The 2023 SSJ Fall Meeting

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Room C

Regular session » S06. Crustal structure

[S06] PM-1

Wed. Nov 1, 2023 1:30 PM - 3:00 PM Room C (F202)

chairperson:Kazuya Shiraishi(JAMSTEC), Shun Fukushima(ERI, Univ. of Tokyo)

1:30 PM - 1:45 PM

[S06-01] Spatio-temporal variations in seismic structure detected by seismic interferometry using OBS records and their interpretation

*Takehiro Sato1, Ryosuke Azuma1, Ryota Takagi1, Ryota Hino1, Masanao Shinohara2 (1. Tohoku University, 2. Earthquake Research Institute, The University of Tokyo)

地震波干渉法を用いた常時微動解析により,地震活動などに伴う観測点周囲の地下構造の時間変化が抽出可能である (e.g., Hobiger et al., 2012).我々はこれまでに,日本海溝・千島海溝会合部で行われた2006〜2007年の海底地震計 (ocean bottom seismometer, OBS) 連続記録の地震波干渉法解析をおこない (Sato et al., AGU, 2022; Sato et al., JpGU, 2023),(1) 中規模の近地地震 (Mj 6.2) に伴う地震波速度の最大0.2%程度の低下と地震後の回復,(2) 2回の千島列島沖巨大地震 (Mw 8.3のプレート境界地震,Mw 8.1のアウターライズ地震) の後には海溝近傍の観測点に限定的に相関係数の低下,という変化が認められた.一方で,解析時の時間平滑化の影響により地震波速度や相関係数低下の時間スケールを正確に把握できておらず,こうした変化のメカニズムの議論が不十分であった.また,こうした大きな地震動入力時の変化とは異なり,(3) 観測網直近で発生した3回のテクトニック微動活動 (Kawakubo, 2021) 期間中には地震波速度,相関係数とも変化は認められなかった.この結果は,微動活動に伴って構造変化が観測された南海トラフ (Tonegawa et al., 2022) やヒクランギ (Wang et al., 2022) の事例と異なる.日本海溝・千島海溝会合部で変化が検出されなかった原因に,先行研究の地域と比較して活動の規模が小さい,あるいは震源域が深い,という2つの仮説が考えられる.

本発表では,地震波速度や相関係数低下の時間スケールについてより詳細に考察するため,時間平滑化をかけずに解析をおこなった.その結果,地震波速度変化の分解能は約0.2%となり,15日の時間窓で平滑化した場合の約0.05%から大幅に劣化したものの,近地地震に伴う地震波速度低下が地震発生日にステップ的に起こっている様子が確認できた.一方で,遠地巨大地震に伴う相関係数の低下は,Mw 8.3のプレート境界型地震では3日間程度,Mw 8.1のアウターライズ地震では1日間にみられ,その後はすぐに回復したことがわかった.相関係数が低下していた期間が,2つの巨大地震直後にMw 6 以上の余震活動が活発だった期間と対応することから,相関係数の低下の原因には,本震と規模の大きい余震からの地震動が観測波動場に混入しため,観測点周囲の波動場が時間変化したことで,相関係数の低下が生じたと考えられる.

スロー地震に伴う構造変化については,観測事例を増やすことを目的として,研究対象領域を三陸沖の海域まで拡張した.三陸沖では2007〜2008年に49台のOBSからなる稠密な観測網が展開された.この領域でも日本海溝・千島海溝会合部と同様にテクトニック微動活動を伴った非地震性の活動が活発である (Takahashi, 2021; Matsumoto et al., AGU, 2022) ことから,日本海溝におけるスロー地震活動と構造変化の関係について議論を深めるための知見が得られることが期待される.