3:45 PM - 4:00 PM
[S09-05] Seismicity in trench-outer rise region of the southern Kuril Trench off Hokkaido, Japan, obtained from OBS observations
海溝軸周辺から海溝海側アウターライズ域では、海溝からの沈み込みに伴う海洋プレートの屈曲により海洋性地殻を断ち切る正断層によってホルスト・グラーベン構造が発達するとともに、一般に「アウターライズ地震」と呼ばれる沈み込む海洋プレート内を震源とする正断層地震が発生することが知られている。アウターライズ地震の発生頻度は海溝型巨大地震に比べると低いものの、日本海溝北部で発生した1933年昭和三陸地震のように、地震にともなって発生した津波により大きな被害をもたらす場合がある。
千島海溝沿いでは2017年に地震調査研究推進本部により公表された「千島海溝沿いの地震活動の長期評価(第三版)」において、北海道東部に巨大な津波をもたらす超巨大地震(17世紀型)が今後30年以内に発生する確率が7~40%とされるなど、海溝型巨大地震の発生が懸念されている。アウターライズ地震はしばしば海溝型巨大地震に伴って発生しており(e.g. Lay et al., 2011)、千島海溝中部でも2006年11月のMw8.4の海溝型地震の2ヶ月後の2007年1月にMw8.1のアウターライズ地震が発生した例がある(Lay et al., 2009)。一方、海岸線から遠く離れたアウターライズ域の詳細な震源分布を得ることは、陸上の地震観測網のデータからは困難である。近年、防災科学技術研究所による日本海溝海底地震津波観測網(S-net)の観測が開始されているが、海溝軸海側の観測点は限られている。そこで、海底地形や構造探査データと組み合わせたアウターライズ地震の潜在断層マッピングや津波想定への活用を念頭に、OBSによる海底地震観測を北海道沖の千島海溝南部の海溝軸周辺から海溝海側において、2022年4月から6月にかけて実施した。
解析では地震観測のために設置した24台の海底地震計に加え、千島海溝を横切る構造探査側線上に設置された78台のOBSのうち、10台を使用した。これらのうち7台は水深6000m以上の海域に設置可能な超深海型のOBSを使用している。また、防災科学技術研究所が運用するS-net(https://doi.org/10.17598/NIED.0007)のうち13観測点のデータも、Takagi et al. (2019)に従って上下動と水平動(南北、東西)の3成分に補正した上で使用した。統合したデータセットから検出したイベントに加え、気象庁一元化震源に含まれるイベントについて、winを用いた手動検測を行い震源決定するともに、P波初動極性を用いて震源メカニズムを推定した。
解析の結果からは、千島海溝の海溝軸海側(南側)約100km程度の範囲で地震活動が見られる。千島海溝にほぼ平行なホルスト・グラーベン構造に沿う線状分布や、T軸が千島海溝にほぼ直交する正断層型の震源メカニズムが得られており、千島海溝からの沈み込みに伴う海洋プレートの変形を反映していると考えられる。一方2012年3月にMw6.9の地震が発生した襟裳海山周辺では、日本海溝にほぼ平行な線状分布や、T軸が日本海溝に直交する正断層型の震源メカニズムも推定されている。千島海溝と日本海溝の接合部において、海洋プレート内で複雑な変形が生じていることが示唆される。 謝辞:本研究はJSPS科学研究費JP20H00294の助成を受けたものです。
千島海溝沿いでは2017年に地震調査研究推進本部により公表された「千島海溝沿いの地震活動の長期評価(第三版)」において、北海道東部に巨大な津波をもたらす超巨大地震(17世紀型)が今後30年以内に発生する確率が7~40%とされるなど、海溝型巨大地震の発生が懸念されている。アウターライズ地震はしばしば海溝型巨大地震に伴って発生しており(e.g. Lay et al., 2011)、千島海溝中部でも2006年11月のMw8.4の海溝型地震の2ヶ月後の2007年1月にMw8.1のアウターライズ地震が発生した例がある(Lay et al., 2009)。一方、海岸線から遠く離れたアウターライズ域の詳細な震源分布を得ることは、陸上の地震観測網のデータからは困難である。近年、防災科学技術研究所による日本海溝海底地震津波観測網(S-net)の観測が開始されているが、海溝軸海側の観測点は限られている。そこで、海底地形や構造探査データと組み合わせたアウターライズ地震の潜在断層マッピングや津波想定への活用を念頭に、OBSによる海底地震観測を北海道沖の千島海溝南部の海溝軸周辺から海溝海側において、2022年4月から6月にかけて実施した。
解析では地震観測のために設置した24台の海底地震計に加え、千島海溝を横切る構造探査側線上に設置された78台のOBSのうち、10台を使用した。これらのうち7台は水深6000m以上の海域に設置可能な超深海型のOBSを使用している。また、防災科学技術研究所が運用するS-net(https://doi.org/10.17598/NIED.0007)のうち13観測点のデータも、Takagi et al. (2019)に従って上下動と水平動(南北、東西)の3成分に補正した上で使用した。統合したデータセットから検出したイベントに加え、気象庁一元化震源に含まれるイベントについて、winを用いた手動検測を行い震源決定するともに、P波初動極性を用いて震源メカニズムを推定した。
解析の結果からは、千島海溝の海溝軸海側(南側)約100km程度の範囲で地震活動が見られる。千島海溝にほぼ平行なホルスト・グラーベン構造に沿う線状分布や、T軸が千島海溝にほぼ直交する正断層型の震源メカニズムが得られており、千島海溝からの沈み込みに伴う海洋プレートの変形を反映していると考えられる。一方2012年3月にMw6.9の地震が発生した襟裳海山周辺では、日本海溝にほぼ平行な線状分布や、T軸が日本海溝に直交する正断層型の震源メカニズムも推定されている。千島海溝と日本海溝の接合部において、海洋プレート内で複雑な変形が生じていることが示唆される。 謝辞:本研究はJSPS科学研究費JP20H00294の助成を受けたものです。