノイズレベルの閾値が全般に小さくなり、ノイズに弱くなる傾向が見られた。

RSIに基づく検出では、人工データω(ホワイトノイズ)のとき、シグナルの半分程度未満、またはシグナルより長い期間を設定すると検出性能が低下した(図c)。人工データX(観測データ参照ノイズ)では、長い期間を設定するほど性能が向上した(図d)。さらに、ホワイトノイズの場合(人工データω)に比べて、観測データ参照ノイズ(人工データX)の場合、検出可能なノイズレベルの閾値が全般に大きくなり、ノイズに強くなる傾向が見られた。これはテンプレートマッチングとは真逆の傾向である。

人工データX(観測データ参照ノイズ)に対しては、RSIの検出能力が全体として優れていた。株価の分析に用いられてきた指標が、ハイレートGNSSの解析にも応用できそうであることは興味深い。