日本地震学会2023年度秋季大会

講演情報

D会場

一般セッション » S07. 地球及び惑星の内部構造と物性

[S07] PM-2

2023年11月2日(木) 15:00 〜 16:15 D会場 (F204)

座長:大滝 壽樹(産業技術総合研究所)、大林 政行(国立研究開発法人海洋研究開発機構)

15:00 〜 15:15

[S07-07] MERMAIDフロートによる南太平洋下における地震P波記録

*大林 政行1、近藤 優子2、吉光 淳子1、村上 聡2、杉岡 裕子2、Simon Joel3 (1. 海洋研究開発機構、2. 神戸大学、3. プリンストン大学)

MERMAID(Mobile Earthquake Recording in Marine Areas by Independent Divers)は受動的に漂流する自律型ハイドロフォンであり、国際学術コンソーシアムEarth Scope-Oceansの下で、South Pacific Plume Imaging and Modeling (SPPIM)プロジェクトの一環として、2018年後半以降現在までに南太平洋において約50台が展開されている。南太平洋は無数のホットスポット海山と異常に浅い海洋地殻によって特徴づけられ、これらはマントル最下部からの上昇プルームを反映していると考えられている。しかし、地震活動が少なく観測点に乏しい海洋地域であるため、深部をサンプリングする波線経路データが十分に得られていない。SPPIMの目的は、この広大な海洋地域におけるデータの不足を解決し、マントル上昇域における地球深部構造を求めることにある。MERMAIDはグローバル地震によって発生した高周波P波から海底で変換された水中音波を漂流深度1500mの海水中で記録する。搭載されたアルゴリズムによって地震イベントの信号が検出されると海面に浮上し、これらのデータを衛星通信によってほぼリアルタイムで伝送する。このような新しい観測機器のデータを用いてマントルトモグラフィを実施するには、検出アルゴリズムによって切り出された波形をソースとなる地震イベントと関連付け、MERMAIDまでの走時を調べる必要がある。
 本発表では、現在までに記録された約4000個のMERMAIDの記録について、Simon et al., 2021によるAIC基準に基づく自動走時読み取りソフトウェアを用いて解析を行った。ここでは、地震P波の到着をピックし、それらをIncorporated Research Institutions for Seismology (IRIS) グローバル地震カタログと照合し、グローバル参照モデルak135 (Kennett et al. 1995) に対して走時残差が計算される。同時に、各波形についてSignal-to-noise比を計算して不確かさを推定することで、走時データをトモグラフィインバージョンの入力とする際の重みづけが得られる。これらの結果から、MARMEIDで検出されるイベントマグニチュードと震央距離の関係、得られるデータの質、南太平洋下マントルを通る波線経路の走時異常データについて紹介する。