16:15 〜 16:30
[S09-30] Source-Scanning Algorithmを共通的に用いた浅部微動・浅部VLFEの時空間発展の推定
スロー地震は、西南日本の深さ30-40 kmのプレート境界付近で発見されて以降(e.g., Obara, 2002)、世界中の沈み込み帯で確認されており、スロー地震発生域は巨大地震の震源域に隣接することが知られている(Obara & Kato, 2016)。紀伊半島沖においては、1944年東南海地震の震源域の浅部延長で、微動や超低周波地震(VLFE)といった浅部スロー地震活動が繰り返し発生していることが報告されている(e.g., Takemura et al., 2022)。同地域で、2020年12月から2021年1月にかけて活発な浅部スロー地震活動が発生し、微動やVLFEがF-netおよびDONETの定常観測網で観測され、その活動パターンや震源パラメータが研究されてきた(e.g., Ogiso & Tamaribuchi, 2022; Takemura et al., 2022; Yamamoto et al., 2022)。このエピソードを含め、一般的に微動とVLFEは時空間的に同期していると考えられているが、それぞれを異なる手法で震源位置等の推定がなされることがほとんどである。 そこで本研究では、高密度に展開された機動的海底地震計(OBS)アレイとDONETで観測された波形を用い、Source-Scanning Algorithm(SSA)(Kao and Shan, 2004)を適用することで、微動とVLFEの震源位置を共通の手法で推定し、それぞれの活動の時空間発展を比較した。 本研究で用いた高密度OBSアレイは、2019年9月20日から2021年6月1日までDONET1とDONET2の間の領域に設置され、固有周波数1 Hzの3成分地震計15台で構成されている(Akuhara et al, 2023)。OBSアレイとDONETの連続波形データの上下動成分について、微動とVLFEの解析用にそれぞれ2-8 Hzと0.1-0.15 Hzの異なるバンドパスフィルターをかけ、エンベロープに変換した。次に、これらのデータをいずれも4分の時間窓で規格化し、時刻を5秒ずつずらしながらSSAを適用し、微動とVLFEの震源位置と時刻を推定した。 対象としたエピソードの初期フェーズ(2020年12月12日から7日間)を解析したところ、微動とVLFEは、ともにDONET1の東側であるBノード付近で活動が開始し、そこから南西へメインフロントが5 km/dayほどで移動するパターンを示し、既往研究のカタログと同様の結果を示した。本研究により、共通の手法を用いて微動とVLFEの震源位置を決定できることが確認された。また、VLFEについては既往のカタログにはないイベントについても多数の震源位置が推定されており、SSAの有用性とともにこのスロー地震エピソードの全体像を網羅的に明らかにすることが可能になると考えられる。