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[S07-09] 地震波速度異方性を考慮したマルチスケール・グローバルトモグラフィー手法の開発
グローバルトモグラフィーは全地球に分布する震源・観測点を用いる地震波トモグラフィー手法であり、地表付近から核・マントル境界までの全マントルの地震波速度構造を調べるのに適している。一方で、対象領域を限定したリージョナルトモグラフィーと比べ、分解能が相対的に落ちる欠点がある。発表者らの研究グループでは、対象領域内部のみグリッドを細かく配置することで、グローバルトモグラフィーでありながら、対象領域内部はリージョナルトモグラフィーと同程度の分解能で解くことができる「マルチスケール・グローバルトモグラフィー」を開発し、世界の様々な地域のP波速度構造を調べてきた。しかし従来の本手法は、等方性速度構造のみしか取り扱えなかった。 地震波速度異方性は、地震波の伝播方向によって地震波速度が変化する現象である。マントル内では結晶がマントルの流れ場の方向に選択配向することで異方性が生じることが多いため、異方性を調べることでマントル内部の動的過程を明らかにすることができる。本研究では、地震波速度異方性をマルチスケール・グローバルトモグラフィーに導入することを目的に、プログラム開発を行った。 今回導入した異方性は、軸対称異方性の対称軸が水平面内に存在し、方位によって速度が変化する「方位異方性」である。等方性成分に加え、異方性パラメータ2つを追加することで解くことができる。等方性成分については、対象領域内部の水平グリッド間隔が約55 km、対象領域外部の水平グリッド間隔が約200 kmのマルチスケールグリッドを用い、異方性成分について、地球全体で水平グリッド間隔約550 kmのレギュラーグリッドを導入した。5000個の地震を用いて、日本と周辺地域下の全マントルを対象としたテスト計算では、等方性成分は従来の等方性トモグラフィーと同じ特徴が再現され、かつ全マントルの異方性を同時に求めることに成功した。本発表ではさらに、異方性にもマルチスケールグリッドを適用した計算結果を紹介する予定である。