2:15 PM - 2:30 PM
[S09-23] Time sequence of the seismicity and its relationship with the mid-crustal reflector in Iwaki area
1) はじめに
2011年に発生した東北地方太平洋沖地震以降,日本列島の地震活動は大きく変化した。これらの地震活動の変化は,東北地方太平洋沖地震に伴い島弧の応力場が変化したことに関係していると考えられる。いわき地域の地震活動においては,東北地方太平洋沖地震以降大きく変化し地震が増加した。この地域で観測された地震記録では,地殻内地震について2種類の後続波が観測され,その原因は臼田・他(2022)によって調べられた。その結果,深さ約15km~23kmと約26km~34kmに2つの反射面が存在し、これら2つの後続波は,それらの反射面でS波が反射したSxS波であることがわかった。これら2つの反射面のうち深さ約26km~34kmの反射面は,モホ面であることがわかった。一方,深さ約15km~23kmの反射面は,地殻内に存在する境界面であることがわかった。この地殻内の反射面は,観測された反射波の振幅が大きいことから,地殻内流体を含む面であることが推定された。また,一連の地震活動の増加は,この地殻内流体と関係する可能性が示唆された。そこで,本研究では,この地域の地震活動の推移と地殻内反射面との関係を調べるとともに,地殻内流体の供給源についても調べるため,この地域の地震活動について詳細に調べた。
2) データ
地震の震源と反射面との関係を調べるため、これら2つの要素をデータとして用いた。地震の震源については、気象庁によって決定された震源を用いた。また,反射面については臼田・他(2022)によって求められた境界面を用いた。
3) 結果
この地域の地震活動は,2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震の発生までは,ひじょうに低調な地域であった。一方,この地域で求められた地殻内反射面の分布は,南北に約20km~30km、東西に20km程度の範囲で検出された[臼田・他 (2022)]。また,この地殻内反射面は,北東側に約20度程度で傾いていることが示された。この地域の地震活動の活発化は,東北地方太平洋沖地震の発生直後から始まった。2011年3月11日に発生した地殻内地震は,反射面の南側の直上で発生している。また,2011年3月11日から4月10日までの地震活動を見ると,地震は反射面の南西の縁をなぞるように活動が活発化していった。また,反射面の北東側でも活動が活発化した。それらに挟まれる間の領域は比較的活動が低い状態であったが,2011年4月11日に,福島県浜通り地震(MJMA,7.0)が発生し,この領域全体を埋めるような形で活動が活発となった。2011年3月11日から2012年3月10日までの1年間の地震活動と反射面の分布とを比べてみると,反射面を中心としてその周囲に広がるような形で地震が発生していることがわかった。 内陸地震の発生と地殻内流体の関係は,これまでに発生した多くの被害地震において示唆されている。この領域においても,検出された反射面は,反射波の振幅が大きいことから,地殻内流体を含んだ層である可能性が示唆されてきた。これらのことから,地殻内流体を含んだ層に存在する流体は,その浮力によって地殻内を上昇し,地殻内に存在する断層面に到達し、それら断層面の強度を低下させ地震活動が活発化したと考えると,この領域の地震活動の増加を説明できる。
次に地殻内流体の供給源について考える。沈み込み帯に伴う水の脱水反応は,多くの研究者によって研究がなされてきた。Iwamori(2007)は,日本列島周下に沈み込む太平洋プレートとフィリピン海プレートからの脱水について調べた。それによるとプレートの沈み込みの深さが30km程度の領域において,非常に多くの水が脱水する可能性が示された。 さらに,この領域での地震活動についてプレートを含む深さ50kmまでの断面図を調べた。断面図では,沈み込む太平洋プレートの30kmから40kmの深さから,いわきの地震活動の活発域に向かって伸びる地震活動の帯がみられた[Imanishi et al. (2012)]。一方,この領域では2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震の発生以前にも観測研究がなされている [Shelly et al., (2006)]。彼らの研究によると,この領域では,プレート上面からいわきの領域に向かって高Vp/Vsの帯が確認されている。これらのことから,Iwamori(2007)に示されたように太平洋プレートの深さ30kmで脱水した水は,プレート上面からいわきにつながる地震活動の断層間を上昇し,いわきの領域に地殻内流体を含んだ反射面を形成し,そこから上昇した流体が断層を弱化させ地震活動の活発化に至ったと考えると全体の活動について説明が可能であることがわかった。
2011年に発生した東北地方太平洋沖地震以降,日本列島の地震活動は大きく変化した。これらの地震活動の変化は,東北地方太平洋沖地震に伴い島弧の応力場が変化したことに関係していると考えられる。いわき地域の地震活動においては,東北地方太平洋沖地震以降大きく変化し地震が増加した。この地域で観測された地震記録では,地殻内地震について2種類の後続波が観測され,その原因は臼田・他(2022)によって調べられた。その結果,深さ約15km~23kmと約26km~34kmに2つの反射面が存在し、これら2つの後続波は,それらの反射面でS波が反射したSxS波であることがわかった。これら2つの反射面のうち深さ約26km~34kmの反射面は,モホ面であることがわかった。一方,深さ約15km~23kmの反射面は,地殻内に存在する境界面であることがわかった。この地殻内の反射面は,観測された反射波の振幅が大きいことから,地殻内流体を含む面であることが推定された。また,一連の地震活動の増加は,この地殻内流体と関係する可能性が示唆された。そこで,本研究では,この地域の地震活動の推移と地殻内反射面との関係を調べるとともに,地殻内流体の供給源についても調べるため,この地域の地震活動について詳細に調べた。
2) データ
地震の震源と反射面との関係を調べるため、これら2つの要素をデータとして用いた。地震の震源については、気象庁によって決定された震源を用いた。また,反射面については臼田・他(2022)によって求められた境界面を用いた。
3) 結果
この地域の地震活動は,2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震の発生までは,ひじょうに低調な地域であった。一方,この地域で求められた地殻内反射面の分布は,南北に約20km~30km、東西に20km程度の範囲で検出された[臼田・他 (2022)]。また,この地殻内反射面は,北東側に約20度程度で傾いていることが示された。この地域の地震活動の活発化は,東北地方太平洋沖地震の発生直後から始まった。2011年3月11日に発生した地殻内地震は,反射面の南側の直上で発生している。また,2011年3月11日から4月10日までの地震活動を見ると,地震は反射面の南西の縁をなぞるように活動が活発化していった。また,反射面の北東側でも活動が活発化した。それらに挟まれる間の領域は比較的活動が低い状態であったが,2011年4月11日に,福島県浜通り地震(MJMA,7.0)が発生し,この領域全体を埋めるような形で活動が活発となった。2011年3月11日から2012年3月10日までの1年間の地震活動と反射面の分布とを比べてみると,反射面を中心としてその周囲に広がるような形で地震が発生していることがわかった。 内陸地震の発生と地殻内流体の関係は,これまでに発生した多くの被害地震において示唆されている。この領域においても,検出された反射面は,反射波の振幅が大きいことから,地殻内流体を含んだ層である可能性が示唆されてきた。これらのことから,地殻内流体を含んだ層に存在する流体は,その浮力によって地殻内を上昇し,地殻内に存在する断層面に到達し、それら断層面の強度を低下させ地震活動が活発化したと考えると,この領域の地震活動の増加を説明できる。
次に地殻内流体の供給源について考える。沈み込み帯に伴う水の脱水反応は,多くの研究者によって研究がなされてきた。Iwamori(2007)は,日本列島周下に沈み込む太平洋プレートとフィリピン海プレートからの脱水について調べた。それによるとプレートの沈み込みの深さが30km程度の領域において,非常に多くの水が脱水する可能性が示された。 さらに,この領域での地震活動についてプレートを含む深さ50kmまでの断面図を調べた。断面図では,沈み込む太平洋プレートの30kmから40kmの深さから,いわきの地震活動の活発域に向かって伸びる地震活動の帯がみられた[Imanishi et al. (2012)]。一方,この領域では2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震の発生以前にも観測研究がなされている [Shelly et al., (2006)]。彼らの研究によると,この領域では,プレート上面からいわきの領域に向かって高Vp/Vsの帯が確認されている。これらのことから,Iwamori(2007)に示されたように太平洋プレートの深さ30kmで脱水した水は,プレート上面からいわきにつながる地震活動の断層間を上昇し,いわきの領域に地殻内流体を含んだ反射面を形成し,そこから上昇した流体が断層を弱化させ地震活動の活発化に至ったと考えると全体の活動について説明が可能であることがわかった。