[S08P-09] 分布型音響センシングの歪波形データを用いた浅部微動の地震波エネルギー推定
光ファイバーケーブルを用いて歪の時間変化を計測する分布型音響センシング(DAS)は、空間的に密な観測が可能であることから、近年地震観測や構造探査に使われるようになっている。Baba et al. (2023) は、南海トラフ沿いの巨大地震発生領域のupdip側で発生するスロー地震の一種である浅部微動を、室戸岬沖の海底光ファイバーケーブルを用いたAP SensingのDASで観測し、海域地震観測網DONETの広帯域地震計データと合わせて震源決定を行った。同じモーメントのイベントで比較すると、スロー地震の地震波エネルギーは通常の地震よりも数桁小さくなるため、地震波エネルギーはスロー地震と通常の地震の違いを特徴付ける物理量である。本研究は、従来の地震観測網よりも多くの観測点のデータを使ってより高精度な地震波エネルギーの推定を行うことを目指し、室戸岬沖のDASデータを用いて微動の地震波エネルギーの推定を行った。
DAS観測データは、Baba et al. (2023)と同じものを用い、室戸岬から55kmの範囲で、5 mおきのチャンネルで500 Hzのサンプリングレートでデータを取得している。Baba et al. (2023) によって検出された室戸岬沖の微動の波形について、Lior et al. (2023) に基づき、0.1秒おきにセンブランスが最大となる見かけ速度をグリッドサーチによって探し、見かけの位相速度の時間変化を求めた。平面波を仮定し、歪波形の時間変化に見かけの位相速度の時間変化をかけ、速度波形に直した。この歪波形から速度波形への変換を、500 mおきのチャンネルで行った。DASのケーブルにおける微動の震源距離は、DONETのGノードとAノードの間に位置するが、変換した微動の速度波形の振幅は、DONET広帯域地震計のGノードとAノードの間の大きさになり、振幅の大きさは距離と整合的なものになった。
各チャンネルで得られたDASの速度波形のエンベロープを用いて、Yabe et al. (2019) の手法に基づき、微動の地震波エネルギーの推定を行った。室戸岬沖周辺で発生した、気象庁地震カタログ掲載のマグニチュード2.5以上の地震の波形を用い、F-net観測点N.UMJFを基準点として、S波最大振幅の値を用いたサイト増幅補正を行った。サイト増幅係数が小さいチャンネルは、光ファイバーケーブルと海底面のカップリングが悪いと考えられる。サイト増幅補正後、各チャンネルの微動のエンベロープ波形から求められたエネルギーレート関数を足し上げ、チャンネル数で割って、当該イベントのエネルギーレート関数とした。振幅最大値の0.25倍を超える時間の範囲でエネルギーレート関数を足し上げて当該イベントのエネルギーを求めた。その結果、地震波エネルギーの範囲は105–106 J、地震波エネルギーレートの範囲は103.5–105 J/sとなり、DONETの広帯域地震計データを用いて南海トラフ沿いの微動を解析したYabe et al. (2019; 2021)と同様の桁の範囲となった。今後は、センブランスによって求められた見かけの位相速度の時間変化と歪波形から変換した速度振幅の検証に加え、地震波エネルギーの誤差を定量的に見積り、地震計データのみで求めた場合との精度の比較を行う。
DAS観測データは、Baba et al. (2023)と同じものを用い、室戸岬から55kmの範囲で、5 mおきのチャンネルで500 Hzのサンプリングレートでデータを取得している。Baba et al. (2023) によって検出された室戸岬沖の微動の波形について、Lior et al. (2023) に基づき、0.1秒おきにセンブランスが最大となる見かけ速度をグリッドサーチによって探し、見かけの位相速度の時間変化を求めた。平面波を仮定し、歪波形の時間変化に見かけの位相速度の時間変化をかけ、速度波形に直した。この歪波形から速度波形への変換を、500 mおきのチャンネルで行った。DASのケーブルにおける微動の震源距離は、DONETのGノードとAノードの間に位置するが、変換した微動の速度波形の振幅は、DONET広帯域地震計のGノードとAノードの間の大きさになり、振幅の大きさは距離と整合的なものになった。
各チャンネルで得られたDASの速度波形のエンベロープを用いて、Yabe et al. (2019) の手法に基づき、微動の地震波エネルギーの推定を行った。室戸岬沖周辺で発生した、気象庁地震カタログ掲載のマグニチュード2.5以上の地震の波形を用い、F-net観測点N.UMJFを基準点として、S波最大振幅の値を用いたサイト増幅補正を行った。サイト増幅係数が小さいチャンネルは、光ファイバーケーブルと海底面のカップリングが悪いと考えられる。サイト増幅補正後、各チャンネルの微動のエンベロープ波形から求められたエネルギーレート関数を足し上げ、チャンネル数で割って、当該イベントのエネルギーレート関数とした。振幅最大値の0.25倍を超える時間の範囲でエネルギーレート関数を足し上げて当該イベントのエネルギーを求めた。その結果、地震波エネルギーの範囲は105–106 J、地震波エネルギーレートの範囲は103.5–105 J/sとなり、DONETの広帯域地震計データを用いて南海トラフ沿いの微動を解析したYabe et al. (2019; 2021)と同様の桁の範囲となった。今後は、センブランスによって求められた見かけの位相速度の時間変化と歪波形から変換した速度振幅の検証に加え、地震波エネルギーの誤差を定量的に見積り、地震計データのみで求めた場合との精度の比較を行う。