[S03P-04] Attempt to comprehensive detecting intermediate-term slow slip events in the shallow part of the Suruga Trough
西南日本の南海トラフ沈み込み帯では多くのスロースリップイベント(SSE)が発生している。深部SSEはGNSSやひずみ計・傾斜計に基づいて検出されてきた(例えばNishimura et al., 2013; Okada et al., 2022; Yabe et al., 2023)。近年は海溝に近い浅部でもSSE検出が試みられている。例えば、深部低周波地震の活動を基準にGNSSデータをスタッキングして短期的スロースリップイベント(S-SSE)の検出を試みた先行研究(Kano and Kato, 2020)は、駿河トラフの浅部で深部S-SSEと同時に発生する断層すべりを推定した。しかし、この結果は、南海トラフ沈み込み帯の広範囲でのS-SSE推定の一部であり、駿河トラフ浅部の断層すべりのみに焦点を当ててSSEの網羅的検出を目指した先行研究は存在しない。
本研究では、推定された駿河トラフ浅部における断層すべりを検証し、また、他の時期においても同様の断層すべりが生じていないかを調査するため、駿河トラフの上盤と下盤間のGNSS基線長変化および体積ひずみ計データを解析する。
解析データとして、国土地理院が提供するGNSSデータ(F5解)の水平成分について、2002年から2022年までの時系列データを使用した。アンテナ交換に伴う人為的オフセット、2009年8月11日駿河湾の地震に伴うオフセット、季節変動を予め除去した。
まず、駿河湾両岸のGNSS観測点間(5ペア)の基線長時間変化を算出する。先行研究(Kano and Kato, 2020)の解析手法に従い、2004~2009年に発生した11回の深部S-SSE発生日(Sekine et al., 2010; Nishimura et al., 2013)前後300日間の基線長データをデトレンドし、11回分をスタックした。深部S-SSE発生日を基準に、先行研究と同じ時間窓である20日間、本研究独自の100日間の基線長短縮量をそれぞれ算出した。この結果、駿河トラフ浅部のGNSS基線のうち南側では、深部S-SSEと同時期に、Kano & Kato (2020)の20日間時間窓よりも長い100日間程度の基線短縮が見られた。この100日間程度の基線短縮は、90%信頼区間において統計的に有意であった。Yokota & Ishikawa (2020)やTakemura et al. (2022)が南海トラフの紀伊半島沖浅部で比較的長期にわたるSSE(あるいは群発的な超低周波地震活動)を検出したことから、駿河トラフ浅部でも比較的長期にわたるSSEが単独発生していてもおかしくないと考えられる。
次に、駿河トラフ浅部で100日間程度継続するSSEが単独発生した可能性のある時期を探るため、複数の方法でSSE候補期間を絞り込む。例として、SSEによる地表変位を模擬したテンプレートとGNSS基線長の100日間移動平均データとを相関分析(テンプレートマッチング)した。また、GNSS基線長移動平均データをデトレンドしたものに100日間タイムウィンドウを設定した。タイムウィンドウに含まれるデータを用いて回帰直線をフィッテイングし、回帰直線の右端と左端の差を求めることで基線長の速度変換を行った。さらに、3次元半無限均質弾性体のグリーン関数(Okada, 1992)を用いて、駿河トラフ浅部へ設定した仮想の断層による仮想の基線長変化を計算し、データとの整合性が高い時期を抽出した。その結果、2002~2022年の間にいくつかのSSE候補期間が推定された。SSE候補期間のGNSSデータを基に、暫定的な断層モデルをフォワード計算で仮推定した。SSE候補期間中の観測変位は、駿河湾直下よりやや深部側に断層モデルを仮定することである程度説明できることがわかった。
SSE候補期間で、体積ひずみ計データにおいてもひずみイベントが見られるかどうかを検証するため、暫定的な断層モデルによる地表の体積ひずみ(理論値)と体積ひずみ計データ(観測値)との比較を行った。しかし現在のところ、暫定的な断層モデルから計算される地表の体積ひずみと、体積ひずみ計のデータとは必ずしも整合的ではないこともわかった。SSE候補期間中の観測変位を説明するような断層モデルの再検討など、さらなる精査が必要と考えられる。
本研究では、推定された駿河トラフ浅部における断層すべりを検証し、また、他の時期においても同様の断層すべりが生じていないかを調査するため、駿河トラフの上盤と下盤間のGNSS基線長変化および体積ひずみ計データを解析する。
解析データとして、国土地理院が提供するGNSSデータ(F5解)の水平成分について、2002年から2022年までの時系列データを使用した。アンテナ交換に伴う人為的オフセット、2009年8月11日駿河湾の地震に伴うオフセット、季節変動を予め除去した。
まず、駿河湾両岸のGNSS観測点間(5ペア)の基線長時間変化を算出する。先行研究(Kano and Kato, 2020)の解析手法に従い、2004~2009年に発生した11回の深部S-SSE発生日(Sekine et al., 2010; Nishimura et al., 2013)前後300日間の基線長データをデトレンドし、11回分をスタックした。深部S-SSE発生日を基準に、先行研究と同じ時間窓である20日間、本研究独自の100日間の基線長短縮量をそれぞれ算出した。この結果、駿河トラフ浅部のGNSS基線のうち南側では、深部S-SSEと同時期に、Kano & Kato (2020)の20日間時間窓よりも長い100日間程度の基線短縮が見られた。この100日間程度の基線短縮は、90%信頼区間において統計的に有意であった。Yokota & Ishikawa (2020)やTakemura et al. (2022)が南海トラフの紀伊半島沖浅部で比較的長期にわたるSSE(あるいは群発的な超低周波地震活動)を検出したことから、駿河トラフ浅部でも比較的長期にわたるSSEが単独発生していてもおかしくないと考えられる。
次に、駿河トラフ浅部で100日間程度継続するSSEが単独発生した可能性のある時期を探るため、複数の方法でSSE候補期間を絞り込む。例として、SSEによる地表変位を模擬したテンプレートとGNSS基線長の100日間移動平均データとを相関分析(テンプレートマッチング)した。また、GNSS基線長移動平均データをデトレンドしたものに100日間タイムウィンドウを設定した。タイムウィンドウに含まれるデータを用いて回帰直線をフィッテイングし、回帰直線の右端と左端の差を求めることで基線長の速度変換を行った。さらに、3次元半無限均質弾性体のグリーン関数(Okada, 1992)を用いて、駿河トラフ浅部へ設定した仮想の断層による仮想の基線長変化を計算し、データとの整合性が高い時期を抽出した。その結果、2002~2022年の間にいくつかのSSE候補期間が推定された。SSE候補期間のGNSSデータを基に、暫定的な断層モデルをフォワード計算で仮推定した。SSE候補期間中の観測変位は、駿河湾直下よりやや深部側に断層モデルを仮定することである程度説明できることがわかった。
SSE候補期間で、体積ひずみ計データにおいてもひずみイベントが見られるかどうかを検証するため、暫定的な断層モデルによる地表の体積ひずみ(理論値)と体積ひずみ計データ(観測値)との比較を行った。しかし現在のところ、暫定的な断層モデルから計算される地表の体積ひずみと、体積ひずみ計のデータとは必ずしも整合的ではないこともわかった。SSE候補期間中の観測変位を説明するような断層モデルの再検討など、さらなる精査が必要と考えられる。