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[S09-20] Applying Frequency-Magnitude relation and efficiency of seismic moment release for evaluating stress state in seismogenic layer
マグニチュードと地震発生頻度の関係はグーテンベルグ・リヒター則におおむね従うことが知られ,そのべき定数b値は時間空間的に変化することが多く報告されている。特に,b値は地殻中の差応力に逆比例することなどが求められている。実験的にはそれのみならず,破壊に至る臨界状態によっても変化するという報告もある。松本・他(2022)は高精度の発震機構解から応力状態を示すモール円上にプロットし,その区分ごとにb値をもとめて,その場応力臨界状態に近づくとb値が小さいことを示した。すなわち,自然地震でもb値は差応力と臨界状態に関係していることが示された。 一方,ある領域内で様々な発震機構の地震が発生する場合を考える。多様な地震モーメントテンソルを足し合わせと個々の地震モーメントの和の比(地震モーメント比)を通してみる。弾性ひずみは主応力と45度をなす最大せん断方向の面で滑りが発生するとき最も“効率的”にひずみエネルギーが解放され,比は1になる。既存の亀裂が非最適面でかつ流体圧が高い場合,モーメント比は徐々に低下する。このように地震で解放されるモーメントと解放される弾性ひずみの比は地殻の臨界状態を示していると考えられる。そこで本研究では,差応力と臨界状態に関係するb値とモーメント比を用いて応力状態の評価を試みる。 ここでは,b値と地震モーメント比を実際の地震データから求めてその特性について検討する。データは2016年熊本地震発生前後の発震機構解(Mitsuoka et al. , 2022)と気象庁一元化カタログから得た震源データを用いた。2016年4月14日に発生したM6.5以前のデータを解析すると,震源域ではb値の小さい領域がみられたことは従来の研究で指摘されている。さらに地震モーメント比から見るとモーメント比が高い(臨界状態に近い)領域は狭まり,震源位置近傍に見られる。このように2つの値を用いることでより詳細な地殻応力状態の評価可能性がみいだされた。