The 2023 SSJ Fall Meeting

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Poster session (Sept. 17th)

Regular session » S09. Statistical seismology and underlying physical processes

[S09P] PM-P

Wed. Nov 1, 2023 5:00 PM - 6:30 PM Room P1 (F205 and 6 side foyer) (Hall Annex)

[S09P-12] Inter-plate aseismic slip associated with large earthquakes around the source region of the 2011 Tohoku-Oki earthquake

*Toshihiro IGARASHI1 (1. Earthquake Research Institute, The University of Tokyo)

2011年東北地方太平洋沖地震の震源域周辺では、M6以上の地震が多数発生している。特に、2021年2月から2022年3月には、宮城県沖から福島県沖にかけた比較的狭い範囲で集中して発生した。そこで、本研究では、ほぼ同じ場所で繰り返し発生する小繰り返し地震活動を用いて、巨大地震発生後のM6からM7クラスの大地震によって生じたプレート間非地震性すべりの時空間的特徴を調査した。
 本解析で使用する小繰り返し地震は、日本列島およびその周辺海域に展開されている地震観測網で得られた地震波形の相互相関係数とS-P到達時刻差を基に検出した。本研究では、2023年7月31日までに発生した小繰り返し地震を既存のカタログに加えて使用した。すべり量・すべり速度は、地震の規模とすべり量との間のスケーリング則および地震の再来間隔を用いて推定した。さらに本解析では、繰り返し地震に隣接する地震活動度の変化がすべり速度の時間変化と対応すると仮定して揺らぎを与え、小規模で短期間にのみ生じた時空間変化の推定を行った。
 まず、2011年東北地方太平洋沖地震発生から3年程度の期間は、この地震の余効すべりと思われるすべりの加速が、大すべり域の周辺一帯で生じていた。特に、震源の西側に位置する宮城県沖北部では、本震発生後12年以上経過した現在でもプレート間相対運動よりも速い状態が続いている。そのため、巨大地震の余効すべりが見られる場所では、より規模の小さい地震による非地震性すべりを評価することは難しい。2014年の後半以降に発生したいくつかの大地震については、その発生後にプレート間非地震性すべりの加速が見られた。ただし、推定される地震発生後の非地震性すべりは、いずれもあまり広範囲には広がらず、また、短期間のうちに収束する傾向が見られた。2020年頃までは、震源域周辺では全体的にすべり速度が低下していく傾向が見られている。周辺域での固着の進行に伴い、より小規模な地震の余効すべりが抑制されたのかもしれない。
 2021年以降に宮城県沖・福島県沖で発生した6つの大地震のうち、2021年2月と2022年3月に福島県沖で発生した地震はいずれもスラブ内地震であった。これらの地震は余震が多数発生しており、その中にも繰り返し地震が見られる。そこで、スラブ内地震の地震の影響を避けるため、2021年2月の地震発生前から継続して発生している繰り返し地震群のみを用いて、プレート間非地震性すべりの推定を試みた。その結果、2021年以降に発生したいずれの大地震発生後においてもプレート間非地震性すべりの加速が見られた。2021年2月の福島県沖スラブ内地震発生後のすべりは、その震源域の南側で短期間発生していた。2021年3月の宮城県沖プレート間地震後のすべりは、その南側では5月1日の宮城県沖プレート間地震の震源域を含む地域で加速するとともに、その北側に位置する2011年以降続く余効すべり域の再加速ももたらした。5月1日の地震と5月14日の福島県沖プレート間地震発生域間では、この発生間で顕著な加速は見られないものの、それ以前から比較的長期にわたってすべり速度が上昇していた。この上昇域は、2022年3月の福島県沖スラブ内地震の近傍まで広がった可能性がある。2022年3月のスラブ内地震発生直後は顕著なすべりの加速は見られなかった。ただし、発生1か月を経過した後になって、震源域の北側で加速が見られた。
 本解析の結果は、スラブ内大地震の発生によりプレート間の応力が増加し、非地震性すべりが生じ、また、プレート間のすべりによる応力増加がスラブ内のダウンディップコンプレッション型地震の発生を促した可能性を示唆している。ただし、検出した非地震性すべりの量、速度ともに小規模であるため、これらの相互作用の寄与についてはさらなる検討が必要であろう。