[S09P-04] Detection of very shallow earthquakes and deep low-frequency earthquakes in Hakone volcano
箱根火山では多くの地震が発生し、頻繁に群発的な地震活動も観測されている。特に、2015年の水蒸気噴火時や2019年の火山活動の活発化時に群発的な地震活動が観測され、これらの地震は箱根火山のカルデラ内の地表付近から深さ5 km程度に広く分布している(cf.原田他2015,行竹他2020)。群発地震発生時以外も、箱根山では通常の地震が多く発生しており、神奈川県温泉地学研究所(以下、温地研)ではその観測を行なっている。また、更に深部である深さ20-30 kmでは深部低周波地震と呼ばれる地震が発生しており、この地震は2015年の噴火前後に増加したことがわかっている(Yukutake et al., 2019)。 2022年以降、大涌谷周辺の深さ-1kmから0kmという地表付近を震源とする地震が多く観測された。また、2023年4月には、気象庁の一元化カタログにおいて、深部低周波地震の発生域で低周波フラグのつかない、通常の周波数帯の地震が大量発生する事象があった。この時期には前述の地表付近の地震も顕著に活発している。本研究では、これらの通常の波形読み取りでは検出の難しい微小な地震をマッチドフィルタ法で検出し、2014年から2023年までの期間での活動状況の変化を調べた。 その結果、極浅部の地震は2015年5–7月頃、2017年4–5月頃、2019年2-10月頃に活発期があり、2020年以降は2023年にかけて連続的に活発であるということがわかった。前者3回の短期間の活発化は地殻変動など他の火山現象によく対応している。2020年以降は他に火山現象の変化がなく、浅部の地震が単独で活発化している。一方、深部低周波地震の増加は2015年3–6月頃、2015年12月頃、2019年10–12月頃、2021年の5–8月頃を中心に見られる。深部低周波地震の増加は概ね地殻変動の発生時期と対応しているが、2019年では地表の活動に比べて半年遅れるなど、時間のずれがある場合もある。また、深部低周波地震についても2021–2023年にかけて、長期的にやや多い状態が見られる。2023年に起きたような深部低周波地震発生域での通常の周波数の地震は2015年の噴火直前にも見られた。異なる深さの地震であるが、活動の傾向に類似点がいくつか見られることから、これらの地震はマグマの供給などといった大局的な火山活動を反映している可能性がある。