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[S08-01] IODP Exp. 405 JTRACK:東北沖地震震源断層掘削によるプレート境界断層の強度回復・応力蓄積過程の解明
2011年東北沖地震発生から13年となる2024年9月-12月に国際深海科学掘削計画(IODP) 東北地方太平洋沖地震震源断層掘削:JTRACK(Tracking Tsunamigenic Slips Across the Japan Trench)が実施される。JTRACKの主要目的は、「プレート境界断層浅部とその周辺の構成岩石や流体の物理的・化学的特性と、その時空間変化を理解することにより、巨大断層すべりや巨大津波を引き起こす要因を把握する」ことである。地震発生から13年後に再び震源断層を掘削するJTRACKは地震発生後のプレート境界断層の固着強度、断層周辺の応力蓄積過程を明らかにする貴重な機会となり、これまで取り組むことができなかった巨大津波を生成する海溝型地震準備過程に関する本質的な問い、即ち「巨大津波を生成するプレート境界浅部すべりの駆動源は何か、どのように応力を蓄積するか」に迫ることができる。この目的達成のため、JTRACKでは地震発生直後に行われた震源断層掘削JFAST(Japan Trench Fast Drilling Project)と同一地点、およびその海溝海側の海洋プレート上において海底から海洋プレート上面に至る連続コアの採取、孔内検層、孔内温度計測を実施する。2011年東北地震発生直後には海底地形調査、海底地震・地殻変動観測、地下構造探査、JFASTによる震源断層掘削などが行われ、50mを超える断層すべりがプレート沈み込み口で海底に突き抜けたこと、巨大地震の震源断層は厚さ数mの遠洋性堆積物から構成されていたこと、地震時の断層の摩擦係数は約0.1と非常に小さかったこと、などマグニチュード9の海溝型巨大地震の実態が初めて明らかにされた。しかしながら、それらの調査は「地震発生時」の実態を明らかにしたのみで、マグニチュード9の巨大地震を発生させた震源断層がどのようにして次の巨大地震の準備を行うか、巨大地震震源断層の固着強度、断層周辺の応力蓄積過程を明らかにすることはできなかった。JTRACKはその問題に取り組むための貴重な機会となる。本講演では、2011年東北沖地震発生直後から行われた深海調査・掘削の成果を総括するとともに、JTRACK、及び関連した広域的な深海調査の目的、計画、期待される成果について報告する。