日本地震学会2023年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(1日目)

一般セッション » S08. 地震発生の物理

[S08P] PM-P

2023年10月31日(火) 17:00 〜 18:30 P11会場 (F203) (アネックスホール)

[S08P-17] 地震のOFCモデルに現れる余震領域の拡大現象

*大谷 哲人1、亀 伸樹1 (1. 東京大学地震研究所)

地震発生のセル・オートマトンモデルであるOlami-Feder-Christensen(OFC)モデルは、地震発生頻度のベキ乗則(Gutenberg-Richter則、その指数b値)が現れることがよく知られている。このモデルはまた、余震に関する統計的性質(大森則、その指数p値)も同時に現れる(Hergarten et al., 2002)。このことから地震のマルチスケール性の理解の手がかりとなることが期待されている。しかしながら、余震の定義およびそれに従って変化する余震の統計的性質については不明瞭な点が残る。実際、従来のOFCモデル研究における余震の定義は、ad-hocに「あるイベントの震央と本震の震央からの時空間距離が一定値以下のもの」としており、余震以外のイベントも集計されている可能性がある。
 そこで本研究では、余震の定義を「OFCモデルに従い自然に定義される領域」として再定義し、余震発生の振る舞いがどのように変化するか二つの場合について調べる。第一の定義では、あるイベントの震央が本震の破壊領域、及びその影響を受ける領域に含まれるものを余震とする。第二の定義ではさらに、余震判定されたイベントに対する余震、すなわちsecondary aftershockも余震とみなす定義を採用する。これら二つの定義、及び既往研究の定義に基づく余震の統計的性質を比較し、OFCモデルにおける余震の性質について考察する。
 まず、第一の定義から得られた大森則K/(c+t)p(K~10αM, cは時間方向のシフトを表す定数、Mは本震のマグニチュード)におけるp値、およびα値は、既往研究よりも大きな値となった。これは従来の定義では余震領域とみなす本震の震央からの距離が十分大きくとられているために余震以外の定常的に発生しているイベントが含まれてしまったからであると考えられる。第二の定義から得られたp値、及びα値は、第一の定義から得られたものよりもさらに小さくなった。また、既往研究において余震イベントの本震震央からの平均距離は時間と共に増加する、すなわち余震領域が時間のべき乗で拡大する現象が現れるが、興味深いことに第二の定義ではこの現象が既往研究よりはるかに明瞭に確認できた。そして、この余震域の拡大速度は本震のマグニチュードが小さいほど大きくなった(図参照)。
 第二の定義で得られたp値、およびα値が第一の定義より小さくなった理由は以下のように考えられる。第二の定義では時間とともに余震領域が拡大するため、余震と見なされる地震が増える。その結果、p値は第二の定義のほうが小さくなる。また、余震領域は本震のマグニチュードが小さいほど速く拡大するため、本震が小さいほど第一の定義より余震を多く含むようになりα値も小さくなる。第二の定義では、余震領域の拡大現象が明瞭になったが、これはOFCモデルのルールにおいて意図していない拡大現象が生じていることを確実に示しており興味深い。