11:45 〜 12:00
[S08-09] 内陸地震、プレート境界地震、粘弾性緩和の相互作用を同時に考慮した3次元準動的地震シークエンスシミュレーション
沈み込み帯周辺の応力場は、内陸地震やプレート境界地震、アセノスフェアの粘弾性緩和や海洋プレートの定常的な沈み込みなど多くの要素の影響を受けており、その結果沈み込み帯周辺の応力場は時空間的に複雑なものになっている。例えば、2011年の東北地方太平洋沖地震後には東北日本の歪速度の長波長成分が収縮から伸長に転じた一方、新潟神戸歪集中帯における歪速度の短波長成分は地震後も収縮を続けた(Meneses-Gutierrez and Sagiya, 2016)。また、東北日本ではプレート境界地震による応力降下にも関わらず内陸では応力が長期的に蓄積し、逆断層型の地震を引き起こしている。
しかし、内陸の断層に応力が蓄積するメカニズムは明らかになっていない。また、内陸活断層における地震、プレート境界地震、アセノスフェアの粘弾性緩和の相互作用を地震シークエンスシミュレーションの枠組みでモデル化した研究はまだなされていない。そこで本研究では、弾性媒質中に断層を表す面とリソスフェア-アセノスフェア境界(LAB)を表す面をおき、それぞれに適切な境界条件を与えて準動的に解く手法を提案する。
手法
まず、内陸に応力が蓄積するメカニズムについて考察するため、海洋プレート上面と下面、大陸プレート下面を表す面を用意し、海洋プレートを表す面の端に速度境界条件を与えて駆動するモデルを作成した。そして非地震性滑りを再現できるようにhbi (Ozawa et al. 2023)を書き換えたコードを用いて、定常状態になるまで時間発展させ、プレートが定常的に沈み込む時のそれぞれの面の変位速度分布を求めた。このようにして得られた変位速度分布から、Nikkhoo and Walter, 2015のグリーン関数を用いて沈み込み帯周辺の応力場を計算した。本研究では、プレートの形状や速度境界条件の値を変えつつ応力場を計算し、応力蓄積メカニズムを調べた。
次に、内陸地震、プレート境界地震、粘弾性緩和の相互作用を再現するために、このモデルに内陸断層を追加し、海洋プレート上面の一部をプレート境界断層にした。そして境界条件として断層には速度・状態に依存する摩擦則(RSF則)を、その他の面(LAB)には粘性抵抗を与えた。そして前述のコードを用いて準動的地震シークエンスシミュレーションを実行した。なお、LABに与えた境界条件の妥当性は、解析解(Savage and Prescott, 1978)の存在するモデルで粘弾性緩和による地表面変位を計算し、解析解と本手法の結果を比較することで検証した。
予備的結果と今後の展望
定常的なプレートの沈み込みによる応力場を計算したところ、大陸プレート内に引張応力場が形成された。また、海洋プレートの曲げにより、海洋プレート浅部には引張応力場が、海洋プレート深部には圧縮応力場が形成された。
また、断層を追加して準動的シミュレーションを行ったところ、プレート境界断層では数百年周期で地震が発生した。プレート境界地震により、LABでは粘弾性緩和が発生し、内陸断層では応力が過渡的に変化した。また内陸の断層では、プレート境界地震による応力降下にも関わらず、長期的に応力が蓄積し正断層地震が発生した。内陸の断層で発生した地震の周期はプレート境界における地震の周期より1桁大きかった。
今後は、内陸に圧縮応力場が形成されるメカニズムを明らかにするとともに、2011年東北地方太平洋沖地震前後の内陸断層の地震や粘弾性緩和をプレート境界地震と同一の枠組みでシミュレートし、地表面変位の観測結果や地震活動などを再現することを目指す。
しかし、内陸の断層に応力が蓄積するメカニズムは明らかになっていない。また、内陸活断層における地震、プレート境界地震、アセノスフェアの粘弾性緩和の相互作用を地震シークエンスシミュレーションの枠組みでモデル化した研究はまだなされていない。そこで本研究では、弾性媒質中に断層を表す面とリソスフェア-アセノスフェア境界(LAB)を表す面をおき、それぞれに適切な境界条件を与えて準動的に解く手法を提案する。
手法
まず、内陸に応力が蓄積するメカニズムについて考察するため、海洋プレート上面と下面、大陸プレート下面を表す面を用意し、海洋プレートを表す面の端に速度境界条件を与えて駆動するモデルを作成した。そして非地震性滑りを再現できるようにhbi (Ozawa et al. 2023)を書き換えたコードを用いて、定常状態になるまで時間発展させ、プレートが定常的に沈み込む時のそれぞれの面の変位速度分布を求めた。このようにして得られた変位速度分布から、Nikkhoo and Walter, 2015のグリーン関数を用いて沈み込み帯周辺の応力場を計算した。本研究では、プレートの形状や速度境界条件の値を変えつつ応力場を計算し、応力蓄積メカニズムを調べた。
次に、内陸地震、プレート境界地震、粘弾性緩和の相互作用を再現するために、このモデルに内陸断層を追加し、海洋プレート上面の一部をプレート境界断層にした。そして境界条件として断層には速度・状態に依存する摩擦則(RSF則)を、その他の面(LAB)には粘性抵抗を与えた。そして前述のコードを用いて準動的地震シークエンスシミュレーションを実行した。なお、LABに与えた境界条件の妥当性は、解析解(Savage and Prescott, 1978)の存在するモデルで粘弾性緩和による地表面変位を計算し、解析解と本手法の結果を比較することで検証した。
予備的結果と今後の展望
定常的なプレートの沈み込みによる応力場を計算したところ、大陸プレート内に引張応力場が形成された。また、海洋プレートの曲げにより、海洋プレート浅部には引張応力場が、海洋プレート深部には圧縮応力場が形成された。
また、断層を追加して準動的シミュレーションを行ったところ、プレート境界断層では数百年周期で地震が発生した。プレート境界地震により、LABでは粘弾性緩和が発生し、内陸断層では応力が過渡的に変化した。また内陸の断層では、プレート境界地震による応力降下にも関わらず、長期的に応力が蓄積し正断層地震が発生した。内陸の断層で発生した地震の周期はプレート境界における地震の周期より1桁大きかった。
今後は、内陸に圧縮応力場が形成されるメカニズムを明らかにするとともに、2011年東北地方太平洋沖地震前後の内陸断層の地震や粘弾性緩和をプレート境界地震と同一の枠組みでシミュレートし、地表面変位の観測結果や地震活動などを再現することを目指す。