[S06P-06] Anisotropic structure at shallow depths near the Japan Trench
日本海溝近傍から日本列島にかけて「日本海溝海底地震津波観測網」が展開されており、海底地震計のデータが2016年9月から使用可能となっている。利根川・汐見(2023, JpGU)では、この観測網の日本海溝外側に設置された海底地震計の遠地Pコーダ波記録を活用し、堆積層および海洋性地殻の異方性構造を推定した。本研究では、その手法を日本海溝内側の水深2,500 mより深いところに設置された海底地震計記録に適用し、浅部堆積層の異方性構造を推定した。また、利根川・汐見(2023, JpGU)では異方性構造の速い軸の方位のみをマップ上に表示していたが、本研究ではそれに加えて遅延時間の情報も考慮して表示した。つまり、日本海溝外側・内側の両方について、浅部堆積層の異方性構造のマッピングを試みる。 堆積層の底からのPs変換波を抽出するために、radial成分をvertical成分でdeconvolutionし、レシーバ関数を計算した。Vertical成分に海水層の多重反射波が混入するのを防ぐため、P波到達時刻からXX秒間のみの記録をdeconvolutionに使用した。水深2,500 mより浅い観測点の場合、直達P波と海面からの反射波との到達時間が近くて両者の分離が困難であるため、水深の深い観測点のデータのみを使った。周波数帯域は1-3 Hzである。異方性構造解析にはPs変換波に相互相関法を適用した。 結果について、日本海溝外側では遅延時間の大きさによってローズダイアグラムの大きさを変えてみたが、遅延時間にそれほど大きな変化はなく、結果の印象は変わらなかった。つまり、堆積層について、海溝外側の南側では速い軸は海溝軸に平行となり、北側では斜交するという結果になった。また、日本海溝外側の海洋性地殻についても遅延時間にそれほど大きな変化はなく、ほぼ海溝軸に平行という結果となった。その一方で、日本海溝内側の堆積層では、おおよそ太平洋プレートの沈み込み方向に平行となったが、福島県沖では直交、その他数カ所で遅延時間が小さくなるという結果になった。沈み込み方向に平行なのは上盤側の応力場を反映していると考えられるが、strike方向の変化は海底堆積物の堆積・変形過程の影響を受けていると考えられる。