The 2023 SSJ Fall Meeting

Presentation information

Poster session (Sep. 16th)

Regular session » S08. Earthquake physics

[S08P] PM-P

Tue. Oct 31, 2023 5:00 PM - 6:30 PM Room P11 (F203) (Hall Annex)

[S08P-12] Observation of earthquake-induced rotational ground motions by broadband seismometer array

*Kazutoshi IMANISHI1, Suguru Yabe1 (1. Geological Survey of Japan, AIST)

地面の動きを捉えることは地震学の基本であるが、長年に渡り観測されてきたのは地震計による並進3成分であり、変位の空間微分量であるひずみや回転成分の観測は限られている。しかし、地震波帯域のひずみや回転成分(以後、ひずみ地震動、回転地震動と呼ぶ)は、震源過程や地下構造の詳細を解明する上で非常に重要な観測量であり、並進成分と組合わせた解析が期待されている(Takeo and Ito, 1997; Igel et al., 2005)。
 ひずみ地震動は、伸縮計やひずみ計の高サンプリング観測により観測可能であり(Kasahara, 1976; Okubo et al., 2004)、モーメントテンソル解析にも活用できることが示されている(矢部・今西, 2022)。回転地震動の観測については、光ファイバジャイロによる回転地震計の開発が進められ、最近ではフランスのイクスブルー社から可搬型の広帯域回転地震計(blueSeis-3A)が販売されている。我々は以前、イクスブルー社の国内代理店である(株)オーシャンウィングスからblueSeis-3Aのデモ機を借りる機会を得て、三重県の産総研観測点において約2か月間の試験観測を実施したことがある(Yabe et al., 2022)。観測期間中の2021年12月3日に紀伊水道でMj5.4の地震が発生し、blueSeis-3Aで記録することができた。数Hz以上の高周波帯域では良好な記録が取れていたが、それよりも長周期帯域では機器ノイズが上回り、地震によるシグナルを確認することができなかった。周辺のF-net観測点では同周期帯域でも十分なSN比で記録が取られていることから、地震計に比べると、blueSeis-3Aの機器ノイズは依然として大きいことがわかった。
 そこで我々は、広帯域地震計を用いたアレイ観測を行い、アレイデータの空間微分から長周期帯域の回転地震動を観測することを計画した。観測は愛媛県新居浜市の北東沖にある大島で行い、口径約1kmの範囲にTrillium compactを4台設置した。2023年2月から収録を開始し、データ回収を行った7月末時点で、豊後水道や日向灘で発生したM4クラスの地震3個を含む、良好な記録が取得されている。このアレイにより回転地震動を抽出できるかを確認するため、5月19日に豊後水道のプレート内で発生したMj4.5の地震の解析結果を紹介する。SN比や観測点間隔を考慮し、2~20秒の周期帯域を解析対象とした。Spudich et al. (1995) に基づき、アレイデータから変位勾配テンソル(成分はδui/δxj、i,j=1,2,3)を最小二乗法で推定し、それからひずみと回転成分を求めた。推定結果の信頼性を確認するために、アレイ中心から2kmほど南西側にある産総研のボアホールひずみ計(設置深度482m)の記録と比較した。観測地点がやや離れていることと観測深度の差異により、完全な一致は得られないものの、双方の波形は振幅値も含めて概ね同じ特徴を示すことが確認された。この事実から、回転地震動も適切に推定されたものと見なせる。回転地震動の絶対値は3成分とも10-9rad/sのオーダーであり、これはF-netのモーメントテンソル解を仮定して計算した理論波形とも概ね一致している。なお、この振幅レベルはblueSeis-3Aの機器ノイズを1桁程度下回っていることから、blueSeis-3Aでの観測は不可能である。
 当日の発表では、ひずみ及び回転地震動を使ったモーメントテンソル解析の結果についても報告予定である。

引用文献:
1) Igel et al. (2005) GRL, doi:10.1029/2004GL022336.
2) Kasahara (1976)測地学会誌, https://doi.org/10.11366/sokuchi1954.22.292.
3) Okubo et al. (2004) EPS, https://doi.org/10.1186/BF03352567.
4) Spudich et al. (1995) JGR, https://doi.org/10.1029/94JB02477.
5) Takeo and Ito (1997) GJI, https://doi.org/10.1111/j.1365-246X.1997.tb01585.x.
6) Yabe et al. (2022) JpGU meeting 2022, SCG44-14.
7) 矢部・今西 (2022) 日本地震学会2022年度秋季大会, S08-13.

謝辞:本研究はJSPS科研費22H05317, 21H04505, 21K14022, 21H05203の助成を受けたものです。アレイ解析では、strainz17 (https://www.usgs.gov/node/279410)を使用しました。