[S09P-11] 機動的海底地震観測によって得られた喜界島東方~北東沖における微小地震活動の時空間的特徴
南西諸島海溝沿いでは、フィリピン海プレートの沈み込みに伴い、他の沈み込み帯と同様に通常の地震活動およびプレート境界浅部におけるスロー地震活動が発生している。本研究の対象領域である南西諸島北部域では、過去の広域かつ準定常的な海底地震観測により通常地震と浅部微動とのプレート境界面上における空間的な棲み分けが示唆された一方で、両者の時空間分布について議論するためには、島嶼部の観測点や広域の海底地震観測網では震源決定精度や検知能力が十分なく、より稠密な海底地震観測が不可欠である。
鹿児島大学・他は、2019年より喜界島東方沖~トカラ列島東方沖において年次的な機動的海底地震観測を実施している。そのうち、本研究での解析対象期間は第1期(2019年4月~2020年7月)、第2期(2020年8月~2021年4月)、および第3期(2021年4月~2022年4月)である。第1期・第2期観測網は1 Hz計センサを搭載した8台の自己浮上式長期観測型海底地震計(LOBS)、第3期は6台のLOBSと2台の小型広帯域海底地震計(CBBOBS)でそれぞれ構成されており、すべての期間で観測点間隔は約20 kmである。なお、本研究ではLOBSデータのみを用いた。
本研究では、上記観測で得られたLOBSデータに対し、以下①~③の手順で通常地震の震源決定を行った。①P波・S波到達時刻の手動検測による初期震源の決定、②未固結堆積層による走時遅れの補正(観測点補正)、③Double-Difference(DD)法を用いた高精度相対震源決定(最終震源の決定)。また、通常地震と浅部微動との時空間的関係について議論するため、本研究と同一データにエンベロープ相関法を適用して求めたYamashita et al. (in prep.)の微動カタログを参照した。
得られた初期震源は、第1期では566イベント、第2期では163イベントであり、多くの地震はM1–3程度の微小地震であった。観測点補正およびDD法の適用により、第1期においては、気象庁一元化震源で深さ約20–60 kmに分布していた震源が、最終震源では深さ約30 km以浅のプレート境界付近に求まった。観測点補正前には観測網の西側および南西側に散在していた震央分布も最終震源では引き締まった分布となり、局所的な地震活動域の存在が明らかになった。第1期の北東に隣接する第2期では、約60%のイベントが海洋プレート内(プレート境界深度+7 km以深)で発生するM2未満の微小地震であることがわかった。このように、第1期・第2期ともに高精度な震源分布が得られたことで、微小地震の活動状況が明らかになっただけでなく、微動の時空間分布との詳細な比較が可能となった。その結果、第1期では微動エピソードに先行する微小地震の震源移動が、第2期では微動エピソード同士の時空間領域を埋めるような微小地震の震源移動が確認された。
本講演では、第3期の微小地震活動解析結果も報告するとともに、第1期~第3期における微小地震と微動との時空間的な関係をさらに検証し発表予定である。
謝辞:海底地震計の設置・回収航海は、長崎大学水産学部附属練習船・長崎丸の教育関係共同利用に基づき実施し、乗組員の皆さまにご協力をいただきました。東京大学地震研究所・技術職員の皆さまにはOBS準備等にご尽力いただき、鹿児島大学・九州大学・京都大学・東京海洋大学の学生諸氏には関係航海に乗船いただきました。本研究は、文部科学省による「災害の軽減に貢献するための地震火山観測計画(第2次)」および東京大学地震研究所共同利用の支援を受けました。記して感謝いたします。
鹿児島大学・他は、2019年より喜界島東方沖~トカラ列島東方沖において年次的な機動的海底地震観測を実施している。そのうち、本研究での解析対象期間は第1期(2019年4月~2020年7月)、第2期(2020年8月~2021年4月)、および第3期(2021年4月~2022年4月)である。第1期・第2期観測網は1 Hz計センサを搭載した8台の自己浮上式長期観測型海底地震計(LOBS)、第3期は6台のLOBSと2台の小型広帯域海底地震計(CBBOBS)でそれぞれ構成されており、すべての期間で観測点間隔は約20 kmである。なお、本研究ではLOBSデータのみを用いた。
本研究では、上記観測で得られたLOBSデータに対し、以下①~③の手順で通常地震の震源決定を行った。①P波・S波到達時刻の手動検測による初期震源の決定、②未固結堆積層による走時遅れの補正(観測点補正)、③Double-Difference(DD)法を用いた高精度相対震源決定(最終震源の決定)。また、通常地震と浅部微動との時空間的関係について議論するため、本研究と同一データにエンベロープ相関法を適用して求めたYamashita et al. (in prep.)の微動カタログを参照した。
得られた初期震源は、第1期では566イベント、第2期では163イベントであり、多くの地震はM1–3程度の微小地震であった。観測点補正およびDD法の適用により、第1期においては、気象庁一元化震源で深さ約20–60 kmに分布していた震源が、最終震源では深さ約30 km以浅のプレート境界付近に求まった。観測点補正前には観測網の西側および南西側に散在していた震央分布も最終震源では引き締まった分布となり、局所的な地震活動域の存在が明らかになった。第1期の北東に隣接する第2期では、約60%のイベントが海洋プレート内(プレート境界深度+7 km以深)で発生するM2未満の微小地震であることがわかった。このように、第1期・第2期ともに高精度な震源分布が得られたことで、微小地震の活動状況が明らかになっただけでなく、微動の時空間分布との詳細な比較が可能となった。その結果、第1期では微動エピソードに先行する微小地震の震源移動が、第2期では微動エピソード同士の時空間領域を埋めるような微小地震の震源移動が確認された。
本講演では、第3期の微小地震活動解析結果も報告するとともに、第1期~第3期における微小地震と微動との時空間的な関係をさらに検証し発表予定である。
謝辞:海底地震計の設置・回収航海は、長崎大学水産学部附属練習船・長崎丸の教育関係共同利用に基づき実施し、乗組員の皆さまにご協力をいただきました。東京大学地震研究所・技術職員の皆さまにはOBS準備等にご尽力いただき、鹿児島大学・九州大学・京都大学・東京海洋大学の学生諸氏には関係航海に乗船いただきました。本研究は、文部科学省による「災害の軽減に貢献するための地震火山観測計画(第2次)」および東京大学地震研究所共同利用の支援を受けました。記して感謝いたします。