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[S09-25] 1988年4月に東海地方で発生した短期的SSE時のアナログ波形記録を用いた微動活動の解析
スロー地震のうちスロースリップイベント(SSE)については水準測量や歪計記録など地殻変動観測に基づく解析が行われており,例えば東海地域の短期的SSEについては,1984年以降の活動状況が歪計記録から明らかにされている(小林他,2006,地震).一方,同地域における深部微動活動について,2000年以前の活動状況は明らかでない.これは,デジタルの連続地震計記録が存在していないことに起因している.こうした過去の微動活動状況を解明するためには,まずアナログ地震計データが残されていること,加えてそれを解析する手法の開発が必要となる.近年,Kaneko et al. (2023, JGR)は,紀伊半島地域におけるアナログ地震計記録に対して機械学習を適用し,微動活動の有無を検出しているものの,震源位置の推定には至っていない.また先述の短期的SSEの解析においても,1998年以前については観測点が限られており,やはり詳細な位置の議論はできていない.防災科研は1970年代終わり頃から関東・東海地殻活動観測網を運用しており,その地震計の連続データが紙記録として残されている.我々は,これを用いて微動源推定を目指したデジタルデータ抽出を試みてきた(例えば,松澤・武田,2023, JpGU).以下では,1988年4月の短期的SSEの発生が報告されている期間について,この手法で得られた波形データを,微動源の推定に適用した結果を紹介する.
アナログ記録においては,2時間分の上下動成分の地震計データがペンレコーダーによって一枚の紙に記録されており,毎分0秒~35秒台と,35秒~翌5秒台のデータのトレースがそれぞれ左右のブロックに分かれて上から順に記録されている.この記録をスキャンして画像ファイル化したのちトレースを抽出し,傾きの補正を行うとともに,時刻情報を自動で付与し,さらに毎秒および毎分のティックマークの補正(松澤・武田,2023)を行って時系列データとして地震波形データを得た.しかしながら,自動処理による波形トレース抽出においては,日付のスタンプやインクの染み,用紙の穴など地震波形以外の色の変化をトレースに含めてしまう場合がある.また色が薄い場合等はトレースとして抽出されなかったり,地震等で振幅が大きな波形となる場合には,隣り合ったトレースと交差するため誤ったデータが抽出されたりする.こうしたデータの混入を防ぐため,抽出されたデータを目視で確認した上で,地震以外の情報が混入した場合ついては手動で除去するとともに,誤ったデータ抽出など手動除去で対応できない箇所については解析に使用しないこととした.こうして得た35秒毎のトレースを連結することで,微動域周辺の4観測点について連続データを得た.
微動源の解析にあたっては,まずデータに2-8Hzの帯域のバンドパスフィルターを適用した.次に,エンベロープ波形を計算してスムージングし,2分間のデータの波形相関からシグナルの到達時間差を1分毎に計算した.この時間差を用いて,震源の深さを30kmに固定し,一様な速度構造を仮定して震源位置を推定した.その結果,ばらつきはやや大きいものの,微動源の震央位置は現在の微動活動域付近に推定された.また,例えば1988年4月28日の震央位置は4月27日に比べて北東方向に移動している傾向がみられた.デジタルデータ抽出の自動化や解析の高精度化において依然課題は残るものの,アナログ記録から過去の微動活動状況を明らかにできる可能性が本研究により示された.
アナログ記録においては,2時間分の上下動成分の地震計データがペンレコーダーによって一枚の紙に記録されており,毎分0秒~35秒台と,35秒~翌5秒台のデータのトレースがそれぞれ左右のブロックに分かれて上から順に記録されている.この記録をスキャンして画像ファイル化したのちトレースを抽出し,傾きの補正を行うとともに,時刻情報を自動で付与し,さらに毎秒および毎分のティックマークの補正(松澤・武田,2023)を行って時系列データとして地震波形データを得た.しかしながら,自動処理による波形トレース抽出においては,日付のスタンプやインクの染み,用紙の穴など地震波形以外の色の変化をトレースに含めてしまう場合がある.また色が薄い場合等はトレースとして抽出されなかったり,地震等で振幅が大きな波形となる場合には,隣り合ったトレースと交差するため誤ったデータが抽出されたりする.こうしたデータの混入を防ぐため,抽出されたデータを目視で確認した上で,地震以外の情報が混入した場合ついては手動で除去するとともに,誤ったデータ抽出など手動除去で対応できない箇所については解析に使用しないこととした.こうして得た35秒毎のトレースを連結することで,微動域周辺の4観測点について連続データを得た.
微動源の解析にあたっては,まずデータに2-8Hzの帯域のバンドパスフィルターを適用した.次に,エンベロープ波形を計算してスムージングし,2分間のデータの波形相関からシグナルの到達時間差を1分毎に計算した.この時間差を用いて,震源の深さを30kmに固定し,一様な速度構造を仮定して震源位置を推定した.その結果,ばらつきはやや大きいものの,微動源の震央位置は現在の微動活動域付近に推定された.また,例えば1988年4月28日の震央位置は4月27日に比べて北東方向に移動している傾向がみられた.デジタルデータ抽出の自動化や解析の高精度化において依然課題は残るものの,アナログ記録から過去の微動活動状況を明らかにできる可能性が本研究により示された.