[S08P-08] Spatio-temporal relationship between SSEs and tectonic tremor activities at the northern part of Hikurangi subduction margin, New Zealand
ヒクランギ沈み込み帯はニュージーランド北島の東沖に位置しており、西側のオーストラリアプレートの下に東側から太平洋プレートが沈み込んでいる。ヒクランギ沈み込み帯北部では約2年周期の高頻度で大きなスロースリップイベント(SSE)が発生しており、SSEとそれに関連する地震イベントの関係性を理解する上で最適なフィールドの一つである。この地域の最大の特徴は、スロー地震を含む多様な断層すべりイベントがとても浅いプレート境界で発生しているという点であり、一定のイベント発生周期と合わせ、海域での直上観測による詳細な時空間分布の把握が可能である。2014年から2015年にかけて本海域で行なわれたHikurangi Ocean Bottom Investigation of Tremor and Slow Slip(HOBITSS)では、海底地震計(OBS)と海底圧力計(OBP)が展開された。観測期間中である2014年9月に大規模なSSEが観測網下で発生し、陸上のGNSS観測点と海域のOBPのデータを用いてSSEのすべり分布が求められた(Wallace et al., 2016)。さらにこのSSEに関連するテクトニック微動が、SSE発生領域内にある沈み込んだ海山のdown-dip側で発生していることが確認された(Todd et al., 2018)。その後2018年から2019年にかけて同じ領域で行われた海底地震観測期間中の2019年3月に観測網下で大規模なSSEが発生し、それに伴うテクトニック微動も検出された(Yamashita et al.,2021)。2021年から2022年にかけては、OBSの台数を9台に増やし,観測域を北に伸ばして海域地震観測を行った。この観測期間中には同程度の規模のSSEは発生しなかったが、これまでの観測領域より北側で定常的な微動活動が確認された。本研究では、2019年の微動の時空間分布の解析に用いられたYamashita et al.(2021)の手法を2014年、および2021-2022年の微動活動に適用し、これらの活動の相違点を把握することによって、ヒクランギ沈み込み帯北部における微動活動の特徴を理解することを目的としている。 2014年の活動については、2014年9月から10月までの2ヶ月間のデータに対して、4-10Hz帯と12-20Hz帯の2つの周波数帯における振幅比によって通常地震とテクトニック微動を判別し、ヒクランギ沈み込み帯の海域下において初めて微動活動が確認された。ECM(Envelope Cross-correlation Method)を用いてテクトニック微動の震源決定が行われ、 120のテクトニック微動の震源が得られた(Todd et al., 2018)。 2019年の活動については、2-4Hz帯の観測波形を解析に用いるYamashita et al. (2021) のECM手法を適用し、1700を超えるテクトニック微動の震源が得られた。この手法ではテクトニック微動の震源の深さはプレート境界に固定されている。 本研究では2014年-2015年に展開された固有周期1 Hzの短周期OBS5台と広帯域OBS2台の計7台で記録された2-4Hz帯の観測波形に、Yamashita et al. (2021)で用いられたECMを適用し、テクトニック微動の震源決定を行った。この手法では地震も同時に震源決定されるため、ニュージーランドの陸上地震観測網であるGeoNetによる地震カタログに掲載されているイベントと同時間帯のイベントは除去した。その結果、Todd et al., (2018)で得られたテクトニック微動活動よりの20倍ほどのイベントが検出され、先行研究の解析期間外までイベントが継続していたことがわかった。得られた震源は沈み込んだ海山周辺のみに集中していた。 2021-2022年の観測期間中に大規模なSSEは発生しなかったものの、小さなSSEに伴うと考えられる微動活動域の変化が見られた。 ヒクランギ沈み込み帯において、M6以上の大規模なSSEの後に微動活動がバーストすることは明らかになっているが、SSEとそれに伴う微動活動の具体的な時空間関係は明らかになっていない。本研究ではSSEと微動活動の時空間関係について、3例のSSEから議論する。