[S06P-12] A dense seismic array observation in the eastern part of Shikoku Island, southwestern Japan
はじめに
四国沖南海トラフは,フィリピン海プレートが西南日本弧下に沈み込むプレート収束域である.過去南海トラフ周辺域では,巨大地震が繰り返し発生している.巨大地震震源域近傍では,スロー地震と呼ばれる,時間スケールの異なる様々なすべり運動がプレート境界面上で観測されている(例えば,Obara and Kato, 2016).プレート境界におけるすべりの挙動をコントロールする構造要因を明らかにすることは,沈み込み帯のダイナミクスを理解する上で重要である.プレート境界に存在する流体は,断層すべり挙動を理解する上で重要な要素のうちの一つである(例えば,Saffer and Tobin, 2011).流体に起因した不均質構造に関しての知見を得るために,地震波速度構造や反射波の振幅強度等の特性を把握することは有効である.四国東部地域では,1999年と2002年に制御震源を用いた地殻構造探査が実施され,沈み込むフィリピン海プレートの形状やP波速度構造に関する知見が得られている(例えば,蔵下・他,2002;Kodaira et al., 2002; Ito et al., 2009).しかしながら,流体の存在を推定する上で重要な情報となる詳細なVp/Vs構造は得られていない.そこで,プレート境界面近傍の詳細なP波速度構造,Vp/Vs構造等を得る為に,稠密自然地震観測を四国東部のスロー地震活動様式に違いがある領域を含む地域で実施した.本講演では,稠密自然地震観測の概要と,得られた稠密自然地震観測データに対して,トモグラフィー解析を行うことによって得た四国東部下の地震波速度構造について報告する.
観測とデータ処理
スロー地震活動様式に違いがある四国東部の徳島県三好市から神山町に至る「東西測線」(測線長:約60 km)上の30カ所(観測点間隔:約2 km),徳島県阿波市から海陽町に至る「南北測線」(測線長:約70 km)上の70か所(観測点間隔:約1 km)に臨時地震観測点を設置し,稠密自然地震観測を実施した.観測は2021年12月14日から2023年3月7日まで実施し,2022年6月までは,すべての観測点で固有周波数4.5Hzの地震計によって上下動及び水平動の3成分観測を実施した.2022年6月以降は,深部低周波地震の活動域直上に設定した東西測線上の地震計を固有周波数1Hzの3成分地震計に変更した.収録は,Geospace社製の独立型レコーダであるGSX-3を用い,サンプリング周波数を250Hzに設定して連続収録を行なった.気象庁一元化震源リストによると,観測期間中に研究対象地域(緯度33.5°-34.2°N:経度133.7°-134.4°E)ではMj0.5以上の地震の震源が503個決定されている.稠密自然地震観測で得た連続記録から,これら地震の震源時刻に従って,イベント毎へのデータ編集を実施した後,測線周辺の定常観測点(47か所)で得られている波形データとの統合処理を実施した.得られた記録は良好で,イベント毎での波形記録からは,明瞭な初動及び後続波を確認することが出来る.
解析と結果
統合処理後のイベントデータから測線近傍の110イベントを抽出し,P波・S波の手動検測を行った.測線下の地震波速度構造を得る為に,得られた走時データを用いて地震波トモグラフィー解析(Zhang and Thurber, 2003)を実施した.トモグラフィー解析の初期モデルには,連携震源決定法(Kissling et al., 1994)を用いて得た1次元速度構造モデルを使用した.得られたVp/Vs構造の鉛直断面図からは,深部低周波微動活動が活発な領域は,低調な領域に比べてVp/Vs値が高くなる特徴が見られる.
四国沖南海トラフは,フィリピン海プレートが西南日本弧下に沈み込むプレート収束域である.過去南海トラフ周辺域では,巨大地震が繰り返し発生している.巨大地震震源域近傍では,スロー地震と呼ばれる,時間スケールの異なる様々なすべり運動がプレート境界面上で観測されている(例えば,Obara and Kato, 2016).プレート境界におけるすべりの挙動をコントロールする構造要因を明らかにすることは,沈み込み帯のダイナミクスを理解する上で重要である.プレート境界に存在する流体は,断層すべり挙動を理解する上で重要な要素のうちの一つである(例えば,Saffer and Tobin, 2011).流体に起因した不均質構造に関しての知見を得るために,地震波速度構造や反射波の振幅強度等の特性を把握することは有効である.四国東部地域では,1999年と2002年に制御震源を用いた地殻構造探査が実施され,沈み込むフィリピン海プレートの形状やP波速度構造に関する知見が得られている(例えば,蔵下・他,2002;Kodaira et al., 2002; Ito et al., 2009).しかしながら,流体の存在を推定する上で重要な情報となる詳細なVp/Vs構造は得られていない.そこで,プレート境界面近傍の詳細なP波速度構造,Vp/Vs構造等を得る為に,稠密自然地震観測を四国東部のスロー地震活動様式に違いがある領域を含む地域で実施した.本講演では,稠密自然地震観測の概要と,得られた稠密自然地震観測データに対して,トモグラフィー解析を行うことによって得た四国東部下の地震波速度構造について報告する.
観測とデータ処理
スロー地震活動様式に違いがある四国東部の徳島県三好市から神山町に至る「東西測線」(測線長:約60 km)上の30カ所(観測点間隔:約2 km),徳島県阿波市から海陽町に至る「南北測線」(測線長:約70 km)上の70か所(観測点間隔:約1 km)に臨時地震観測点を設置し,稠密自然地震観測を実施した.観測は2021年12月14日から2023年3月7日まで実施し,2022年6月までは,すべての観測点で固有周波数4.5Hzの地震計によって上下動及び水平動の3成分観測を実施した.2022年6月以降は,深部低周波地震の活動域直上に設定した東西測線上の地震計を固有周波数1Hzの3成分地震計に変更した.収録は,Geospace社製の独立型レコーダであるGSX-3を用い,サンプリング周波数を250Hzに設定して連続収録を行なった.気象庁一元化震源リストによると,観測期間中に研究対象地域(緯度33.5°-34.2°N:経度133.7°-134.4°E)ではMj0.5以上の地震の震源が503個決定されている.稠密自然地震観測で得た連続記録から,これら地震の震源時刻に従って,イベント毎へのデータ編集を実施した後,測線周辺の定常観測点(47か所)で得られている波形データとの統合処理を実施した.得られた記録は良好で,イベント毎での波形記録からは,明瞭な初動及び後続波を確認することが出来る.
解析と結果
統合処理後のイベントデータから測線近傍の110イベントを抽出し,P波・S波の手動検測を行った.測線下の地震波速度構造を得る為に,得られた走時データを用いて地震波トモグラフィー解析(Zhang and Thurber, 2003)を実施した.トモグラフィー解析の初期モデルには,連携震源決定法(Kissling et al., 1994)を用いて得た1次元速度構造モデルを使用した.得られたVp/Vs構造の鉛直断面図からは,深部低周波微動活動が活発な領域は,低調な領域に比べてVp/Vs値が高くなる特徴が見られる.