The 2023 SSJ Fall Meeting

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Room A

Regular session » S08. Earthquake physics

[S08] PM-1

Wed. Nov 1, 2023 1:30 PM - 2:30 PM Room A (F205+206)

chairperson:Keisuke Yoshida(Tohoku University)

2:00 PM - 2:15 PM

[S08-28] Microearthquakes in the lower crust and their generation mechanism: The case of deep cluster activity beneath western Hiroshima prefecture

*Kazutoshi IMANISHI1, Takahiko Uchide1 (1. Geological Survey of Japan, AIST)

陸域においては通常、地震は深さ約15kmよりも浅い上部地殻で発生するが、それよりも深い下部地殻でも起こることがある。例えば、南カリフォルニアの断層帯直下では、超稠密な地震計アレイにより、下部地殻から上部マントルまで連続する地震活動が明らかにされている(Inbal et al., 2016)。日本においても広島県西部直下の深さ約30kmにおいて、直径10kmほどの地震クラスターが存在することが報告されている(高橋・山田, 2010; 志藤, 2021)。下部地殻で発生するこの種の地震は、内陸地震の発生にも関係していると考えられるが、その発生メカニズムは依然として良くわかっていない。我々は今年のJpGUにおいて、広島県西部の地震クラスターを対象に、M1.5以上の地震のモーメントテンソル解を推定した。その結果、クラックの開口成分が卓越する時期と閉口成分が卓越する時期が約10年弱の周期で交互に現れることを報告した。そして、クラックが開口するには流体の関与が考えられることから、クラスター内に高間隙水圧の流体が周期的に注入され、これが深部クラスターを引き起こす要因になっている可能性を指摘した。地震の活動度も開口成分が卓越する時期にやや多い傾向があり、流体と地震活動の関連が示唆される。
 本研究では、さらに小さな地震にまでモーメントテンソル解析を適用するとともに、応力降下量の推定も行い、この活動の発生メカニズムをさらに詳しく調査することとした。解析対象は、2004年以降に発生したM1.0以上の地震(約240イベント)である。マグニチュードの下限を1.5から1.0まで引き下げたことで、推定対象が3倍以上に増加した。モーメントテンソル解析は、Dahm (1996)の相対モーメントテンソル法を改良した逐次相対モーメントテンソル法(Imanishi and Uchide, in preparation)によって行った。予備的な結果からは、マグニチュードが小さいと推定精度は悪くなるものの、クラックの開口・閉口成分が周期的な変動を示す傾向は確認できた。次に、地震波の減衰補正を慎重に行いながら、地震波スペクトルにω2モデルを当てはめてコーナー周波数を推定し、応力降下量を見積もった。推定値は概ね1~100MPaの範囲に分布し、上部地殻内の地震と同程度か、やや大きな値を持つことがわかった。応力降下量の時間変化を見ると、応力降下量の大きい地震は開口成分が卓越するタイミングに、一方で応力降下量の小さい地震は閉口成分が卓越するタイミングに、それぞれ概ね調和して発生する傾向があることが明らかになった。一般的には流体が注入されて間隙水圧が上昇すると強度低下が生じるため、応力降下量は小さくなると期待されるが(e.g., Goertz-Allmann et al., 2011)、それとは逆センスである。下部地殻を構成する岩石の性質や温度圧力条件も含めた検討が必要である。

謝辞:解析には防災科研Hi-net、気象庁、東大地震研究所、産総研の地震波形データ、気象庁一元化カタログを使用しました。本研究はJSPS科研費20K04141の助成を受けたものです。記して感謝いたします。