3:15 PM - 3:30 PM
[S06-07] Integrated data analysis of MCS reflection and OBS wide-angle seismic surveys in the Nankai Trough
沈み込み帯の地質構造や発達過程を理解するためには、沈み込む海洋プレートと付加プリズムの大局的形状のみならず、付加体内部の詳細な変形構造を知ることが重要である。しかしながら、前弧海盆堆積物に被覆された、複雑な変形構造が想定される古い付加体内部の不均質構造は、一般的な反射法データ解析手法で描像するのは困難である場合が多い。また、海上反射法探査で曳航するハイドロフォンストリーマーケーブルの長さの制約により、付加体内部の特に深い部分では速度情報の推定に不確定性が伴い、海洋地殻上面などの深部構造からの反射波の結像が低下する場合や、海底地震計による広角反射法探査から推定される速度構造および構造境界の解釈深度に相違が生じる場合がある。そこで、本研究では、南海トラフ室戸沖および日向灘において近接する約100kmの測線で実施された、海上反射法探査および海底地震計による広角反射法探査で取得されたデータを対象として、反射波信号の高S/N化処理および統合的解析の適用により、反射波プロファイルの改善を試みた。
対象とするデータセットは、室戸沖SIN136測線は海溝と直交、日向灘HYU01測線は海溝とほぼ並行な方向に位置する。それぞれ異なる調査航海で取得され、海上反射法探査では、総容量7,800cu.in.(127.8ℓ)または10,600 cu.in.(173.7ℓ)のエアガンアレイによる50m間隔の発震を、曳航長5.5kmのハイドロフォンストリーマーケーブルで観測し(「かいれい」室戸沖KR19-E03航海、「かいめい」日向灘KM20-05航海)、広角反射法探査では、総容量10,600 cu.in.(173.7ℓ)のエアガンアレイによる200m間隔の発震を、2km間隔で設置した海底地震計により観測した(「かいめい」室戸沖KM19-09航海および日向灘KM20-05航海)。既存解析では、海上反射法探査は、一般的なデータ前処理として、多重反射波や多様なノイズを抑制するための各種処理、エアガンバブルやゴースト反射を抑制する処理などを適用し、反射波速度解析を通じて時間領域および深度領域の重合前マイグレーションまで実施された(Nakamura et al., 2022)。また、海底地震計広角反射法探査データについては、長大オフセットを活かした初動走時トモグラフィに加えて波形インバージョンを適用することで高解像度な広域速度構造が得られた(藤江ほか, 2022; Arai et al., 2023)。
本研究で実施した追加解析では、海上反射法探査データに対する上述の一般的な前処理に加えて、まず、反射波データから抽出される地震波アトリビュートに基づき、共通中点から一定範囲内の地震波トレースを重合して反射波信号の高S/N化を図る、異傾斜反射波の重畳に対応した共通反射面重合法(multi-dip reflection surface method, MDRS法)(Aoki et al., 2010; 楢原ほか, 2021)を適用した。次に、海底地震計による広角反射法データから波形インバージョンで推定された速度情報を基にして、高S/N化された海上反射法探査データを用いた速度モデルの最適化と重合前深度マイグレーションを適用した。
追加解析の結果、既存解析の描像では不鮮明であった付加体内部には、室戸沖では多重の断層と褶曲を伴う変形構造や日向灘では複数の急傾斜な構造を示唆する、空間連続的な反射波群が明瞭になった。また、これらの構造はいずれも、海底地震計探査データの波形インバージョンから推定された地震波速度の空間変化によく対応している。追加処理前後の入力データを同一速度モデルで解析した結果の比較から、MDRS法による反射波データの品質改善効果を確認できた。また、既存解析結果で最大数kmの相違が見られた沈み込んだ海洋地殻上面の深度について、海底地震計による広角反射法探査から推定された速度構造を基にすることで、反射波の結像する深度および形状が補正され、両者で整合的な深度を示す反射波プロファイルが得られた。これらの結果は、海上反射法探査の反射波プロファイル改善と共に、海底地震探査データの波形インバージョンによる速度推定結果の妥当性も示すもので、海上反射法探査と海底地震計探査の統合的な解析が相互に有効であることが示された。
対象とするデータセットは、室戸沖SIN136測線は海溝と直交、日向灘HYU01測線は海溝とほぼ並行な方向に位置する。それぞれ異なる調査航海で取得され、海上反射法探査では、総容量7,800cu.in.(127.8ℓ)または10,600 cu.in.(173.7ℓ)のエアガンアレイによる50m間隔の発震を、曳航長5.5kmのハイドロフォンストリーマーケーブルで観測し(「かいれい」室戸沖KR19-E03航海、「かいめい」日向灘KM20-05航海)、広角反射法探査では、総容量10,600 cu.in.(173.7ℓ)のエアガンアレイによる200m間隔の発震を、2km間隔で設置した海底地震計により観測した(「かいめい」室戸沖KM19-09航海および日向灘KM20-05航海)。既存解析では、海上反射法探査は、一般的なデータ前処理として、多重反射波や多様なノイズを抑制するための各種処理、エアガンバブルやゴースト反射を抑制する処理などを適用し、反射波速度解析を通じて時間領域および深度領域の重合前マイグレーションまで実施された(Nakamura et al., 2022)。また、海底地震計広角反射法探査データについては、長大オフセットを活かした初動走時トモグラフィに加えて波形インバージョンを適用することで高解像度な広域速度構造が得られた(藤江ほか, 2022; Arai et al., 2023)。
本研究で実施した追加解析では、海上反射法探査データに対する上述の一般的な前処理に加えて、まず、反射波データから抽出される地震波アトリビュートに基づき、共通中点から一定範囲内の地震波トレースを重合して反射波信号の高S/N化を図る、異傾斜反射波の重畳に対応した共通反射面重合法(multi-dip reflection surface method, MDRS法)(Aoki et al., 2010; 楢原ほか, 2021)を適用した。次に、海底地震計による広角反射法データから波形インバージョンで推定された速度情報を基にして、高S/N化された海上反射法探査データを用いた速度モデルの最適化と重合前深度マイグレーションを適用した。
追加解析の結果、既存解析の描像では不鮮明であった付加体内部には、室戸沖では多重の断層と褶曲を伴う変形構造や日向灘では複数の急傾斜な構造を示唆する、空間連続的な反射波群が明瞭になった。また、これらの構造はいずれも、海底地震計探査データの波形インバージョンから推定された地震波速度の空間変化によく対応している。追加処理前後の入力データを同一速度モデルで解析した結果の比較から、MDRS法による反射波データの品質改善効果を確認できた。また、既存解析結果で最大数kmの相違が見られた沈み込んだ海洋地殻上面の深度について、海底地震計による広角反射法探査から推定された速度構造を基にすることで、反射波の結像する深度および形状が補正され、両者で整合的な深度を示す反射波プロファイルが得られた。これらの結果は、海上反射法探査の反射波プロファイル改善と共に、海底地震探査データの波形インバージョンによる速度推定結果の妥当性も示すもので、海上反射法探査と海底地震計探査の統合的な解析が相互に有効であることが示された。