[S09P-06] Relationship between inland seismicity and crustal deformation after the 2011 Tohoku earthquake
平成23年 (2011年) 東北地方太平洋沖地震 (以下,東北地震) が発生した際,震源域周辺のみならず日本全国の内陸でも地震活動が活発化した (例えば,Hirose et al., 2011).局所的な地震活動の変化については,東北地震の本震による応力変化や地殻流体に伴う断層強度の低下などと関連付けて解釈されている (例えば,Yoshida et al., 2012; Terakawa et al., 2013) が,それ以外の”ふつう”の地震活動の変化はカタログ欠損の影響もあり,未だ十分に評価されていない.将来的に日本周辺で発生する可能性のある海溝型巨大地震が内陸の地震活動に与える影響を予測するためには,内陸地震活動の平均的な変化を定量化することは重要である.
一方,Shen et al. (2007),Nishimura (2022) はGNSSデータに基づいてひずみ速度が長期間にわたって大きい領域では,M≧5の内陸地震の発生頻度が高いことを指摘している.また,Hardebeck (2022) は大地震後の余震活動と各種の地殻物性との比較から,余震活動とひずみ速度との間に正の相関があることを示した.そこで本研究では,東北地震後の1年間について東日本を対象に,内陸微小地震活動とひずみ速度などの地殻変動や構造パラメータとの比較を行い,地震活動の変化とその要因について報告する.
使用した地震カタログは,一元化震源およびTamaribuchi et al. (2023, under review) による2011年3月から2012年2月までの1年間の微小地震カタログを用いた.このカタログは,機械学習を併用した自動震源決定手法によって,従来の地震カタログの3倍に相当する微小地震を検出したものである.まず,2000年1月から2011年2月までの一元化震源 (内陸,M≧1,深さ≦30 km) を用いて,0.4度グリッドごとにETASモデルパラメータを推定した.ここで,ETASモデルパラメータ (μ, K, α, c, p) はグリッドごとに時間変化しないことを仮定する.推定したETASパラメータから,2011年3月から2012年2月の各月1日を中心とした前後計27日間の地震発生数 (Nobs) とETASモデルによる予測数 (Nexp) の比を地震活動度の指標として用いた.
次に,GNSSデータから,Shen et al. (1996, 2015) の手法を用いてひずみ速度を計算した.2011年3月から2012年2月の各月1日を中心とした前後計27日間のGNSS1か月階差の平均から,各月のひずみ速度 (主ひずみ速度の最大εmax,最小εmin,最大せん断ひずみ速度γ) を推定した.同様に,2000年1月から2011年2月までのGNSSデータから東北地震前の平均的なひずみ速度を推定した.使用したひずみ速度の指標は,Nishimura (2020) が用いたひずみ速度とモーメントレートの関係式と同様に,(1) Kostrov (1974) の最大せん断ひずみ速度γ,(2) Ward (1994) によるmax(|εmax|, |εmin|),(3) Savage and Simpson (1997) によるmax(|εmax|, |εmin|, |εmax+εmin|)を検討した.
2011年4月の地震活動度は,グリッドごとにばらつきはあるものの,平均的にみるとETASモデルの予測よりも2-3倍程度多く発生した.得られた各月の地震活動度とひずみ速度の指標(1)-(3)式,東北地震からの震央距離,D90,地震波速度構造などとの空間相関を計算した.その結果,ひずみ速度の指標と地震活動度との空間相関が最も高く,0.3-0.4程度の正の相関がみられた.ひずみ速度が東北地震前に比べて100倍に増加すると,地震数はETASモデルの予測よりも約3倍多く発生した.ひずみ速度の指標(1)-(3)式のいずれでも相関係数に明確な違いは見られなかった.直接的な因果関係は別の側面から検討が必要だが,GNSSデータから推定されるひずみ速度を組み込んだETASモデルが地震発生予測に有効となる可能性がある.
謝辞:気象庁,防災科研,大学等の一元化関係機関の波形および一元化震源を利用しました.国土地理院のGEONET最終解 (F5) を利用しました.地震波速度構造,D90はOmuralieva et al. (2012) を利用しました.ETASパラメータの推定にはKasahara et al. (2016) のetas_solveを用いました.ひずみ速度の計算にはShen et al. (1996,2015) の手法を用いました.
一方,Shen et al. (2007),Nishimura (2022) はGNSSデータに基づいてひずみ速度が長期間にわたって大きい領域では,M≧5の内陸地震の発生頻度が高いことを指摘している.また,Hardebeck (2022) は大地震後の余震活動と各種の地殻物性との比較から,余震活動とひずみ速度との間に正の相関があることを示した.そこで本研究では,東北地震後の1年間について東日本を対象に,内陸微小地震活動とひずみ速度などの地殻変動や構造パラメータとの比較を行い,地震活動の変化とその要因について報告する.
使用した地震カタログは,一元化震源およびTamaribuchi et al. (2023, under review) による2011年3月から2012年2月までの1年間の微小地震カタログを用いた.このカタログは,機械学習を併用した自動震源決定手法によって,従来の地震カタログの3倍に相当する微小地震を検出したものである.まず,2000年1月から2011年2月までの一元化震源 (内陸,M≧1,深さ≦30 km) を用いて,0.4度グリッドごとにETASモデルパラメータを推定した.ここで,ETASモデルパラメータ (μ, K, α, c, p) はグリッドごとに時間変化しないことを仮定する.推定したETASパラメータから,2011年3月から2012年2月の各月1日を中心とした前後計27日間の地震発生数 (Nobs) とETASモデルによる予測数 (Nexp) の比を地震活動度の指標として用いた.
次に,GNSSデータから,Shen et al. (1996, 2015) の手法を用いてひずみ速度を計算した.2011年3月から2012年2月の各月1日を中心とした前後計27日間のGNSS1か月階差の平均から,各月のひずみ速度 (主ひずみ速度の最大εmax,最小εmin,最大せん断ひずみ速度γ) を推定した.同様に,2000年1月から2011年2月までのGNSSデータから東北地震前の平均的なひずみ速度を推定した.使用したひずみ速度の指標は,Nishimura (2020) が用いたひずみ速度とモーメントレートの関係式と同様に,(1) Kostrov (1974) の最大せん断ひずみ速度γ,(2) Ward (1994) によるmax(|εmax|, |εmin|),(3) Savage and Simpson (1997) によるmax(|εmax|, |εmin|, |εmax+εmin|)を検討した.
2011年4月の地震活動度は,グリッドごとにばらつきはあるものの,平均的にみるとETASモデルの予測よりも2-3倍程度多く発生した.得られた各月の地震活動度とひずみ速度の指標(1)-(3)式,東北地震からの震央距離,D90,地震波速度構造などとの空間相関を計算した.その結果,ひずみ速度の指標と地震活動度との空間相関が最も高く,0.3-0.4程度の正の相関がみられた.ひずみ速度が東北地震前に比べて100倍に増加すると,地震数はETASモデルの予測よりも約3倍多く発生した.ひずみ速度の指標(1)-(3)式のいずれでも相関係数に明確な違いは見られなかった.直接的な因果関係は別の側面から検討が必要だが,GNSSデータから推定されるひずみ速度を組み込んだETASモデルが地震発生予測に有効となる可能性がある.
謝辞:気象庁,防災科研,大学等の一元化関係機関の波形および一元化震源を利用しました.国土地理院のGEONET最終解 (F5) を利用しました.地震波速度構造,D90はOmuralieva et al. (2012) を利用しました.ETASパラメータの推定にはKasahara et al. (2016) のetas_solveを用いました.ひずみ速度の計算にはShen et al. (1996,2015) の手法を用いました.