The 2023 SSJ Fall Meeting

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Poster session (Sep. 16th)

Regular session » S03. Crustal deformation, GNSS, and gravity

[S03P] PM-P

Tue. Oct 31, 2023 5:00 PM - 6:30 PM Room P5 (F201 and 3 side foyer) (Hall Annex)

[S03P-08] On non-intuitive deformation fields caused by reverse faults in an elastic-viscoelastic medium

*Koitaro Koide1, Yukitoshi Fukahata1 (1. Kyoto University)

断層の作る変位場には,しばしば直観的に理解しにくいものがある.無限弾性媒質の場合には,断層について対称な変位場となり,ダブルカップルの力を考えることで容易に理解できる.しかし,例えば半無限弾性媒質中の逆断層が作る地表面変位は,上盤側が大きく隆起する一方下盤側の沈降量は隆起量に比べてはるかに小さいという非対称なパターンを示す.この非対称な変位場は,自由表面の影響を考慮することによって理解できる.さらに,岡田 (2003)は,逆断層運動が起こった場合でも,下盤側に沈降が生じないケースがあることを示した.
 実際の地形においても非直観的な例はいくつか知られている.例えば,越後平野は新潟神戸歪み集中帯 (NKTZ) として知られる顕著な短縮場に位置しているが,非常に厚い堆積層が発達し長期的に沈降を続けている.地殻が短縮している場合には質量が過剰となり隆起が生じるのが当然と考えられるため,このような沈降運動は直観的には理解できない (飯尾, 2009).飛騨山脈は,東側に松本盆地があり明瞭な地形境界が見られるが,山脈東麓に西傾斜の逆断層はなく,非直観的な地形発達である(池田, 1990; 原山ほか, 2003).
 このような非直観的な地形発達の理解を目指して,弾性-粘弾性の二層構造において,様々な逆断層が作る変位場を計算した.もちろん,媒質が粘弾性層を含む場合には,変形場の直観的理解がさらに難しくなる.計算にはFukahata & Matsu’ura (2005, 2006)の半解析解を使用した.  
 表層 (弾性層) を深さ方向に3分の1ずつ浅部,中間部,深部に分け,それぞれの深さに15°,30°,45°の傾斜角を持つ逆断層を置いて地表面変位場を計算した.浅部に逆断層を置いた場合には,弾性変形で隆起が生じ,その後の粘性緩和によってだんだんと沈降していくパターンが得られた.特に傾斜角が15°の場合には上盤側で大きく沈降するパターンとなり,傾斜角が急なときにも断層上端付近以外で全体に沈降場となった.中間の深さに逆断層を置いた場合,傾斜角が15°の場合には粘弾性緩和により振幅が大きくなっていく一方,傾斜角が45°の場合には粘弾性緩和後もほとんど弾性変形と変わらない地表面変位となった.表層の深部に逆断層を置いた場合には,全ての傾斜角で粘弾性緩和により弾性変形での隆起からさらに隆起量が大きくなっていくという結果が得られた.この結果は,粘弾性緩和は重力平衡を回復するように起きるという理解が常には正しくないことを示している.  これらの変位場の特徴を物理的に解釈するために,内部変形についても計算した.傾斜角については45°の場合のみ計算した.浅部に逆断層を置いた場合,緩和完了後には地表面だけでなく弾性層全体で下向きの変形が生じた.逆に,深部に逆断層を置いた場合,緩和完了後には弾性層全体で上向きの変形が生じた.この2つの変形はどちらも断層から水平方向に離れるにつれて大きさは顕著に小さくなる一方,深さ方向にはほぼ一様に変形していることが分かった.一般に,粘弾性緩和の完了後には,粘弾性層が液体のように振る舞うために弾性層は板状に変形する.逆断層にかかる力は水平圧縮だが,弾性層の上か下かどちらかのみに断層が存在する場合には,断層部分で強い短縮が起きることで短縮の不均衡が生まれ,弾性板がバックリングしたように曲がる変形が生じ,上述のような変形場が生じたと考えられる.
 粘弾性の影響を取り入れた場合,逆断層が作る地殻の変形は直観的に理解し難いものが多いが,その物理メカニズムを解明することで複雑な地形発達の理解につながるかもしれない.