The 2023 SSJ Fall Meeting

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Poster session (Sep. 16th)

Regular session » S08. Earthquake physics

[S08P] PM-P

Tue. Oct 31, 2023 5:00 PM - 6:30 PM Room P11 (F203) (Hall Annex)

[S08P-20] Formation conditions of fault mirror and friction property of greywacke at low to medium slip rates

*Sumire Maeda1, Futoshi Yamashita1, Kurama Okubo1, Eiichi Fukuyama2,1, Takamoto Okudaira3 (1. National Research Institute for Earth Science and Disaster Resilience, 2. Kyoto University, 3. Osaka Metropolitan University)

鏡肌とは断層面において観察される光沢のある微細構造であり,断層すべりに伴う摩擦によって生成されたと考えられている.近年,この鏡肌の生成が地震性もしくは非地震性すべりに起因するのか,鏡肌の生成が断層すべりにどのような影響を与えるのかを明らかにするために,鏡面(以下,実験で再現された鏡肌を鏡面と表記する)の再現実験や,それが断層の摩擦特性に与える影響についての研究が行われている(例えば,Park et al., 2021, GRL).砂岩を対象とした剪断摩擦実験から,石灰質砂岩(カルサイト含有量86%,石英含有量13%)では主に高速度(10-1 m/s)で鏡面が生成される(Hirose et al., 2012, J Struct Geol)一方,石英質砂岩(石英含有量70%)では低速度(10-3 m/s)でも鏡面が生成されることが判明した(前田・他, 2023, JpGU).これらの結果から鏡面の生成条件は同一の岩種であってもその構成鉱物の種類やその量比などによって変化する可能性があると考えられる.
したがって本研究では,先行研究とは岩石学的特性,特に石英含有量が異なる砂岩を用いた剪断摩擦実験を行い,鏡面の生成条件の推定およびその摩擦特性を調査する.実験に使用する岩石試料は京都市北区雲ケ畑で採取された丹波帯Ⅱ型灰屋ユニットのグレイワッケ(株式会社ニチカより購入)を円筒状(外径: 40 mm,内径: 16 mm)に成形した試料である.本研究で用いた試料の鉱物組成は未測定であるが,文献(楠・武蔵野, 1989, 地球科学)によると,石英が平均29%,基質が16%,長石類が23%である.最初に,本試料を室温条件下にて防災科学技術研究所が保有する回転式剪断摩擦試験機を用いて,接触面が一様に接触するまで低速かつ低法線応力下でプレスライディングを行った.次に,室温条件下にて等価すべり速度0.005〜0.040 m/s,法線応力0.5MPaと1.0MPaの条件で剪断摩擦実験を行った.その後,複数の法線応力およびすべり速度条件の実験を相互比較するために入力仕事率(すべり速度と法線応力の積)を算出し,すべり距離200 mまでの範囲の摩擦係数の平均値(μave)との関係を調査した.最後に,実験後の剪断面を目視にて観察した.
本実験結果からグレイワッケは,①入力仕事率が1.4×10-2 MW/m2を超えると剪断面全体に鏡面が発達する,②剪断面全体に鏡面が発達するとμaveが0.6から0.4–0.2まで低下する,ことが判明した.①の結果から,グレイワッケでは剪断面全体に鏡面が発達するために必要な入力仕事率が,石英質砂岩(〜10-4 MW/m2)に比べ有意に大きいことが明らかとなった.また,②の結果は,鏡面の生成条件に関わらず,鏡面が生成されると普遍的に断層強度が低下する可能性を示唆する.これらの結果は,砂岩内に発達する断層の鏡肌の生成条件および鏡肌生成に伴う断層の力学的性質への影響解明に貢献すると考えられる.