11:15 AM - 11:30 AM
[S08-22] Frictional properties on the upper surface of the subducting Pacific plate off the south-east of Hokkaido, Japan
1.研究背景・目的
北海道南東沖は太平洋プレートがオホーツクプレートの下に沈み込んでいる地域であり、プレート境界における地震活動が活発である。Yamada et al. (2017)では、同地域の2002年6月~2015年12月に発生した小地震の応力降下量解析を行い、その空間分布が過去の大地震のすべり分布と調和的であり、時間変化が見られないことを報告している。一方、東北地方太平洋沖の小地震の応力降下量を解析したYamada et al. (2021)は、2011年東北地方太平洋沖地震前後において、一部の地域で応力降下量に時間変化が見られることを報告している。本研究では、2016~2021年に北海道南東沖で発生した小地震の応力降下量を解析し、Yamada et al. (2017)の結果と比較することにより、その時空間的特徴を議論する。
2.研究手法
本研究では、防災科学技術研究所のHi-netで観測された157地震の波形データを解析した。解析対象地震の条件として、Yamada et al. (2017)と同地域の、震源がプレート境界から±15kmかつマグニチュードが4.0以上5.0以下の地震と定めた。解析手法はYamada et al. (2017; 2021)と同様に、以下のとおりとした。まず、震源が解析対象地震の近傍であるM3.5の地震波形を経験的グリーン関数(EGF波形)として用い、解析対象地震の波形及びEGF波形のスペクトルをそれぞれ算出した。続いて、解析対象地震のスペクトルをEGF波形のスペクトルで割る(デコンボリューション)ことにより、震源特性を抽出した。その後、Boatwright (1978)のオメガ二乗モデルを用いて、各観測点のスペクトル比からコーナー周波数を推定し、これらのlog平均を解析対象地震のコーナー周波数とした。最後に、Madariaga (1976)の円形断層を仮定し、コーナー周波数から応力降下量を推定した。さらにその結果を緯度経度0.1度ごとに平滑化することで、解析対象地域における応力降下量の空間分布を求めた。
3.結果・考察
応力降下量の解析結果を図1に示す。Yamada et al. (2017)と同様に、北海道南東沖における太平洋プレート上面の摩擦特性に不均質性が見られた。また、1968年十勝沖地震すべり域で発生した地震の応力降下量は、その周辺の領域で発生した地震よりも高い値を示した。このことも、Yamada et al. (2017)の結果と調和的である。応力降下量の時間変化については、解析地域の中西部では大きな変化は見られなかったが、根室沖に関しては、2020年ころから低下が見られる(図2)。岩石実験では、将来の震源付近で剪断強度が下がることが報告されている(Ohnaka and Shen, 1999)ことを考慮すると、根室沖において次の大地震の発生が迫っていることを示しているのかもしれない。なお、同地域では2023年2月にM6.0の地震が発生しているが、現段階ではこの地震と2020年以降の応力降下量低下の関連は不明である。
北海道南東沖は太平洋プレートがオホーツクプレートの下に沈み込んでいる地域であり、プレート境界における地震活動が活発である。Yamada et al. (2017)では、同地域の2002年6月~2015年12月に発生した小地震の応力降下量解析を行い、その空間分布が過去の大地震のすべり分布と調和的であり、時間変化が見られないことを報告している。一方、東北地方太平洋沖の小地震の応力降下量を解析したYamada et al. (2021)は、2011年東北地方太平洋沖地震前後において、一部の地域で応力降下量に時間変化が見られることを報告している。本研究では、2016~2021年に北海道南東沖で発生した小地震の応力降下量を解析し、Yamada et al. (2017)の結果と比較することにより、その時空間的特徴を議論する。
2.研究手法
本研究では、防災科学技術研究所のHi-netで観測された157地震の波形データを解析した。解析対象地震の条件として、Yamada et al. (2017)と同地域の、震源がプレート境界から±15kmかつマグニチュードが4.0以上5.0以下の地震と定めた。解析手法はYamada et al. (2017; 2021)と同様に、以下のとおりとした。まず、震源が解析対象地震の近傍であるM3.5の地震波形を経験的グリーン関数(EGF波形)として用い、解析対象地震の波形及びEGF波形のスペクトルをそれぞれ算出した。続いて、解析対象地震のスペクトルをEGF波形のスペクトルで割る(デコンボリューション)ことにより、震源特性を抽出した。その後、Boatwright (1978)のオメガ二乗モデルを用いて、各観測点のスペクトル比からコーナー周波数を推定し、これらのlog平均を解析対象地震のコーナー周波数とした。最後に、Madariaga (1976)の円形断層を仮定し、コーナー周波数から応力降下量を推定した。さらにその結果を緯度経度0.1度ごとに平滑化することで、解析対象地域における応力降下量の空間分布を求めた。
3.結果・考察
応力降下量の解析結果を図1に示す。Yamada et al. (2017)と同様に、北海道南東沖における太平洋プレート上面の摩擦特性に不均質性が見られた。また、1968年十勝沖地震すべり域で発生した地震の応力降下量は、その周辺の領域で発生した地震よりも高い値を示した。このことも、Yamada et al. (2017)の結果と調和的である。応力降下量の時間変化については、解析地域の中西部では大きな変化は見られなかったが、根室沖に関しては、2020年ころから低下が見られる(図2)。岩石実験では、将来の震源付近で剪断強度が下がることが報告されている(Ohnaka and Shen, 1999)ことを考慮すると、根室沖において次の大地震の発生が迫っていることを示しているのかもしれない。なお、同地域では2023年2月にM6.0の地震が発生しているが、現段階ではこの地震と2020年以降の応力降下量低下の関連は不明である。