日本地震学会2023年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(2日目)

一般セッション » S06. 地殻構造

[S06P] PM-P

2023年11月1日(水) 17:00 〜 18:30 P6会場 (F201・3側フォワイエ) (アネックスホール)

[S06P-11] 南海トラフ域の海陸統合3次元地震波速度構造の構築と検証

*仲西 理子1、Qin Yanfang1、Liu Xin2、藤江 剛1、汐見 勝彦3、小平 秀一1、高橋 成実1、中村 武史4、富士原 敏也1 (1. 海洋研究開発機構 海域地震火山部門、2. 香港大学、3. 防災科学技術研究所、4. 電力中央研究所香港大学)

南海トラフ巨大地震震源域における地震・津波ハザード評価、強震動予測、高精度震源決定などに用いる地下構造標準化の試みとして、すでに提案されている沈み込むフィリピン海プレートの形状を含む3次元地震波速度構造モデル (Nakanishi et al., 2018)をベースに、これまで未活用だった屈折法地震探査(例えばArnulf et al., 2021)、反射法地震探査(Nakamura et al., 2022など)や自然地震トモグラフィー(Yamamoto et al., 2022など)、表面波の解析などの成果(Liu et al., 2022)として得られる様々な地震波速度情報を取り入れた海陸統合3次元地震波速度構造モデルの構築を2020年度後半から実施してきた。多様な調査、解析による速度構造情報の統合、海域と陸域の速度構造情報の統合は単純ではなく、実現には解決しなければならない課題が存在する。例えば、反射法地震探査による成果の中には、時間領域のみの情報しか存在しない場合がある。一方で、多様な解析によるプレート形状は深度領域の情報しか存在しないことが殆どである。また、海域、陸域の速度構造情報は、殆どが深度領域の情報だが、解析手法ごとに異なる形式で存在している。具体的には、不均質な速度場としての情報である場合や、層内が一定の速度である層構造である場合などがあり、分解能が異なる。一方、緯度、経度ではなく平面直角座標系を用いている場合もある。ここでは、これらの多様な構造情報の統合についての課題に対応した現状の南海トラフ域における海陸統合3次元速度構造モデルの構築状況について紹介する。また、当初、海域におけるS波速度構造情報が限定されていた(例えばTakahashi et al., 2002)ため、南海トラフ域に適用できるP波速度からS波速度への経験的な変換式(例えば、Brocher, 2005,Ludwig et al., 1970)によって3次元S波速度構造モデルを作成することとした。併せて、調査データに基づくS波速度構造情報(Tonegawa et al., 2017など) を収集し、さらに、新たな解析による構造推定(昨年度地震学会秋季大会にて報告)も進めてきた。それらの調査データに基づく推定構造情報と、経験的なP波速度からS波速度への変換式によって作成された構造情報との比較を行い、変換式の妥当性の検証を実施したので、その結果についても報告する。 本研究は、文部科学省による科学技術試験研究委託事業「防災対策に資する南海トラフ地震調査研究プロジェクト」の一環として実施している。また、本研究の一部は、JSPS科研費JP19H01982の助成を受けたものである。